小さな話でございます。
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神崎と姫川が付き合って、数ヶ月が経過しようとしていた。
キスもしたし、デートもした。
あとは夜のおつき合いだけなのだが、神崎は恥ずかしがってそれを拒み続けている。
日が経つごとに増す、姫川の欲求。
いつもなら、金を渡せばできたことだったのに、神崎相手ではそれが通用しない。
だからこそ魅かれたのだが、いつまでもキスをしたり手を繋いでいるだけの仲で留まっているわけにはいかなかった。
「神崎…、今日、オレの家に来る? お泊まりで」
今日一日の授業も終わり、神崎がカバンを持って帰ろうとしたところで姫川が声をかけた。
「いや…、今日は……」
そう言うのも何度目だろうか。
姫川と付き合いたての頃はあんなに気軽にゲームしに来ていたというのに。
今の姫川には拒絶の言葉にしか聞こえなかった。
「おまえ、そんなにオレと…そういうことするのが嫌なのか?」
下心を隠さず囁くように尋ねると、神崎は顔を真っ赤にし、視線を逸らした。
「嫌ってわけじゃ……ねえけど……」
罪だと思うほどの初々しい反応に、姫川はガマンしている理性が切れそうになるのを堪える。
「神崎っ!!」
「うおっ」
いきなり両肩をつかまれ、ついに怒鳴られるかと構えたが、
「オレは、おまえに抱かれたいんだよっ!!」
教室にはまだ数人の生徒が残っているというのに、姫川は真剣な眼差しで力強く言った。
「………ん?」
その言葉に、神崎は慌てるより先に疑問が浮かんだ。
「抱かれたい」。
確かに姫川はそう言った。
「オレに…、抱かれたいのか?」
「ああ!」
戸惑う神崎に構わず、姫川は頷いた。
「ガタイはおまえの方がいいのに?」
神崎はてっきり抱かれるのは自分だと思っていた。
身長も姫川の方が高く、その差は4センチだが、自分の方が小柄だというのに。
「神崎…、オレじゃ…抱けねえのか?」
「……………」
意外にも神崎は冷静に黙って考える。
10分くらい。
「抱かれたい」。
もう一度その言葉を反芻してみる。
姫川はポリシーである、リーゼントとサングラスをとってしまえばびっくりするほどのイケメンになる。
それも、女装が似合うくらいの美形だ。
抱けないことはない。
たぶん昂れる。
そういえば、女と何人か付き合ったことはあっても、男は自分が初めてなのだ。
いくら百戦錬磨といえでも、相手はすべて女。
男とでは話が違うのだろう。
男と付き合ったのが初めてなのは自分も同じだが、それでも全部任せてくれるというのか。
「……神崎?」
シンキングモードに入った神崎に姫川が声をかけると、神崎は姫川の肩を叩いた。
「そうか…。気付いてやれなくて…悪かったな…」
「神崎…」
「オレ…、おまえを満足させられるかわからねーけど…、大事にするからな?」
微笑みを浮かべて男前なセリフを言う神崎に、姫川は目を潤ませた。
そのあと、2人は手を繋いで(珍しく神崎から)、教室を出て行った。
そんな2人の背中を温かく見つめる城山と、静かに合掌している夏目。
*****
次の日の朝。
神崎は自分の席に伏せて肩を震わせていた。
その首筋にはいくつものキスマークが散らばっている。
「騙された(泣)」
「だよねぇ」
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