小さな話でございます。
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神崎の家には1匹のハムスターがいます。
名前は姫ハム。
頭はリーゼント、目には色眼鏡をかけています。
エサの時間となりました。
高級なひまわりの種が入った袋を片手に持ってきたのは、主人の神崎一。
金髪で耳と口にチェーンピアスをした、極道の息子です。
神崎の足音を聞きつけ、姫ハムはウッドハウスの中から顔を出しました。
「エサだぞー」
胡坐をかいて座り、ケージの蓋を開けて皿を取り出し、ひまわりの種を入れてから戻します。
“……チー(そうじゃないだろ神崎)”
「あ? なんだその目は」
何か言いたげな姫ハムは、ひまわりの種を見下ろしてから神崎を見上げます。
それから拗ねたように皿に背を向けました。
「……本当にてめーは」
慣れさせようとしましたが、うまくはいきません。
呆れながらも神崎は自分の手のひらに数粒のひまわりの種をのせ、ケージの蓋を開けてそこへ自分の手を入れました。
それを待っていたかのように、姫ハムは神崎の手に飛びつき、その手のひらの上でひまわりの種を食べ始めます。
「贅沢なハムスターだな」
姫ハムは食事の際、神崎の手の上でしか食べません。
「ははっ、やめろ…っ、それ、オレの小指だっつのっ」
“チ(知ってる)”
知っていながら神崎の小指の先を軽くモヒモヒすることも。
手加減して噛んでいるのでくすぐったいだけです。
そして、食事が終わってもすぐにはおりません。
「おい」
“Zz…”
時々、おなかが満たされればそのまま眠ってしまいます。
ムリに起こすこともできず、神崎は手のひらを開けたまま動けずにいました。
「ったく、しょーがねーやつだ。太ってきたんじゃねえのか? ちゃんと滑車まわってんのかよ…」
肩を竦ませますが、それでもやはり愛らしい自分のペット。
和まないはずがありません。
そんな姫ハムには、秘密があります。
「Zz…」
“チ(よし、寝たな)”
器用にケージから脱出し、眠っている神崎の頭に寄り添うことです。
たまにつむじを探してみたり。
朝になればちゃんとケージに戻ります。
「ふぁ…、はよ、姫ハム」
“チ(おはよ)”
「うわ…、今日の寝癖もひどいな、オレ…」
“チー”
ひと時の間も主人の傍にいたい、そんな姫ハムでした。
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