リクエスト:こっち向いて、リーゼント。
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ちょうど昼休みも終わって姫川と一緒に教室に戻って来たオレは、疲れ切った顔で机に伏せた。
姫川とケンカにならずに済んだものの、呼びつけづらくなっちまった。周りの奴ら全部が敵に見えてくる。
いっそ夏目に打ち明けて協力してもらおうか。
…面白がるからやめておこう。
授業が始まり、頬杖をついてオレはまた姫川の背中を見つめていた。
ここはエアコンが効いてないから暑いのだろう。
汗が浮いているのが見え、思わず唾を飲み込んだ。
隣の古市からルーズリーフを1枚もらい、オレはもう1度手紙を試みようと考えた。
男は短い文でいいんだ。
“好きだ”
オレは手を止め、不敵な笑みを浮かべた。
(フ。我ながら、汚い字だ)
仕方ないのでこの紙は練習用に変更だ。
姫川に向ける言葉を思いつく限り綴ってみる。
“好きです”
“スキダ”
“好き”
“姫川 好きだ”
書けばこんなに伝えたい言葉がぽんぽん出てくるのに。
虚しさを感じた時だ。
「神崎」
「!!」
いつの間にか授業も終わって、横からいきなり姫川に声をかけられ、オレは急いで紙をくしゃくしゃに丸め、机の中に突っ込んだ。
「な、なんだよ」
「ここ最近、そうやって思い悩んだ顔してるの多いよな。…恋でもしてんのか?」
おまえにな。
「関係ねーだろ」
「……マジか」
頬を染めた反応があからさまだったのか、姫川は突然真剣な顔をして、いきなりオレの顔を覗きこんでくるから思わず仰け反ってしまう。
「な。もしかして神崎がオレを呼び出そうとしてんのは、そのことについての相談か?」
(この鈍感!!)
ガスッ
「!?」
内心でこいつの鈍さにムカついたオレは姫川の頭にチョップを食らわせた。
「コノヤロウ! リーゼント乱れたじゃねえか!」
「やかましい! てめーなんかに相談するくらいなら夏目に相談するわっ」
すると、頭を抱えた姫川はオレにしかめっ面を向けた。
「ああ、そうかよっ。柄にもなく心配してやって損したぜ!」
「…!」
(姫川なりに気にしてくれたのか)
「じゃあな」
そのまま帰ろうとするから、オレは思わずアロハシャツの裾をつかんでしまった。
「!」
「!!」
本当に思わずだったから、慌てて放した。でも、止まってくれてよかった。
オレは立ち上がり、机の横にかけたカバンを手に取る。
「今日の18時、石矢魔公園で話してぇ! 時間あるか!?」
「……18時だな。…わかった」
頷いてくれた。
オレは顔が口が緩むのをおさえ、「あとでな」と言って教室から飛び出した。
2時間後が約束の時間だ。
一度帰って荷物置いて着替えていくか。
ひとりの帰り道は不良共に絡まれやすい。
まあ、ブッ飛ばしてやったけどな。
問題は駅に到着した、そのあとだ。
その時のオレは気分が舞いあがっていたのだろう。
急いだあまり靴を半履きにしたのが悪かったのだろう。
電車に乗り遅れそうになって慌てて階段を駆け上がり、あと少しで頂上というところで、落ちてしまった。
昔から、恋愛運とか良くないよなぁ、オレ。
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