リクエスト:百万本には至りませんが。
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「…なにそれ?」
「捨て鉢」
前にもらった合鍵を使い、神崎が姫川のマンションの部屋に持ち込んだのは、2つの植木鉢だった。
どちらも中は古い土がこびりついていえ、外側にはヒビが刻まれていたが、すぐにバラバラに崩れてしまうような派手なヒビではない。
「家の近くで捨てられてるの拾った」
神崎はそう言いながらダイニングを通過してベランダへと向かい、ベランダの窓を開け、欄干の下にその植木鉢を置いた。
それから、手首にかけていたホームセンターのマークが入ったビニール袋から土と、ズボンのポケットから種を取り出す。
「おいおい、オレの家で園芸でもやるつもりか?」
ケータイで園芸のホームページを見ながら作業を始めた神崎に、姫川はベランダから身を乗り出して尋ねた。
「うちでやると親父がうるせーんだよ。盆栽と一緒に置くのが嫌だと」
背を向けながら答える神崎に、姫川は「ふーん」と言う。
別に困るものでもない。
「種は、パー子からもらった」
捨てられた植木鉢を拾ったところを目撃され、「神崎先輩、よかったら花とか育ててみねーっスか?」と一度家に帰って急いで戻ってきた花澤から種を数粒受け取ったのを思い出す。
「なんの花だ?」
「バラだとよ。捨て鉢が2つあるからって2種類もらっちまった」
「………その捨て鉢っての…、意味わかって言ってんのか?」
「ヤケクソだぞ」と姫川は苦笑した。
神崎はケータイで大体の量を見ながら、ホームセンターで購入した園芸用の土をスコップで入れていく。
「面倒そうだな…。蓮井に頼んでやろうか?」
姫川はそう言ってケータイを取り出したが、神崎は土を入れながら首を横に振る。
「いちいちこれくらいのことで呼ぶなっての。オレひとりでも出来るっつの」
そう言ってようやく肩越しに振り返った神崎は軽く睨んでから、また作業に移った。
土の中に花澤からもらった種を埋め、スコップで叩く。
「叩くなよ。芽が出にくくなるだろ」
見兼ねた姫川が思わず口を出してしまう。
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