リクエスト:落ちこぼれ執事とひねくれ御曹司。
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神崎と再会したのは、今年の夏の初め、とあるパーティー会場だ。
また新たな幼い主人に仕えていた神崎は、有名財閥の令嬢を怒らせていた。
グラスの水を顔にかけられ、罵られる。
「よくも私の大事なお洋服を汚してくれたわね!! 誰よ、この執事の主人は!!」
神崎を観察していた姫川は、一部始終を見ていた。
神崎の主である幼女がジュースの入ったグラスを持ちながら親の元へ歩み寄ろうとした際、令嬢にぶつかり、ジュースをドレスにかけてしまう。
傍にいた神崎は、すぐさまテーブルにあった開けさしのボトルを手に取り、令嬢が幼女に気付く前にそのジュースのシミの上からボトルの中身を豪快にかけたのだ。
その大胆さに姫川も驚きを隠せなかった。
「申し訳ございません。あまりにも美しいドレスだったので、汚したくなりました」
その一言に令嬢はさらにその頬を叩いた。
「誰か!! こいつを屋敷から追い出して!!」
「結構。お手は煩わせません」
神崎は令嬢に一礼し、速やかに会場から退場しようと歩を進める。
「か…、かんざき…っ」
幼女は去っていく神崎を追いかけようとするが、それを幼女の親が止める。
小さな財閥であるため、その令嬢に目をつけられるのは都合が悪かった。
「かんざきぃ…っ」
涙目で手を伸ばす幼女に、神崎は幼女に笑みを向けて会場から出て行った。
開け放たれた扉から彼の去っていく姿が見える。
「あいつは、少しも変わってねーんだな…」
きっとこれからも、不器用と空回りを繰り返していくのだろう。
「…坊っちゃま?」
姫川の傍らにいた蓮井は首を傾げる。
「―――蓮井…」
*****
ゴンッ!
「痛って!!」
チンピラをすべて地に伏せさせた神崎は、姫川に近づき、この頭に拳骨を食らわせた。
手負いとは思えない力だ。
「おま…っ、「執事は、主を傷つけてはならない」じゃなかったのかよ!?」
「コブは傷にならねえし、すぐに引っ込みますよ」
「屁理屈だ」
「どっちが。…ったく、心配かけんな」
「…!」
頭を撫でられ、自分より一回り大きい神崎を見上げる。
「…お帰りになられますか?」
「……ああ」
「私が乗ってきた車で」
「オレが乗ってきたのは?」
「…明日、私が取りに参りますので。ご心配なさらず」
「声が怒ってるぞ」
「お気になさらず」
2人は神崎が乗ってきた車に乗り、邸宅へと帰った。
門扉をくぐり、邸宅の前に到着し、神崎は車の扉を開けて姫川に降りてもらう。
「何もお買いにならなかったのですか?」
「買い物は間に合ってる。外に出たかっただけだし、ゲーセンの格ゲーで全勝してきた」
(心配して損した)
どんな思いで駆けずり回ったことか。
「…神崎、口元の血、ちゃんと拭え」
「あ…、これは失敬…」
ハンカチを取り出そうとしたところで、姫川は再び神崎のチェーンをつかみ、無理やり前屈みにさせる。
「いだだだっ!! また…―――っ」
口を噤んだのは、突然口を塞がれたからだ。
姫川の舌が神崎の口端を拭うように押し付けられる。
ぴり、とした痛みを覚えたが、神崎の頭の中は混乱中で痛みに浸っている場合ではなかった。
「…フン、鉄の味だな。……コックになにか甘いものを用意させろ」
ポカンと口を開けている神崎に構わず、姫川は邸宅の中へと戻ってしまう。
「……な…っ」
何をされたのか理解した神崎の顔面に、熱が集まった。
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