リクエスト:百万本には至りませんが。
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数ヶ月後、夕方、本人が帰ってくる前に姫川の家にいた神崎は、ダイニングでソファーに寝転びながら漫画を読んでいた。
「おかえりー」
「…ただいま…」
先に家にいた神崎に小さく驚きつつ、姫川はドアを閉めてゆっくりと神崎に近づき、その顔を覗き込んだ。
「なあ神崎…」
「ん?」
神崎が読んでいた漫画を下におろすと、姫川は片膝をついて神崎にキスをした。
一瞬驚いた神崎だったが、目を瞑ってその唇の感触を堪能する。
漫画がソファーの下に落ちたが気にも留めない。
「今日…」
「ああ。わかってる」
唇を離した姫川がこぼすように言うと、神崎は小さく笑い、その頬に手を添えて撫でた。
「つうことで…」
姫川はポケットからラッピングもされていないピアスを取り出し、神崎の目前にぶら下げる。
見た目は神崎の右耳のルビーのピアスと似たようなデザインだったが、四角い赤い宝石をよく見ると、黒のラインで描かれたバラの絵があった。
いったいいくらかかったのか。
それを聞くのは無粋というものだ。
「似合うと思ってな」
「てめーが言うな」
「本気で言ってんだよ」
姫川の指が神崎の今ある耳のピアスから新たなピアスに取り換える。
自分が与えたものが満足そうに神崎の耳で揺れたのを見て、姫川も微笑んだ。
「よく似合うぜ? 神崎…」
「……………」
その笑みを間近で見た神崎は頬を紅潮させ、もらったピアスに触れた。
「…姫川、ちょっと目ぇ瞑ってろ」
「?」
神崎に「いいから瞑ってろ」と促され、姫川は言われた通り、自分の両手で両目を覆って「瞑ったぞ」と言った。
すると、数秒後、花の香りが鼻を通ったことに気付く。
「開けろ」
「!」
鼻先に突き付けられたのは、赤とピンクのバラの花束だった。
はっとしてベランダに振り返ると、咲き始めていたバラがすべて切り取られていたのが見えた。
「このバラ…」
「オレからてめーにプレゼントだ。てめーがこの神崎さんを射止めてから、めでたく1年経った記念のな…」
不器用ながら自分でラッピングしたのだろう。
姫川はそれを受け取り、胸に抱いた。
「回りくどい奴だな…。このために育ててたのか?」
「思いついたのは途中から…。やっぱり似合う奴にあげたほうがそいつらも嬉しいだろうし…。自分で育てたのをやりたかったし…」
恥ずかしげに言いながら神崎は右手で自分の口元を押さえ、そっぽを向く。
耳まで真っ赤だ。
それでも言いたいことを告げる。
「これからも愛してやるから…、姫川も、オレのこと…」
「ああ。愛してる」
バラを胸に抱えがながら、身を乗り出した姫川は神崎の頬をつかんでこちらに振り向かせ、また優しいキスをした。
情事のあと、姫川は神崎を胸に抱きながら、サイドボードの上に置いた花瓶に入ったバラを見上げる。
「神崎、バラの花言葉は知ってるよな?」
小さな欠伸をしながら神崎は答える。
「普通に考えて「愛してる」だろ」
愛の言葉とともに送られる花なのでそうだと思っていた。
実際その通りだ。
「色にも意味があるらしいぜ?」
「色にも?」
胸に顔を埋めていた神崎がこちらを見上げた。
少し興味が湧いたようだ。
姫川は枕元に置いたケータイを手に取り、「バラ 花言葉」でググッてみる。
「黄色じゃなくてよかったな。小輪の黄色のバラは、「笑って別れましょう」だとよ」
「バラなのにか?」
今さら、自分が渡したバラでよかったのかと焦りだす。
プレゼントしたのは、赤とピンクのバラだ。
「赤にも色々あるな…。黒っぽい赤いバラは「死ぬまで憎む」ってよ。コエー…。あ、でも神崎がくれたのは紅色のバラ。「死ぬほど恋焦がれてる」だと」
「………ピンクは?」
「ちょっと待て」
指でスクロールし、ピンクのバラの意味を読むと、姫川は「ぶっ!!」と噴き出した。
何事かと神崎は怪訝な顔をする。
「そんな変な意味なのか? っ、なんだ?」
突然肩を押されて仰向けにされると、姫川は神崎の腹を優しく撫で、耳元に低く囁いた。
「赤ちゃんができました」
「………は!!!?」
ピンクのバラの意味:赤ちゃんができました。
ケータイでそれを見せると、衝撃を受けた神崎はみるみる羞恥で顔を赤く染めた。
姫川はニヤニヤとしながら神崎の腹を撫で続ける。
「デキちゃったかぁ」
「撫でるなぁ!!!」
.END