リクエスト:人魚の恋は嵐とともに。
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海上の人間には知れず深海に存在する、人魚達の国。
国の中心には王家の人魚が暮らす城がある。
そこにはひとりの王と、6人の姫がいた。
その中の末子である姫―――姫川は、末子であるがゆえ幼いころから周りから甘やかされて育てられたので、国一番のワガママ姫だったそうな。
そのうえ、ずる賢く、喧嘩の腕も強く、ぐうの音も出ないほどのイケメンだ。
よく王様の目を盗み、城を抜け出しては他の人魚たちと戯れ、町のチンピラ共を引き連れたり好き放題し、王と民を悩ませていた。
「姫川様の白銀色の尾ひれ、とてもキレイだわ」
「いつもどんな手入れを?」
「髪もサラサラー」
「羨ましいですわ」
今日も、稽古事をほったらかしにして城下町にあるバーで店の人魚たちと興を楽しんでいるところだ。
しかし、今日の彼は表情に憂いを帯びていた。
「はぁ…」
バーを出たあと、ほろ酔いで気ままに泳いでいると、城の兵士であり、姫川のお目付け役である城山が迎えに来た。
「出た」
「出たとはなんだ。姫川、また飲んでいたな」
「昨日よりはマシだし」
年頃も同じで、位は違うがため口がきける仲である。
王様も「逃げだしたら殴りつけてでも首根っこつかんで連れ帰れ」と命令するくらいだ。
今までそんな横暴なことをして連れ帰ったことはないが。
「帰るぞ」
「……もう少し風に当たってもいいか?」
「ここに風はない」
「海上の風」
「そうやってすぐに掟を破ろうとする。…オレ達人魚は海上に出てはいけないことは幼いころから教わっているだろう」
「……………」
「…?」
いつもならああ言えばこう言う姫川だったが、その日はいつもと様子が違った。
違和感を覚えた城山は、「元気がないな」と見たままを口にする。
「見合い話が増えて、アンニュイになってんだよ」
酔っているせいか、素直に答える。
人魚の成人の年を迎えてから、見合い話をされることが多くなった。
「見合い相手は…、男か?」
「女。「姫」とは言っても、一応男だからな、オレ」
姉たちはすべて女で、家にも居づらい立場だ。
王様としては、姫川の勝手ぶりに呆れ、できれば婿養子としてどこかの国に行ってほしいと面と向かって言われた。
人魚の国は他にもあるのだ。
「酷い話だ」
「おまえが態度を改めればいいだけの話だろ。…この国を出るのがイヤなら」
「城山、誤解してるようだから教えてやる。オレにとってはこの国なんてどうでもいい存在だ。たまたま人魚に生まれたから、その場所で好き勝手してるだけで、こんな平和で刺激の少ねぇ場所、出て行こうとその気になれば出て行く。オレが気に入らねえのは見合いの話だ。親が決めた興味のねえ女とオレが末永くやっていけると思うか?」
「……………」
城山には想像もできない話だ。
姫川が誰かを幸せにするなんて。
「…今失礼なこと考えただろ?」
「いや…」
城山は正直者だ。
大体目を逸らして誤魔化す。
姫川は「フン」と鼻を鳴らし、尾びれをうねらせ真上へゆっくりと上昇し、城山もそれを追いかける。
「姫川、いつまでもこのままでいるわけにはいかないんだ。おまえも早く身を固めろ。王に直接、勝手に決められるのが嫌だ自分で決めると言えばいい。誰かいないのか、気になっている女は。この国から出て行かずとも平和な家庭を築けば…」
「おまえのそういう説教臭くてド真面目なところが嫌いなんだよ」
「知っている」
「まあ気になってる奴はいるぜ?」
「は!?」
不意打ちの言葉に城山は衝撃を受ける。
姫川が好意を抱く相手がいることに。
「…………ガキの頃、一度海上に出たことがある」
「おい…」
「時効だ。聞けよ」
姫川は懐かしそうに目を細め、その時の運命の出会いを思い出しながら話しだす。
*****
小さいころから姫川には脱走癖がある。
国中の兵士たちの目を盗み、海面まで行くことも頻繁にあった。
下半身が魚のため、陸上に上がることは叶わないが、それでも小さな姫川の瞳に映る外の世界は憧れだった。
少し行けば、人間達が住んでいる町と城も見える。
その日の姫川は肝試しの感覚で港へ近づいてみた。
港の桟橋の柱に触れたらすぐに海へ戻ることを心に決めて。
「!」
海面擦れ擦れで桟橋に近づいていくと、好物の小エビが泳いでいるのを見つけ、小腹も空いていたためなんの疑いもなく食らいついた。
すると、口内に痛みが走り、強い力で海上へとひっぱりあげられてしまった。
「あ」
桟橋で釣りをしていた少年と目を合わせた、小エビでまんまと釣られた姫川。
*****
「……一目惚れだったな。釣られるってまさにああいう感覚なんだな…」
「違うと思うが、先を話す前に4・5個つっこませろ!!!」
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