リクエスト:地の果てまでも。
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次の日から、姫川が学校に来なくなった。
無断欠席から1週間後、佐渡原や早乙女に欠席の理由を聞かれたが(なぜオレに)、適当に風邪だと答えておいた。
ツチノコ捜しに行きましたとか言う側も恥ずかしい。
“神崎ー。かーんーざーきーっ”
どこへ逃げてもオレの目の前に現れるリーゼント。
行く気もない図書室へ逃げ込んだ時もすぐに発見されて追いかけまわされた。
あれだけうざかったのに、空席が妙に寂しく感じた。
購買のメロンパンを頬張り、夏目達と雑談をかわしながら何度かその席を一瞥する。
それは夏目にもバレたようで、「姫ちゃんいないのが気になる?」とニヤニヤとされ、デコピンを食らわせてやった。
「最近オレにべったりだったからな。またいつ絡んでくるか警戒してんだよ」
「そう…」
オレも意識して姫川の席を見ないようにしよう。
数日したら、「捕まえられなかった」と残念な顔をした姫川がいるはずだ。
その時は指をさしてバカにしてやろう。
「いるわけねーだろバーカ」って舌を出して。
「城山」
「はい」
「オレって極悪人か?」
「…はい?」
不良こそ悪であるべきだが、良心的な城山は答えに迷っていた。
眉間に皺を寄せて真剣に考えだしたので、「やっぱいい」と言って聞かなかったことにした。
さらに5日が経過しても、あいつは一向に学校に現れない。
事件に巻き込まれたのではないかと騒ぎだす奴らもいた。
「……………」
教室に入るなり、空席を見てから自分の席に着席すると、後ろからいきなり抱きしめられた。
「姫か…」
はっと振り返ると、見慣れたリーゼントじゃなくて見慣れたセンター分けがいた。
「オレでした♪」
「ブッ殺すぞ夏目っっ!!」
「やっと帰って来たか」と思っちまったじゃねえか。
「そんなあからさまに残念そうな顔しないでよ、傷つくなぁ~」
なにが残念な顔か。
してねえよ。
「次やったら金属バットで凹ますからな」
オレは机の横に立てかけた金属バットを握りしめて凄んだ。
昨夜は姫川の夢を見て、ご機嫌斜めだ。
姫川がそのまま転校しちまう夢。
あいつがいなくなって、机もなくなって、酷く虚しくなる、そんな夢だ。
勝手にいなくなるのはいいが、先頭に「オレのせいで」とつくのは後味が悪すぎる。
“神崎ー、ほらよ、ヨーグルッチ”
目をつぶればあいつのムカつく顔とムカつく声が聞こえる。
まだ染みついてるようだ。
夏目の言う通り、気にしてるのは認める。
電話でもかけて「ツチノコ捜しはもういい」と言うべきか。
だが、それで平然と戻ってきて追いかけっこ再開になるのも嫌だ。
嫌だからあんな条件を出したのだから。
オレはいったいどうしたいんだ。
オレはグシャグシャと頭を掻き、あと1時間だが授業をサボって屋上に行くことにした。
「………は?」
屋上に、そいつはいた。
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