とある家族猫。
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至福な顔をする東条の背中にのっけてもらって、アジトに到着した頃には日がとっぷりと暮れていた。
「バカヤロウッ!!!」
おふくろと顔を合わせるなり、雷が落ちる。
「あんな危ねぇとこ行ってケガして帰ってきやがって!!」
オレとたつやはおふくろの前で並んで座らされ、その頭に拳骨を食らった。
傍にいる親父と、東条、古市は「まあまあ」と鼻息の荒いおふくろをなだめようとする。
涙目のオレとたつやの頭には小さなコブがぷくりと膨らんでいた。
うちのおふくろは怒らせるとそこらへんのオス猫より怖い。
「東条たちにも迷惑かけんじゃねえ!!」
「「にゃう…」」
小さく返事をして頷く。
「東条も男鹿も、チビだからって甘やかすんじゃねえ!!」
「「にゃう」」
なぜか東条と男鹿も叱られ、男鹿は犬のはずなのに猫語で返事をして頷いた。
「夏目と城山も余計なこと言うんじゃねえ!!」
「「にゃう」」
こちらはすでに怒られたあとなのか、オレ達と同じく頭にコブをつくっていた。
「つか…、うちの子にケガさせた奴ら連れてきやがれっ!! 百回殺ぉーすっ!!!」
「落ち着けっつの。もうこいつらも懲りたことだし…、そのくらいにしといてやれよ、神崎」
「姫川もこいつらに対して甘ぇよ」
「そう言うなって。こいつら、オレらのためにこんな立派なマタタビの枝持ってきてくれたんだから…な?」
おふくろは親父がオレ達に甘いと言うが、おふくろも大概親父に対して甘い。
現に、親父に柔らかくなだめられ、ぶつくさ言い分をいいながらも徐々に怒りがおさまっていくのが目に見える。
おふくろはオレ達が運んできたマタタビの枝を見下ろし、目を逸らした。
「こんなもん…、もったいなくて手ぇ出せねえよ…」
その口元は緩み、「ありがとな…」と照れながら言った。
「おふくろォ…っ」
途端に疲れなのか安堵なのか涙が溢れてきた。おふくろは近づいてきて、「あー、泣くな泣くな」と不器用ながらも体を摺り寄せてなぐさめてくる。
「たつやも、はじめを守って偉いじゃねーか」
親父が言うと、たつやは「当然だろ」と生意気に言う。
「大事な弟なんだからな…」
その日の晩メシは、おふくろ達が魚屋からかっぱらってきた魚で豪勢だった。
魚屋のオヤジ泣かせだな。
その夜も、小さなバスを覗いてみると、おふくろと親父はまた仲良くじゃれあっていた。
今夜だけは一緒に寝てくれてもいいかな、とバスに上がろうとしたところを、たつやに首根っこを咥えられて引き止められる。
「だから、邪魔するなっての。こっちこいバカ」
「な゛―――」
抗議の声を出すが放してくれない。
「おまえはオレと寝とけばいいんだよ」
「引きずんじゃねえコラァ~。な゛ー、聞いてんのかたつやぁ~」
「親父達がなにしてるかよくわかってねえくせに突っ込もうとすんな」
「にゃんだよ、なにしてるってんだよ~」
「あ゛ー、おこちゃまにはわかんねーか」
「ああ゛?」
すると、たつやはオレの首根っこから口を放し、いきなり目前まで迫り、口をオレの口に押し付けてきた。
「…?」
突然のことにオレはキョトンとする。
「魚の食べかすでもついてたか?」
舌なめずりをして口の周りを舐めてみるが、魚の味はしない。
それを聞いたたつやはなぜか肩を落としていた。
「ガキ」
「にゃ゛ー!?」
ふて腐れたようにオレの先頭を歩いて寝床へと向かう。
「にゃんだってんだよ…」
寝床につけば、またいつものようにたつやの傍に寄り添って眠りにつく。
今日はいつも以上に動いたし、なんでたつやがいきなりあんなことをしたのか考えてたから夢の中に入るのに時間はかからなかった。
ただ、たつやがあんなことをした理由を知るには、オレの場合、まだまだ時間がかかりそうだ。
それはまた別の話…になるかもな。
親父、おふくろ、たつや…、おやすみにゃさい。
.END