猫に被られました。
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簡潔に説明すると、ベル坊の電撃で神崎と子猫の魂が入れ替わってしまった。
花澤に手鏡を貸してもらい、子猫の姿となってしまった神崎は未だに受け止めきれない状況に動揺を隠せない。
「うぉおおおっ、なんじゃこりゃああああ」
「人間と動物が入れ替わることってあるんだな…」
「いや、男鹿。おまえも魔王と入れ替わってるだろ」
つっこむ古市。
男鹿も人の事は言えず、愕然とする神崎を自分の席から見下ろしていた。
「じゃあ、神崎に入ってるのは猫か」
神崎の姿となった子猫は、神崎と違って現状に絶望することもなく姫川に抱き着いたままだ。
自分の体で普段ではありえないことをされると落ち着かない。
何より今はクラスメイトの前だ。
「ふざけんな! てめー、クソ猫! いつまで抱きついてんだ! 離れやがれ!」
喚く神崎に、子猫の視線が肩越しに向けられ、
「……フン」
神崎の顔で鼻で笑われてしまった。
「シャァアアアアアッッ!!」
毛を逆立たせた神崎は猫に飛びかかろうとするが、後ろから夏目につかまえられてなだめられる。
「神崎君落ち着いて。自分の体だよ?」
それでもかまわないのか、鋭い爪を出しながらジタバタした。
「……………」
「ミャァ…」
姫川は黙ったまま、甘えてくる子猫を見つめ、頭や首を撫でた。
すると、子猫は嬉しそうに目を細め、姫川の胸元に顔を埋める。
「……姫川?」
満更でもないような姫川の様子に神崎は首を傾げた。
「…いや、中身は猫だってわかってはいるんだが…、こう…、神崎の体で甘えられると…。あ、安心しろよ? だからといっていきなりトイレに連れ込んで一発かまそうってわけじゃ」
「死ねぃ」
バリッ!
「い゛…っ!!」
このままでいいと言い出しそうな姫川に飛びかかった神崎は、その爪で姫川の右頬を引っ掻いた。
姫川の頬に神崎の鼻と同じ、赤い3本線が出来上がる。
神崎をなだめていた夏目も、この時ばかりは神崎に同情して神崎を解放し、好きにさせた。
「おまっ、使いこなせてるじゃねーか、その体!」
姫川の机に着地した神崎は、「フン」とそっぽを向く。
「ミャー?」
神崎の声で鳴いた子猫はスンスンと鼻をひくつかせ、躊躇なく姫川の頬を舐めた。
ビシ…ッ、と教室の空気が凍りつく。
構わず、子猫は姫川の頬の血を舐め取った。
何度も言うが、神崎の体でだ。
「は、離れろゴラァ!! オレの体で何してくれちゃってんだバカネコがぁっっ!!」
「フシャーッ」
子猫は、服に爪を引っかけて引っ張る神崎に威嚇する。
「…姫川先輩」
姫川は固まったまま動かない。
怪訝に思った古市は姫川に近づき、姫川の顔の前で手を振ってみるが、反応はなかった。
そして察する。
「天に召されかけてます!!」
姫川の頭上では、リーゼントの小さな天使達がラッパを吹きながらくるくると回り、幸せの音色を奏でていた。
古市は提案する。
「入れ替わった原因がベル坊の電撃なら、もう一度食らえば元に戻るのではないか」と。
それで元に戻るなら、と神崎は渋々賛成だったが、子猫は凄まじく嫌がった。
「フシャアアアアッ!!」
姫川から引き剥がそうとする輩を、手加減なく蹴飛ばしたり引っ掻いたりする。
「ウーニャーッ!」
子猫は首を横に振り、神崎の顔で姫川に涙目で上目遣いという武器を使う。
「……まあ、半日くらいいいんじゃねーか?」
「ひーめーかーわあああああッ!!」
今度は引っ掻くどころか引き裂いてやりたくなる。
授業中も子猫は姫川の傍から片時も離れようともせず、授業をしていた佐渡原はどうしたものかと黒板の前に立ちながら考える。
つっこむべきか、注意すべきか、スルーすべきか。
「スルーで」
「ひぃっ!」
佐渡原の心情を察した神崎は、自分の机に座って先手を打っておいた。
昼食の時間になれば、子猫は箸が使えないので傍にいる姫川に食べさせてもらった。
「ニャー」
「口開けろ」
食べさせているのは神崎の弁当だ。
神崎はなぜ自分の弁当をやらねばならないのかと不服な色を浮かべている。
「神崎先輩どうぞー」
「ネコちゃんに塩っ辛いものあげちゃダメよ、由加」
「味噌汁と混ぜて猫まんまふうにしてみた…」
神崎は女子達から弁当を分けてもらっていた。
隙を見て花澤はその頭を撫でる。
「コラパー子」
「いやだってちんまりとした頭があったら撫でたくなるじゃないっスかぁ。パネェかわいいっス」
「わ、私も…」
「弁当分けてやってんだから少しくらいいいじゃない」
「チッ…」
渋々頭を撫でさせてあげる神崎。
「……………」
子猫にごはんを与えながら、姫川はその様子を目の端で眺めていた。
「お…、オレもいいか?」
手を挙げて名乗り出たのは東条だ。
触りたくてうずうずしている。
「おまえもか東条」
「オレのおにぎりをやるから」
「いいよおまえはっ。食うモンそれしかねーんだろ!」
神崎は仕方がないとため息をつき、小動物に飢えている東条に撫でさせてあげる。
なでなでなでなでなでなでなでなでなで…。
「おい…」
大きな手に撫でられるが、女子達より撫でる時間が長い。
そろそろ首が痛くなってきた。
すると、横から伸びた両手が神崎を取り上げた。
ずっと座りっぱなしだった姫川だ。
「…姫川?」
「………なんか…、ムカついて…」
体は子猫なのに、神崎がちやほやされるとイライラが募ってしまった。
「何がムカついてだ。猫とイチャイチャしてたクセに」
「うるせーな。おまえもオレ以外に撫でられてんじゃねーよっ」
「は、はあ? オレ今猫だし…」
「中身がおまえだとイライラすんだ」
毛に覆われてわかりにくいが、神崎の頬が赤く染まった。
向き合って言われると嫌でも照れが出てしまう。
「やっぱりオレ…、体も心も神崎だと…」
「ば…、ば、バカ言ってんじゃ……」
傍から見たらなんともシュールな光景だ。
甘い雰囲気が漂う2人に、クラスメイトを代表して古市が声をかける。
「あ…の、すみません、ちょっといいですか?」
「「あ?」」
今いいところだ、と睨みつける2人に、古市はドアを指さして伝える。
「猫が、凄い勢いで飛び出していきましたけど…」
「「……は!!?」」
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