リクエスト:親離れ?恋人離れ?野良離れ?
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「そりゃあさ…、オレだってわかってんだよ…。いずれは独り立ちしなきゃってことくらいはよぉ…。いつかはおふくろ達と離れなきゃいけないんだ…」
たつやはぼそぼそと呟きながら、はじめとともに大通りの歩道を歩いていた。
「ずっと子どもでいられたらなぁ…」
「オレ達も、けっこう大きくなっちまったもんなぁ…」
ちなみに今の2匹は生後8ヶ月ぐらいの大きさだ。
「大人になりたくねーよ…」
「あー、泣くな泣くな」
ぐずりだすはじめに、たつやは涙を舐め取ってやる。
2匹が歩道橋の階段をのぼりきると、
「「「あ」」」
野良犬の男鹿と出会った。
「チビ崎とチビ川」
「はじめとたつやだ。…元気がなさそうに見えるけど、オレの気のせいか?」
たつやが尋ねると、耳が垂れ、しっぽを下げている男鹿は「それがなぁ…」と頭を垂れた。
聞けば、飼い犬であり恋人の古市とケンカしたらしい。
「古市の奴がな、昨日、オレと出かける約束してたのに、飼い主の急な予定で行けなくなっちまって口喧嘩しちまった…。チッ、オレより飼い主かよ。なーにが「自由気ままな野良犬の男鹿に、飼い犬の気持ちはわからねーよ」だ!」
すっかりふて腐れていた。
「―――で、おまえらは? 今日は親と一緒じゃねーの?」
「オレ達も親とケンカしちまってさ…」
事情を話し、男鹿は「野良も野良で大変だよなぁ」と同情する。
「はぁ…、もうどっか遠くに行きたい…」
憂鬱で3匹は空を見上げた。
気持ちとは裏腹に、晴れ渡る空が憎らしい。
「おー!! なんかにゃあにゃあ聞こえると思ったら、チビネコたちじゃねーかっ!! あと男鹿」
「おまけみたく言いやがって」
歩道橋の階段を駆け上がってきたのは野良猫の東条だ。
あとから付き猫の相沢と陣野も来た。
「オレ達聞こえなかったんスけど。耳じゃなくてセンサーが働いたんじゃ…」
「というツッコミを聞いていないな、あいつは」
東条ははじめとたつやに駆け寄るなり、鬱陶しいくらい、大きな体や頬を摺り寄せたり、頭をぺろぺろと舐めたり、とにかく愛でまくる。
「やめろこらぁぁぁっ。乱れるだろうがぁぁぁ」
「ふぎゃあああぁっ」
たつやとはじめはしつこい東条から離れ、男鹿の頭を踏み台にして欄干の上に飛び乗った。
「ああっ、チビ川っ、チビ崎っ」
「おまえもその呼び名かっ」
「危ないから降りてこい」と注意する東条に、たつやは「うるさい近寄るな」と毛を逆立てて威嚇し、隣にいるはじめの毛づくろいをする。
「「「「「MK5!! 推参!!」」」」」
そこでなぜか、柄の悪い5匹の猫―――MK5が登場した。
「この歩道橋はオレ達の縄張り…」
「「空気読めっ!!!」」
だが、男鹿と東条によって瞬殺される。
はじめはその場に山積みにされたMK5を見上げた。
「たつや、やっぱり男鹿と東条はスゲェよな」
他人を褒めるはじめに、たつやはムッと顔をしかめる。
「それくらい親父達ならもっと速くブッ飛ばしてるし、オレ達だって今なら肉球1つで勝て…」
その時、突風が吹いた。
「え」
風の勢いに負けてはじめは、欄干の外側に真っ逆さまに落ちてしまう。
「「「「!!!」」」」
「はじめ―――っ!!!」
ぎょっとしたたつやは反射的にはじめのしっぽを咥えたが、支えきれずにそのまま一緒に落ちてしまった。
「バカ!! なにして…!!」
男鹿は慌てて欄干に飛び乗り、下を見ると、たつやとはじめは信号待ちをしているトラックの赤いコンテナの上に落ちていた。
「待ってろ! 今オレも…」
しかし、男鹿が欄干から飛び降りたと同時に、信号が青に切り替わり、車が一斉に動き出してしまった。
「う、わっと!」
男鹿はたつや達が落ちたトラックの後ろに続く別の赤いトラックのコンテナに落ちた。
飛び移ろうかと思ったが、走行中はこちらが落ちる危険があり、飛び移りに成功したとしても、たつや達を背中にのせて高いコンテナから飛び降りることはできない。
「チビ―――ッ!!」
男鹿が動くに動けない状態になって東条達もすぐに歩道橋の階段を降りて追いかけたが、トラックの方が速く、頼りの信号も青ばかりだ。
どんどん遠ざかっていく。トラックを見ると、コンテナの側面にはポスターが貼られてあった。
「なんだアレ…」
ガンッ!!
歩道を駆けながらトラックを見失わないように追いかけていると、目の前のポストに気付かず、激突してしまった。
「東条さん!!」
ポストに前面を打った東条は痛そうに顔面を押さえていた。
ぶつかったポストにはヒビが入っているが、東条には傷が見当たらない。
「ポストより頑丈だったか」
丈夫さに驚かされ、はっとトラックの方向を見たが、すでに米粒より小さくなっていた。
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