猫に被られました。
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次の日、姫川は蓮井にいつもの道を走らせ、学校へと向かっていた。
頬杖をつき、いつもの景色を眺める。
いつもとひとつ違っていたのは、ただ茫然と眺めるだけではなく、何かを探すように目が動いていたことだ。
路地、屋根の上、人ごみの隙間など。
「…!」
探しているものは違ったが、意外な人物が視界に入った。
「蓮井、止めろ」
「? はい」
蓮井は車を路肩に寄せ、姫川は窓を開けて歩道を歩く人物に声をかけた。
「神崎」
「!」
神崎は立ち止まり、姫川に振り返った。
「珍しいな。城山と夏目はどうした? つか、ここおまえの通学路じゃねえだろ」
もっともな質問に、神崎は挙動不審になりながらも答える。
「お、オレだって、ひとりで通学したい時あるし…。たまには別の道とか通りたい時あるし…。つか、ちょうどいいな。どーせなら乗せてけよ」
「あ? ちょ…っ」
車に近づいた神崎は後部座席のドアを開け、遠慮なく乗り込んでくる。
「神崎…?」
そこで気付く。
神崎もあの子猫を捜していたのではないかと。
いくらナメられた態度をとられたからといって、心根は面倒見のいい優しい男なのだ。
ちゃんと気にかけている。
小さく笑った姫川は快く受け入れ、蓮井に車を走らせた。
「…!」
少しして、神崎は姫川の肩に頭を預け、寄り添ってきた。
「……眠い。…着いたら起こせよ」
「…ああ」
子猫の影響か、神崎なりの精いっぱいの甘え方だろう。
誤魔化すように目を閉じるが、照れが隠しきれず、顔がほのかに赤い。
姫川は気付いていないふりをして神崎の頭をくしゃりと撫でた。
しばらくして車は赤信号で止まり、目の前の横断歩道を人間の波が横切っていく。
あの子猫も、心を許せる相手と出遭えればいいのだが。
姫川がそう考えた時だ。
「ミャー」
「! …あ」
はっと窓に振り向くと、歩道の端に立つポストの上に2匹の猫がいた。
茶トラの子猫と、銀色の子猫。
窓を挟んで短い間見つめ合う、姫川と茶トラの子猫。
姫川が安堵の笑みを浮かべると、信号は青に変わって車は再び走り出した。
「…心配すんな、ってよ」
いつの間にか寝息を立てている神崎に姫川は優しく声をかけ、学校に着くまで寝ていようかと神崎の頭に自身の頭を預けた。
「ミャー」
「ミャウ」
2匹の子猫は寄り添い合い、学校へ向かう姫川達の車を見送った。
「行ってらっしゃい」と手を振るように、尻尾を振りながら。
.END