リクエスト:親離れ?恋人離れ?野良離れ?
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数時間かけて廃車置き場に戻ってきた神崎達を、そこにいた猫達が温かく出迎えた。
おなかが空いたであろう神崎達のために、魚などを獲って来てくれたようだ。
犬である男鹿と古市もそれに参加し、食べなれないかつおぶしや魚肉を食べる。
「帰らなくていいのか?」
時間はすでに深夜だ。
飼い犬の古市は主人が帰ってくる前に帰宅しているのだが、とっくに門限を過ぎている。
「ははは、そうだな。怒られちゃうな」
苦笑した古市は、それでも男鹿の傍を離れない。
男鹿は嬉しそうにしっぽを振り、古市に密着し、食べかすがついた古市の口を舐めた。
いつもなら照れて「くっつきすぎ」「他の奴らの前でやるな」と叱る古市だったが、この時ばかりは許した。
「ふぅ…」
「おつかれさん」
ホッと一息ついた神崎に姫川が声をかける。
すぐ傍まで近寄られれば自然と体を姫川に預けた。
途端に今日一日分の疲れが思い出したように滲み出て眠気に襲われる。
「姫川…」
「…このままでいるから」
「ん…」
寄り掛かった頭や顔を舐めてあげると、神崎は気持ちよさそうに目を細め、喉をごろごろと鳴らしたあと、寝息を立て始めた。
その寝顔に口元が緩み、しっぽを絡ませた。
(何かあってたまるもんか…。オレが守ってやるから…)
野良猫には危険が付き物だ。
だからこそ、いつか、ずっと傍にいて守ってやりたいと姫川は決意する。
「姫川、チビ達知らねえか?」
そこへ東条がやってくる。
「さぁな。メシ場にでも行ったんじゃねーか?」
「さっき探した」
「それなら寝床に使ってるキャンピングカーとかで寝てねえかな」
「!! 寝顔を拝めるってことだな!」
期待を胸に、東条はキャンピングカーへと向かった。
それを見送った姫川は、神崎がさっきので起きていないかどうか確認したあと、前を見据えたまま口を開く。
「―――というわけで、しばらくキャンピングカーには行くなよ」
「「にゃあ」」
こちらに帰ってくる最中でも愛でられ続けて少しやつれたはじめとたつやは、神崎と姫川の後ろで小さく鳴いた。
小さな2匹はその場で魚を食べ、骨だけにしたあとは自分の手や口を舐めた。
「やっぱり、人からもらったマグロもいいけど、自分がとってきた魚も悪くねえよな」
「…まあな」
神崎の指導のもと、自分のエサを自分の手でとって食べた時の達成感と幸福感を思い出す。
これこそ野良猫の醍醐味だ。
「たつや」
「ん?」
「いつかこの場所を出て行く時があっても、オレ、ずっとたつやの傍にいるから」
「…っ」
カァッ、とたつやの顔が真っ赤になり、つられてはじめの顔も赤くなる。
「お、おまえが1匹でもいいっつーなら、オレは…」
たつやははじめに近づき、喉を鳴らしながら体を寄せる。
「バカ。……嫌でも一緒にいてもらうからな」
それを後ろで聞いていた姫川は苦笑する。
(その時まで、まだまだ時間がかかりそうだけどな…。これが親ばかってやつか)
その後、廃車置き場の一角では、久しぶりに4匹の親子猫がひとつにかたまって眠っていたそうな。
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