リクエスト:お見合いです。×4!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
神崎と姫川は自室で作戦会議することにした。
テーブルを挟み、自分達の分身の名前を開いたノートに書き込んでいく。
「クジで決めたのが間違いだったな」
「ああ。ここまで悲惨なことになるとは甘く見てたぜ」
「ここはオレ達が親として、ちゃんと相談して部屋分けしたほうがよさそうだな」
クジはあまりにもアバウトだったことを反省した。
「素直崎とへたれ姫はどうだ?」
「素直崎が満足しないだろ。不満ぶちまけるぞ」
「強気崎と成金姫は?」
「確実に喧嘩する」
「食い気崎と計算姫」
「計算姫も手に負えないだろうな。あのやる気のなさは」
神崎側と姫川側に線を引いては相性を考え、不釣り合いならばバツをつける。
「自分だけど、面倒な部分だな…。オレらもよくそれでやってけたもんだ」
「……………」
姫川は紙の上の名前を見下ろし、指を口元に当てて考える。
「お困りのようだな」
こちらから操作もしていないのにモニターが突然天井から下り、パッと画面に映しだされたのはバスローブ姿の鬼畜姫と、その傍らで寄りそうヘタレ崎だ。
「うおっ! なんであっちから操作できんだよっ」
「どこの黒幕だ。隣なんだから来いよ」
(ヘタレ崎が日に日に色っぽくなってるし…。ヘタレ崎っつーより、淫乱崎?)
つっこむ2人をスルーし、鬼畜姫はヘタレ崎のアゴをネコのように撫でながら嘲笑の笑みを浮かべる。
「てめーらそれでもオレらの生みの親かよ。単純な話だろが。元は仲悪かったが、それでも今まで上手くやってたのはどこかで反りが合ってたんだろ。自分のシーンを相手に合わせて考えてみろ。以上」
一方的に言いたいことだけ言って鬼畜姫はリモコンをとり、画面を消した。
2人は真っ暗な画面を見上げたまま固まっている。
「オレ…、乗っ取られないか心配になってきたわ」
「けど、あいつの言うことは一理あるな」
「……だな。ちょっと演出してみるか」
相性の良い性質を模索したのち、部屋分けが決定した。
3003号室は、素直崎と計算姫。
3004号室は、強気崎とへたれ姫。
3005号室は、食い気崎と成金姫。
3006号室は、真面目崎とピュア姫。
試行錯誤した結果の組み合わせだ。
神崎と姫川は3001号室のモニターから見守る。
「これでよかったのか…」
「奴らの性質を尊重した結果がコレだ。見てようぜ」
最初につけたのは、3003号室だ。
また言い争いになっていなければと不安だったが、
「オレのどこが好き?」
「じゃあ先に、おまえもオレのどこが好きか言ってみな?」
「ぜ、全部に決まってんだろ」
「だったら、オレもそれだ」
「あ! ずりーよ!」
「「早速イチャイチャしてる!!?」」
昨日とは違う温度差だ。
素直な素直崎に対し、計算姫はどう切り返せば喜んでくれるのか把握していた。
素直崎の直球な言葉も楽しんでいる様子だ。
「本人はたまにヘタレが優先されるけどな」
「あいつにはソレがねえからな。ラブゲージ絶好調の恋愛シュミレーションゲームしてるみたいだ。なにあれ超リア充」
チャンネル、3005号室。
いつの間にか部屋の構造が変わっていた。
金ぴかの床と壁、キングサイズのベッド、ベランダに設置された大きなバスルームには、ヨーグルッチ風呂に浸かる成金姫と食い気崎がいた。
ヨーグルッチの湯にはバラの花弁が浮かんでいる。
「もうオレおまえいないとムリ」
「あんなこと言ってる!!」
姫川も仰天だ。
やる気ゼロのはずの食い気崎は、火照った顔で成金姫の肩に寄りそった。
「そうだろう? オレもてめーのためにしか金は使わねえよ」
成金姫も神崎のために金を使うことが出来たため、達成感に満ち足りた思いだ。
「まさかオレの念願の夢がここで叶うとは…」
「満足そうだな。じゃあ、次はオレも満足させてくれよ。オレのヨーグルッチを飲ん…」
チャンネル、3006号室に切り替え。
真面目崎とピュア姫はテーブルを挟んで座り、向かい合わせのまま黙っていた。
「……あれ? こっちは進展なしか?」
神崎が首を傾げると、画面に映る2人は顔を上げ、泳がせていた視線を合わせた。
「「あの…っ」」
声が重なり、お互い「あ」と言葉に出すのを躊躇う。
「お…、おまえから言えよ…」
