執事の優雅な休日。
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朝っぱらからオレの家に来客があった。
確かに今日は夏目と城山と休日を過ごす予定がある。
集合場所も決めたのに、わざわざどちらかが迎えに来たのだろうか。
それにしても待ち合わせから2時間も早い。
朝食も食って洗面台の前で歯磨き中だったオレは、歯ブラシで歯を磨き、口の周りを若干泡だらけにしたまますぐそこの玄関へと向かう。
「おはようございます、神崎様。本日もお日柄もよく、一日晴れるそうですよ」
「……………」
黒服着てるくせに朝日より眩しい笑顔のそいつに、オレは歯ブラシを咥えたまま首を傾げる。
「神崎様、歯ブラシを咥えたまま歩いては危険でございます」
笑顔のまま注意されたが無視し、そいつの近くにいつもの銀髪リーゼントがいないか探してみるが、それらしい姿はない。
表で待っているのだろうか。
「………おまえの主人は?」
「竜也様は本家の方へ一時的に帰省なさっているので、ここには私一人で来ました」
そういえばあいつ昨日、「親が、「せっかくの夏休みだから一度戻ってこい」ってうるせーから、明日実家に帰る」とか聞いてもねーのに言ってたっけ。
あいつは家に帰った。
それはわかった。
だったら、なんでその執事のこいつが今ここにいるんだ。疑問で頭いっぱいになった時、その執事―――蓮井は礼儀正しくお辞儀する。
「本日は、お世話になります」
「……はい?」
頼むから誰か説明してくれ。
そこでちょうど、組員のひとりが「若」と声をかけてきた。その手に持っているのは、着信中のオレのケータイだ。
「先程から鳴りっぱなしですが…」
まさかと思ってケータイを受け取って開いてみると、着信は姫川からだった。
「ちょっと待ってろ」
「はい、お気になさらず」
オレは蓮井を玄関で待たせたまま、廊下の曲がり角を曲がってすぐに着信に出た。
「説明しろコラ」
“ああ…、やっぱりオレが言うより先に着いてたか…”
オレの第一声で状況を把握したのか、眠そうな声でそう言われた。
「なんで蓮井をオレが世話することになってんだ」
“世話するというか…。今日一日、オレが実家に戻ってる間、休暇中のあいつの遊び相手をしてもらいたくてな…”
「聞いてねーぞ」
“悪い。蓮井がそっちに到着する前に頼むつもりでいたんだが…。どうやらオレは蓮井がいねーと決まった時間に起床できないようだ”
呑気な欠伸が聞こえてケータイの電源を切ってやろうかと思った。
ダメだ、この坊っちゃん。
“夏休みに入ってふと思ったんだ…、そういえば最後に蓮井に休み与えたのいつだろう…って”
「ろーどーきじゅんほーって知ってるか?」
いくら執事だからって毎日ぶっ続けで働かせるのはいかがなものかと。
“だから、オレも一度実家に戻るし、いい機会だと思って昨日急だけど休みを与えてやったんだよ。一日だけな”
今日からその休みがスタートしてるわけだから、蓮井に起こされることはなかったらしい。
「だからって、オレに相手させるのもどうなんだよ…。好きに過ごさせればいいじゃねーか」
“あいつ、休み慣れしてないから、どうやって休日を過ごしていいかわからねーんだ。数年前、「休日とは、どのように過ごすものでしょうか?」と聞かれたから、「なにもせずにダラダラ過ごせばいいんだよ」って言ったところ、驚くことなかれ、本当に何もせずに過ごしやがった。トイレ以外、石のようにソファーに座ったまま動かなかったんだ”
想像しただけでもゾッとした。
メシも食わなかったのか。
姫川の説明が悪かったにしても、まともに受け取って実行する蓮井も恐ろしい。
“ずっとオレに仕えてたから、友人も恋人もいねーからな。だから…”
「友人の代わりにオレに相手させようってか」
“頼む。どうせ今日、夏目と城山と一緒に遊びに行くつもりだろ? ひとり増えても問題ねーだろが…。それに、オレも、こんなの頼めるのおまえだけだし…”
そう言われたら何も返せねーじゃねーか。
相変わらず卑怯な奴だ。
「……わかった。今回だけだからな。…まあ、蓮井はオレに任せて、おまえは家でゆっくりしてろ」
“頼りになるな、やっぱ…。……あれ? ポマードどこ置いたっけ…”
途中で、電話の向こうから引き出しやら棚を開ける音が聞こえた。
そのあと、聞こえたのか思い出したのか、玄関から蓮井が声を上げる。
「あ、神崎様ーっ、竜也様のポマードは見つけやすいようにダイニングのテーブルの上に…」
“テーブル…。お、あった”
「蓮井がいねーとダメ人間かっ!!」
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