小さな話でございます。
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空が夕闇に染まる頃。
窓から聞こえるのは、グランドで野球やサッカー、テニスなどの部活に勤しむ生徒達の声。
冬至が近くなるほど、暗くなる時間が早まる。
石矢魔教室にはひとりの男が残っていた。
姫川だ。
机に脚を投げ出し、スマホの画面を見つめたまま時間を潰している。
ドアが開いた。
視線を向けると、驚いた顔をした神崎が立っている。
「…なんだよ、まだ残ってたのか。電気くらいつけろよ。なんか出たかと思っただろ」
「おまえ待ってたんだけど」
「はぁ?」
「一緒に帰る奴がいなくて寂しいんじゃないかってな」
夏目はバイトで、城山は夕飯の買い物に行かなければならなかったので、この時刻まで神崎を待ってはいられなかったのだ。
神崎は顔をしかめ、「別に寂しくねえよ。ガキじゃあるまいし」と呆れるように言った。
たまたま早乙女に目をつけられ、資料を運ぶ手伝いをさせられ、こんな時間になってしまった。
「余計な気ぃつかってんじゃねーぞ。似合わねえ」
カバンを取りに来た神崎は、ため息をつきながら机と机の間の通路を通る。
姫川の席を通過しようとした時だ。
「!」
手首をつかまれた。
肩越しに振り返ると、姫川はニヤニヤとしている。
「……………」
ぶんぶんと手を振るが、放す様子はない。
「……何?」
「いい感じに暗くなってきたから…」
姫川は席から立ち上がり、神崎の肩をつかんで自分の机に押し倒す。
「っ痛て!」
硬い机に背中をぶつける神崎は顔をしかめた。
姫川は笑みを絶やさず、「悪い」と短く言いながら神崎の裾に手を入れる。
「おい…!?」
姫川がしようとしていることを理解した神崎は慌てる。
ここは教室だ。
しかも、校内の誰かが全員帰ったわけではない。
「て、め、盛ってんじゃねえぞ…!!」
圧し掛かる姫川が遠慮なく首筋を舐めてくる。
「2人っきりの教室って興奮しねぇ?」
「しねぇよ!! 一緒にすんじゃねえ!!」
「どけ」と髪をつかんだりして抵抗するが、髪型が崩れても姫川はやめる様子はない。
「ん…く…っ」
シャツ越しに乳首を噛めば抵抗が弱くなる。
「神崎」
卑怯にも優しい声色だ。
殴ろうと握りしめたコブシが緩まる。
神崎は深く深くため息をついて横顔を向けた。
「…おまえのスイッチおかしい。壊れてんじゃねえの?」
「失礼だな。おまえと2人っきりだといつでもオンなんだよ」
そんなことを言いながら手は神崎の服を脱がしにかかっている。
シャツを胸の上までたくしあげ、胸元や腹にキスを落とせば、甘いくすぐったさに身をよじった。
「あ…」
求めるようにキスされ、手を這わされるのは嫌なことじゃない。
漏れる声をどうにか抑えられないかと考えるが、触られれば触られるほどどうでもよくなってしまう。
空はゆっくりと暗くなり、ここが教室であることを忘れてしまいそうになった。
「ひめ…。ン…ッッ」
後頭部に手を回されて少し持ち上げられ、強引なキスをされる。
息も熱も上がってきた。
2人きりの教室に荒い息遣いが反響する。
おそるおそる手を伸ばした神崎の両手が、姫川のシャツのボタンを外しにかかる。
「神崎…、腰…上げろ」
「ん…」
言う通りにしようとした時だ。
ガタン…ッ
「「!!」」
はっと神崎と姫川は教室のドアに顔を上げる。
人影が立っていた。
「うわああああああ!!!」
人影は数歩たじろぎ、狂ったように絶叫しながら逃走した。
誰が見ていたのか確認できず、2人は茫然とするだけだ。
「……………」
「……あっちゃ~」
「「あっちゃ~」じゃねえ!!!」
ゴッ!!
「ぶっ!?」
甘い雰囲気は絶叫にかき消され、我に返った神崎は一度緩めたコブシを再び握りしめて今度こそその横っ面に叩きこんだ。
それから身を起こして姫川の襟をつかんで、ガクガクと揺すった。
「今の誰だった!!? だから盛んなっつったろうがこの万年発情期!!!」
「酔う…。神崎、酔う…」
「うあーっ!! 明日からオレ不登校になる!! 絶対噂広まるぞ!! あ゛――――っ!!!;」
姫川との関係は石矢魔勢に秘密にしている神崎にとっては、耐え難い事態だ。
明日からの夏目達の反応が怖い。
対して姫川は呑気なものだ。
「もういいじゃん。おまえに変な虫つかなくなるし。全員に知ってもらおうぜ」
「教室でも平気でヤり合ってる仲なんて余計に知られたくねえよ!! ドン引きの嵐だよ!! もうしばらくおまえとはヤんねえからな!!!」
「は!? ちょっと待てふざけんな!!」
それを聞いてようやく焦る姫川。
神崎は「うるせーっ。帰るっっ」と乱れた衣服を整え始めた。
「せめて処理させろよっ。このままで帰れるか!!」
ドゴッ!!
「~~~っっっ」
ブチ切れた神崎は、姫川の股間を蹴り上げて教室を出て行った。
一人残された姫川は痛みに悶えながら、涙目で宙を睨みつける。
「クソ…ッ。目撃者見つけたら殺す…っっ」
逆恨みとは自覚せず、決意するのであった。
2人に明日はあるのか…。
※実はこっそり続く。
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