リクエスト:地の果てまでも。
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放課後、予想が当たってほしくはなかったが、姫川は正門前で待っていた。
家の方向全然違うじゃねえか。
オレは夏目と城山を先に帰らせ、姫川と一緒に家路をたどり、その途中にある公園に立ち寄った。
家に帰る母親と子どもとすれ違うように中に入り、回転する球状のジャングルジムの近くで話をすることにする。
「珍しいな。一緒に帰ってくれるなんて」
嬉しそうな顔しやがって。
「勘違いすんなハゲ。てめーがあまりにしつこいから、そろそろ終わらせようと思ってな」
「終わらせる?」
姫川は不思議そうな顔をして首を傾げる。
オレは人差し指で姫川をさして言い放った。
「オレがほしいんだったら、金じゃなくて、その場で土下座しろ」
“姫ちゃんができないことを条件に出すんだよ”
夏目の提案を実行。
「土下座…」
表情を強張らせた姫川は呟く。
「オレが金で動かねえのは百も承知だろ。オレがほしいなら、それ相応の態度にでやがれ。出来なきゃ2度と絡んでくるな」
オレと同じく、プライドが人一倍高い姫川のことだ。
他人に、ましてやオレに頭を下げるなんて醜態は晒さないはずだ。
ここ、屋外だしな。
今にも「下手に出てりゃつけあがりやがって」とお得意のスタンバトンを振りまわしてくるはず。
そうすれば出来なかったとして、こいつもオレに絡んでは来ないだろう。
解決だ。
「わかった」
「は?」
なにが?
そう思った時には、姫川はその場に膝をついた。
奴が次に取ろうとする行動にゾッと戦慄してしまう。
こいつマジだ。
本気でオレに土下座する気だ。
「待て!!」
察したオレは、姫川が手を地面につく前に、その肩をつかんで阻止した。
姫川はまた不思議そうな顔でオレを見上げる。
「…なに? スライディングがよかったか?」
「そうじゃねえよ! なに本気でやろうとしてんだ! バカじゃねーのか!?」
どうしてオレが悪い気にならなければ。
でもあのままさせてたら、自分が土下座してる気分になって自己嫌悪に陥りそうだった。
「じゃあ、どうしたらいいんだ?」
肩にのせたオレの手の上に、姫川は自分の手を重ねて真剣な眼差しを向けてくる。
それに思わず目を逸らしてしまい、気恥ずかしくなって顔に熱が集まった。
こいつの本気を甘く考えていた。
こいつの土下座は安くない。
わかっていたから条件を出したのに。
このままでは流されてしまう。
金持ちのこいつにもムリな条件。
5分間一時停止のなか必死に考え、閃いた。
「ツチノコ」
「?」
「ツチノコとってきたら、だ! てめーの手でとってきてオレの目の前で見せてみろ! 模型じゃなくてちゃんと生きてる奴だ!」
大昔に流行したツチノコ。
見つけて捕まえたら数百万だそうだが、そんな幻の未確認生物をオレが信じているわけがない。
だからこそ条件にはうってつけ。
大金持ちの姫川にも出来ないことだ。
それ以前に、こいつも絶対ツチノコとか信じてるわけがない。
馬鹿馬鹿しいと呆れ果てて帰るだろう。
姫川は立ち上がり、オレの両肩に自分の手を置いた。
「わかった」
「……は!?」
なにが「わかった」のか。
「約束、絶対守れよ?」
姫川はそう言って、オレに背を向けて帰ってしまった。
「え…と…?」
まさかあいつ捕まえてくるつもりか。
本気で、ツチノコを。
ムリなのはわかっているが、あいつなら大金で科学の力を使ってツチノコをムリヤリ制作しそうだ。
嫌な汗を浮かべたが、いやなにもオレ相手にそこまで、と思うことにした。
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