「じゃ…、じゃあ…」
顔面を真っ赤に赤面させて言う真面目崎に対し、ピュア姫も照れが移り、頬を赤らめ、言葉に甘えて切りだすことにした。
「……ご…、御趣味は…」
「け…、ケンカと…、ヨーグルッチを少々…」
「「本格的な見合い始めてるっっ!!?」」
遠くで獅子脅しが聞こえそうな雰囲気だ。
こちらも悪くない流れである。
各部屋が滑稽なほど違い、色んな愛があった。
「へたれの方はどうなってるかな…」
気になった姫川はチャンネルを切り替える。
てっきりこちらも上手くやっていると思っていたが、
「言いたいことあるならはっきり言いやがれ!!」
「う…、うん…」
「―――あれ?」と神崎と姫川は同時に首をひねる。
3004号室は険悪な雰囲気だ。
強気崎はある一定の距離をとるへたれ姫に苛立ち、怒鳴り散らした。
あからさまに、強気崎が1m離れれば1m近づき、1m近づかれれば1m離れるととても面倒臭い距離のとり方だ。
「おまえ付き合う前そんなとこあったよな」
画面を見上げる神崎は懐かしさを覚えた。
「オレ、あんなだったか?」
対して姫川は自覚がなかった。
へたれ姫は強気崎に気を遣っている様子だ。
離れすぎず、近づきすぎない。
鬱陶しいと思われるのは嫌だったからだ。
「ツンツンしてる時は確かにあんなカンジだけど…」
姫川は画面を見上げながら呟く。
神崎が特に機嫌が悪い時はそっとするようにはしている。
強気崎はどっかりとソファーに腰掛け、なぜこんな分け方をしたのか、と別室にいる姫川と神崎を恨んだ。
甘ったるい言葉を吐き続けるピュア姫よりはマシだが、もじもじとするへたれ姫に苛立ちが募る。
「おまえ、オレといたくねーならさっさと出てっていいんだぜ? オレは本人と違って可愛げもねえからなっ!」
投げやりに言ってから、さっさと行けよ、と煩わしそうに手をしっしっと動かす。
それを見ている姫川は心配になってくる。
「真面目崎とピュア姫の組み合わせを変えればよかったな…」
席を立とうとした姫川だったが、神崎は「待てよ」と呼びとめる。
「もう少し見てよーぜ」
神崎は真っ直ぐに画面を見つめ、へたれ姫を温かい目で見守り、内心でそれこそ我が子や兄弟のように応援する。
(さっさと出て行って、神崎本人に泣きごとを言えばいい)
強気崎が扉が開く音を待っていると、しばらくして反対方向へ行くはずの足音がこちらに近づき、目の前で止まった。
「いたくないわけ…ねえだろ?」
勇気を振り絞ったかのような顔だ。
刺激しない言葉を選んでいるのか、時間を置いてぽつりぽつりと言う。
「おまえも…、オレの好きな…神崎だし…」
「はっ。てめーと付き合う前の神崎さんだっつーの」
「座って………」
「座ってもいい?」と聞こうとしたへたれ姫だったが、途中で言葉を止め、黙って神崎の隣に座った。
「……おい?」
「オレは…今も、昔の神崎も好きだ」
へたれ姫は視線を合わさずとも、最後はきっぱりと言い切った。
「石矢魔のトップだとか…祀り上げられて…、気が張ってただけの…、ただの…神崎だよ…、おまえは…」
「臆病モンがなにを…。オレのこと、怖くねえのかよ?」
だから距離をとっていたのではないのか。
強気崎が怪訝な顔をすると、へたれ姫は小さく笑った。
「怖くは…ない。おまえに嫌われるのが…怖いだけだ。オレじゃ…、距離のつかみ方がわからないけど…」
「……………」
「神崎…、今、オレにどうしてほしい? オレが嫌で出て行ってほしいなら、出て行くけど…」
意外そうに目を見開いた強気崎は、「あー…」と声を漏らし、なんと返すべきかと迷った挙句、へたれ姫の肩に手を置いた。
「なにもしなくていい。ここに座ってろよ」
「…うん」
言いたいことが伝わったへたれ姫は小さく頷く。
「そういうところ…、カワイイと思う」
「!!」
油断してへたれ姫の笑顔を見てしまった強気崎は、
ゴッ!!
「はぷんっ!!」
問答無用の顔面パンチ。
思わずグーを出してしまった強気崎は、真っ赤な顔でソファーから落ちたへたれ姫を見下ろす。
「かっ、かかか、かわいくねーよ!! バーカァッ!! バァ―――カッッ!!」
画面は真っ暗になった。
姫川が消したからだ。
「猟奇的な彼女だけど、へたれなりにうまくやってくだろ」
「おまえだしな。最初のオレもあんなカンジだった」
次の日、部屋から出てくるカップルはひとりもいなかった。
.