神と仏、どちらに縋りますか?
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
相談所で連絡を受けた男鹿と古市は血相を変えて車を飛ばし、病院に駆けつけた。
ロビーのベンチには、頭に包帯を巻いた神崎が座っていた。
「神崎先輩…!」
「…何があった?」
「……………」
連絡を寄越したのは神崎だ。
宙を見つめる神崎は、ゆっくりと病院に運ばれてくる前のことを話した。
車内に声が響き渡った直後、車がとんでもないスピードで走り出した。
赤信号でも構わず走り抜け、他の車からはクラクションを鳴らされる。
運転している城山は蒼白な顔でブレーキをかけようとしたが、足は動かなかった。
反対に、アクセルにかけた足は上から押しつけられるような圧力を感じた。
そして、神崎達を乗せた車は、曲がり切れずに勢いよく無人のビルの中に突っ込んでようやく停車した。
ビルの壁に激突した車は前面が潰れ、死者が出なかったのは、仏の加護があったからか。
だが、城山と夏目は神崎よりも酷い重傷を負ってしまった。
夏目は右腕と左脚とあばら骨を骨折し、城山は骨折どころか内臓も損傷していたが、かろうじて命を取り留めていた。
「クソ!!!」
城山の右足首にくっきりと生々しく残っていた小さな手の痕を思い出し、奥歯を噛みしめた神崎は立ち上がってベンチを蹴飛ばす。
「……あの人形か?」
「ああ…。ナメやがって…。クソ人形が」
鬼も逃げ出しそうな形相をする神崎は、男鹿と古市の間を通過して病院から出ようとする。
「あ…」
「どうする気だ」
声をかけてきた男鹿に神崎は足を止め、肩越しに2人を睨みつける。
「決まってんだろ…。2度とこんなマネさせねえようにきっちり成仏させてやる。次は失敗しねえ…!! 必要とあらばオレが地に堕とす…!!」
仲間をやられた神崎の怒りは計り知れない。
そのまま行こうとする神崎の前に、もうひとりの来訪者が現れる。
「……姫川」
「……………」
姫川は黙ったまま、神崎と見つめ合う。
これから神崎が何をしにいくは見当がついていた。
神崎は煩わしげに舌打ちし、姫川の横を通過する。
「!」
不意に手首をつかまれて振り返ると、真っ直ぐな目を向けられた。
「一緒に引き受けた仕事だ。オレを置いてくんじゃねえよ」
「…っ、てめーは、もういいだろ。これは、オレだけでも…」
「そうやってあからさまにオレを避けようとするのはやめろ。不愉快だ。これは仕事だぞ。てめーもプロなら自覚はあんだろ。過去のことは忘れろとは言わねえが、オレのこと気にしてるくらいならこの仕事から降りろ。今度こそ命取られる前にな…!」
軽く神崎を突き飛ばした姫川は、踵を返して蓮井を待たせている車の後部座席に乗り込んだ。
「…わかってんだよ、そんなこたぁっ」
小さく吐き捨てた神崎は、急いで姫川を追いかけて同じく後部座席に乗り込む。
男鹿と古市はそれを見送り、2人の無事を祈った。
.