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翌日の自由時間で姫川は自ら動き出した。
向かうところは当然神崎のところだ。
どこへ行ったのかと思えば、避難室に移動して園児たちと一緒に走り回っていた。
目つきが悪く保護者からもビビられてしまう神崎だが、二葉のおかげか子どもの扱いには手馴れたもので、子ども達には人気者だ。
神崎は今、数人の園児たちを両脇に抱え、ひとりを肩車して走り回っていた。
園児たちは遊園地のアトラクションのように楽しそうい騒いでいる。
姫川はそれを走って追いかけ、神崎に声にかけた。
「神崎!」
「おう、おまえも参加するか?」
「しねえよ! 聞け! おまえにとっても美味しい話だぞ!」
「おやつの時間はまだだぜ?」
「だから最後まで聞けよ!!」
神崎が止まってくれないので、姫川は走りながら話を持ちかける。
「おまえがオレの言うこと聞くってなら、おまえの欲しいものなんでもやってもいいぞ! 物じゃなくても、地位でも名誉でも…」
「いらね」
「は!?」
あっさりと即答され、姫川は耳を疑った。
「おま…っ、人の話聞いて……」
「よ―――し、次はおまえだ」
避難室を1周し終えた神崎は、両脇に抱えていた園児と肩車していた園児をその場におろし、順番待ちしていた園児たちを両脇に抱え、姫川を肩車して再び全力で走り出した。
*****
(楽しかった…)
次の自由時間、姫川は未だに保育室の隅で1人反省会をしていた。
今まで経験にないことに頭を抱える。
ここまで子ども扱いされたのは初めてだ。
(なんだよあいつは欲しいものとかねーのか? バカなのか? どうしようもないアホなのか? こうなったら、あいつをここから追い出しちまうか? ……いやいや、あいつをくっぷくさせてからじゃねーとオレの気がおさまらねえ…!!)
「どーした姫川? 頭痛いのか?」
はっと後ろに振り返ると、前屈みになってこちらを見下ろしている神崎がいた。
「な…、なんでも……」
「そうか? ムリすんなよ」
そう言って神崎は姫川の頭を撫でた。
「!!! き、気安く触んな!! 貧乏がうつるだろ!!」
パチンッ、と神崎の手を払った姫川は逃げるように保育室を飛び出す。
神崎は打たれた手を擦りながらそれを見送った。
(…オレ、相当嫌われてるなぁ…)
一方、姫川は顔を赤くしたままあてもなく走り回っていた。
恥ずかしさで泣きそうになる。
(「リーゼントが崩れる」からって…)
「親にも撫でられたことないのに―――っ!!!」
叫びながら廊下を全力疾走する姫川と、神崎に会うために保育室へと向かう二葉がすれ違い、二葉は何事かと立ち止まって走り去る姫川に振り返る。
「……根暗かと思ってたら…」
意外な一面を見てしまった。
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