リクエスト:地の果てまでも。
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“いくらだ? いくらでオレのものになる?”
あの言葉を引き金にハデに殴り合ってから1週間後。
「神崎ぃ」
いつもの数倍以上にうっとうしく絡むようになってきた。
登校してオレの顔を真っ先に見るなり、瞬間移動でもしたかのようにオレの前に現れて声をかけてくる。
そのたびに毎回心臓がびっくりしてしまう。
「相変わらずヨーグルッチか」
「触んなボケ。リーゼント菌がうつるだろが」
馴れなれしくオレの頭を撫でてきたり、そのたびにオレは毎回あしらってんのにしつこく食い下がる。
こいつこんな積極的な奴だったっけ。
クラスの奴らも「仲良かったんだ」と珍しげに見てくるから、「違う」と睨み返す。
喧嘩をし合ったヤロウ共は友情が深まるとか、どっかの奴がのたまってたが、こんなうざい友情はまっぴらごめんだ。
大体、オレと姫川じゃ話が違う。
ケンカは昨日今日始まったわけじゃない。
1年で初めて顔を合わせた時から何度も繰り返していた。
なぜこうも突然に。
引っかかるのはあの言葉だ。
“いくらでオレのものになる?”
いつもだったら、今更あんなことは言わないはずだ。
初対面の時に失敗してるくせに。
オレが心変わりすると思ったのか。
するかボケ。
最近殴り合いのケンカがめっきり減ったからって調子に乗ってんじゃねえよ成り金坊っちゃんが。
「神崎ー」
油断してるとまた声をかけてきやがった。
罵声を浴びせてもしつこく付きまとってくる。
昨日は腰に絡みついてくるなんて嫌がらせを受け、ブチ切れて金属バット振り回して追いかけた。
こんな調子じゃ落ち着いて弁当も食えやしねえ。
「夏目、城山、屋上行くぞ」
「だったら、オレも屋上行く」
「てめーはついてくんな。ハウス。来たらコロス」
ついてきてないか何度も背後を確認し、屋上へと向かった。
一応鍵はかけておく。
これでオレ達の貸し切りだ。
初秋でよかった。
しかし冬は寒くて屋上に逃げられない。
「クソ川が。オレがなにしたってんだ。いつまでもベタベタベタベタ…」
ヨーグルッチを飲みながら、オレは夏目達に愚痴をこぼした。
「オレが追い払いましょうか」
城山はそう言ってくれるが、オレは右手をひらひらとさせた。
「やめとけ。あいつに黒焦げにされるぞ」
あいつもアレで東邦神姫の一人だ。
成り金のくせに腕は立つ。
城山でも骨が折れるだろう。
「神崎君も大変だねぇ」
夏目は小さく笑いながら紙パックのコーヒーを飲む。
「他人事みたいに言ってんじゃねーよ夏目」
オレが睨むと夏目は「まあまあ」と宥めるように言った。
「姫ちゃんはまだ神崎君のこと、諦めてないの?」
「今日も見ての通りだ。「金がダメならなにがいい?」って。アホが。オレのこと完全にナメてやがる」
ギリギリとストローの先を噛んだ。
未だに安く見られていたことが一番腹立たしい。
「この年月通して少しはオレのこと知ってくれてるかと思えば…。見損なったぜ、あのヤロウ」
「……知っちゃったからじゃないかな…」
「あ?」
夏目の意味深な呟きがひっかかり顔を向けると、夏目は笑顔で首を横に振った。
「ううん。なんでも。…あ、そんなに付きまとわれるのが嫌なら……」
思いついたように、夏目は提案を出した。
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