リクエスト:落ちこぼれ執事とひねくれ御曹司。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
家を継ぐのが嫌で飛び出し、ロンドンの執事養成学校で数年勉強した神崎は、無事に執事の肩書を得て学校を卒業した。
子どもは好きでも嫌いでもない。
柄も愛想も悪い方なのに、なぜか子どもの方から寄ってくるのは、周りどころか神崎自身も不思議だと思っていた。
良い意味で素質というものなのだろう。
執事の面接で年端の行かぬ子どもが懐いてくれば、そのままその子どもの執事に採用されることもあった。
しかし、運が良いぶん、同等の悪運もついてくるようだ。
採用されても、1年も経たずに辞めさせられてしまうからだ。
*****
「!!」
はっと目を覚ました神崎は、テーブルに伏せて眠っていたことに気付いた。
「あれ…、オレ、いつ寝た…?」
腕時計を見ると、すでに昼過ぎだ。
「竜也様…?」
部屋を見回しても姫川の姿はない。
読みかけの本がテーブルに置かれたままで、飲みかけの紅茶はすでに冷え切っていた。
「え―――と…」
嫌な予感がして振り返ってみると、蹴破られたかのように開け放たれた扉に冷や汗が流れた。
「あ…のガキ…ッッ!!」
ティーカップを取りに行っている間に紅茶に一服盛られたようだ。
まんまと出し抜かれたことに沸々と怒りが湧き上がり、ケータイのGPSで居場所を特定し、仰天する。
とんでもない速さで街へと向かっていたからだ。
普通に走って出せるスピードではない。
車か何かに乗っているのだろう。
(やられた…!!)
舌打ちした神崎は部屋を飛び出そうとするが、その前に視界に入った鏡台に立ち止まり、鏡台に駆け寄って自身の顔を見る。
「な…っ!!?」
顔には猫ひげやパンダの目のようなラクガキされ、チェーンには色んなキーホルダーが装着されていた。
「クソガキがあああああ゛あ゛あ゛っっっ!!!」
姫川が屋敷にいないのをいいことに、神崎はついに発狂するように頭を抱えながらブチ切れる。
顔に描かれた油性ペンのラクガキを無理やり洗剤で落とし、顔をヒリヒリさせながら車庫へと向かった。
車庫は邸宅の横に設置されてあるため、一度外に出なければならないのだが、途中で出くわしたドーベルマンたちはすっかりキッチンから盗んだのだろう松坂牛で懐柔され、
「番犬失格だてめぇらは!!」
神崎は敵とみなされ追いかけまわされた。
「うっそ…!!」
ようやく車庫に到着したかと思えば、ベンツが1台なくなっている。
しかも他の車はすべてパンクしていた。
「…っっ!!」
神崎は怒声を押し殺して数分で1台のベンツのタイヤを入れ替えて復活させ、運転席に乗り込んで発車させた。
「誰だあのヤロウに運転教えたバカはっ!!」
中学生が無免許運転という危険を冒している事実に神崎は怒りのあまり意味なくクラクションを何度も鳴らし、あらかじめ開けておいた門扉をくぐって荒い運転をしながら姫川を追跡した。
街に到着したあとは適当なパーキングエリアに車を停め、GPSを頼りに姫川を追いかける。
あちらはすでに街中に到着したようだ。
一方、ゲームセンターに立ち寄り、格ゲーで全勝していた姫川はポケットから取り出した機械を見て神崎の現在地を確認する。
「早いな…。もう追ってきたか」
口元が悪党のように笑った。
ケータイのGPSで位置を知られているのは承知の上だ。
こちらから執事の動きをGPSで追うのは不可能に設定されてあるが、姫川は自室を出る前に神崎に別の発信機を取り付けていたのだ。
神崎の現在地はその探知機でわかる。
「こっちに向かってきたか…。―――さて、どこまで追ってこられるか…」
ゲームセンターを出た姫川は、探知機で神崎の居場所を確認しながら追いかけっこを再開する。
.