リクエスト:親離れ?恋人離れ?野良離れ?
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たつや達を乗せたトラックは大きな広場へとやってきた。
たつやは辺りを見回すが、見覚えのある景色はどこにもない。
走行距離から考えて隣町までやってきたようだ。
不安の思いに駆られるが、はじめの前では弱音は吐きたくなかった。
「たつや、ここどこだ?」
「わからねーけど…、どこかの町の広場みたいだな…。男鹿は…」
同じ色のトラックだったので到着先も同じだったようだ。
男鹿のいるトラックに振り返ると、男鹿は呑気に昼寝していた。
「起きろダメ犬!!!」
「んぁ?」
たつやの怒声に起こされ、男鹿はむくりと起き上がる。
「こんな時に寝れるてめーの神経を疑うぜ!!」
「しょーがねーだろ。手の打ちようもないし、日当たりいいし、気持ち良く揺られてたら眠くもなるだろ」
まだ眠いのか目を擦った。
たつやは舌打ちし、コンテナから下を窺うと、数人の人間がコンテナから大道具のようなものを出して運んでいた。
それを目で追うと、赤と白の縦縞模様の大きな円形のテントが目に映った。
見上げると、目測で高さは15~18mあるだろう。
コンテナの荷物はそこに運ばれていく。
「テント…?」
「スゲェでけーな」
「何人で寝るつもりだ?」
「たぶん寝る用じゃねーと思う…」
寝惚けて言ったのか本気で言ったのかわからない男鹿に、たつやがつっこむ。
「どうやって降りようか…」
子猫達にはコンテナから地上までの距離が高すぎる。
なにかないかと見下ろすと、丸形の枠に布を張ったものを見つけた。
トランポリンだ。
たつやが意を決してそれに飛び降りると、ぽよーん、と小さな体が跳ね、近くに置かれたマットの上に落ちる。
「おおっ」
はじめも飛び降り、一度跳ねてたつやの傍らに着地した。
同じく男鹿も飛び降り、一度跳ねたが、
「ぐっ」
マットには届かず、トランポリンとマットの間の地面に落ちて体を打ち付けた。
だが、東条と同じく体は丈夫なのでそれほど痛くはない。
3匹はテントに近づき、中を窺った。
階段状の席を用意している者もいれば、お手玉やボールの上に乗るなどの何かの練習をしている者もいる。
好奇心をくすぐられたたつや達は、テントの裏手にまわった。
そこには小さなテントがいくつかある。
中くらいサイズのテントに入ると、そこに人間はおらず、色んな道具が置かれていた。
「なんなんだここは…」
男鹿は呟きながらテント内を見回す。
「オモチャだらけだぜ?」
はじめは星マークのついた小さなゴムボールを転がし、遊んでいる。
「なにかのイベントか?」
「あ」
ふとした拍子で、はじめが遊んでいたボールがころころと奥の方に転がってしまい、ボールが気に入ったはじめはそれを追いかける。
「あ、はじめっ、あまりウロウロすんじゃ…」
その時、背後に大きな気配を感じ取り、たつやと男鹿は同時に振り返った。
一方、はじめはようやくボールを捕まえたところだ。
そこで、ふと前を見ると、足のようなものが目に映り、おそるおそる見上げる。
「開演まで、まだ早いっちゃよ?」
骨付き肉にかぶりついた大きな動物がそこにいた。
「~~~~っ!!!」
はじめは声にならない叫び声を上げ、たつやと男鹿のところへと走った。
だが、こちらも何者かに絡まれていたところだ。
「「「!!」」」
5匹の動物に囲まれ、逃げ場を失ってしまう。
男鹿は警戒しながら、たつやとはじめを守るように密着する。
「怖がる必要はないっちゃよ? 取って食ったりしないナリ」
「だ、誰だおまえ!」
はじめはこちらに近づいてくる動物に毛を逆立たせ、爪を見せつけた。
テントの出入口から差し込む光で、その姿が露わになる。
「そう警戒しないで、子猫ちゃん☆ キミと同じネコ科だっちゃ♪」
立派なたてがみを持ったライオンだ。
なぜか顔にはペイントがされてある。
「オレはライオンの奈須だっちゃ」
警戒が少しでも解けるように名乗っていく。
奈須の他にいたのは、サスペンダーをつけたクマのクマさん、キツネの面をつけた白猫のパックマン、黒い毛並みの馬のアクオス、大きなセントバーナード(犬)の鬼束だ。
「みんな、この“騒霊サーカス”の主役ナリ!」
「サーカス?」
「オレ達動物を使った芸や、人間の曲芸など、複数の演目で構成される見世物のこと。…まあ、もうすぐで開園時間だから見てみるといいナリ♪」
しばらくして人間がやってきて、奈須達がテントから出て行き、たつや達は奈須の指示された通りに動く。
指定場所のテントを潜り、人間達からは見えない座席の下からそれを窺った。
会場はいつの間にかたくさんの観客が集まっていた。
中央の舞台で行われたのは、人間達の空中ブランコや綱渡りや人間ピラミッド、アクオスが人間を立ったまま背中に乗せたバランス芸、奈須の火の輪潜りや玉乗り、クマさんの一輪車乗り、パックマンの綱渡り、鬼束のオートバイ乗り、動物たちの楽器を使った演奏やダンス。
目を離せないものばかりだ。
最後は耳鳴りがするほどの拍手喝采にテント内が包まれた。
ショーが終わったあと、奈須達は再びあのテントに戻され、たつや達もそこに戻ってきた。
「なんであんなの簡単にできちまうんだ!?」
すっかり、はじめの目はキラキラと輝いている。
奈須はご褒美の肉を頬張りながら「訓練さえ受ければどんな動物でもできるっちゃ☆」と調子よく答えた。
「そう言えば詳しいことは聞いていなかったが、おまえらはなんなんだ? ただの客ではないようだな」と鬼束。
「迷いこんできたの?」とパックマン。
「オレ達以外の動物に会うのは初めてじゃねーか?」とアクオス。
「……小さい」とクマさん。
「そうそう。どうしてここに?」
奈須がはじめと目線を合わせて尋ねると、少し落ち着いたはじめは「実は…」と親である神崎とケンカしたところから、自分達と男鹿の事情を話しだす。
「フンフン。なるほど。ヒドい話ナリねー。そこの男鹿っちゃんにしても」
「…まぁな」
同情してくれる奈須に男鹿は気を許す。
「だったら、ここの飼い猫・飼い犬になればいいっちゃ! 団員になって一緒に世界を回ってショーを見せるナリ!」
奈須は、いいことを思いついたと言いたげに声を上げた。
「「「へ?」」」
「奈須!」
鬼束は叱咤するが、アクオスとパックマンは面白げに笑っている。
「け、けど、おふくろが、人間は酷いこと奴もいるからって…」
「だいじょーぶだいじょーぶ。ここはそんな酷い人間はいないっちゃ。サーカスの動物って、虐待されてるんじゃないかと思われる時もあるけど、ウチは動物への調教も優しいし、鞭で叩かれたりしないし、ご褒美もくれるし、食事も美味しいナリ!」
「そうそう。肉も魚も」
パックマンが持ってきたのはマグロの切り身だ。
それをたつやとはじめの前に置き、2匹はヨダレを垂らし、すすめられるままに口にしてみる。
「「~~~っ!!」」
頬が落っこちそうなほど美味しかった。
「「ここの飼い猫になるナリ!!☆」」
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