リクエスト:人魚の恋は嵐とともに。
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「おえ…」
脚が生えるなり、城山によって海から浜辺へ上げられた姫川は、薬の不味さに悶えていた。
「こんなにクソ不味いとは聞いてねえぞ」
口元を手の甲で拭ったあと、どんな姿になっているのかと思い、城山に手鏡を貸してもらう。
「!!」
目には色眼鏡、頭はリーゼントとなっていた。
「…おお」
奇抜な髪型になってしまったが、姫川は気に入ってしまう。
「陸に上がったと同時にその姿になったぞ」
“水の中で変わったら、すぐに解けちゃうから”
「夏目!?」
頭上から夏目の声が聞こえ、姫川は真上を見上げたり、辺りを見回してみるが、夏目の姿は見当たらない。
「夏目? どこに夏目が…」
城山にその声は聞こえなかったようだ。
“あー、オレの声は姫ちゃんにしか聞こえないよ。そのリーゼントを通して語りかけてるから”
「見下ろされて話されてるようで不快だ」
“あははっ。そこは慣れて。―――さて、今から大事なことを話すからよく聞いて? 神崎君に会ったとしても、自分の名前や正体を喚いてもいいけど、そのリーゼントを解いたり、眼鏡を外すのは許さない。もし、3日以内に神崎君とキスできなかった、神崎君含め人間の前で元の姿を晒した瞬間…”
「オレに罰が下るってことだな…。…死ぬのか?」
“さすがに命までは取らないよ。ただ…、ドブ川のザリガニになってもらうだけ”
「いっそ殺せ!!!」
なるほど、さすが海一番の魔女。
性格の悪さも姫川を上回っている。
“…ということで、時間もないし、はりきっていってみよっか”
「チッ…」
舌を打った姫川は立ち上がって歩こうとするが、立って体を支えるので精いっぱいだ。
生まれたての小鹿のようにプルプルと震える。
「く…っ」
「姫川…」
「止めるな、城山。オレは神崎に会う…!!」
そこで姫川は浜辺に落ちていた流木を拾い、杖の代わりに使って頼りなくふらつく体を支えながら前へ進んだ。
(まずは町から当たるか…。3日以内にキスできるかより、3日以内に神崎に会えるかだな…)
この速度で。
あとになって気付く難題の数々に思わず笑ってしまう。
だが、運命は姫川の味方をする。
ずっと先の方で誰かがこちらにやってくるのが見えた。
何かを探すように辺りを見回しながら。
「…!!」
神崎だ。
「神崎…!!」
神崎の胸元では、姫川からもらった鱗が光っていた。
姫川はできるだけ急ぎ足で神崎のもとへと向かう。
「神崎―――!!」
「!」
声を張り上げて呼ぶと、あちらも姫川に気付いた。
「オレとキスしろ―――!!」
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