電子レンジでタイムスリップしました。
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10年後。
オレは石矢魔の同窓会に来ていた。
体育館で集まり、軽いパーティー状態だ。
このあとは男鹿達と合流して、聖組で飲み会だというのに、あいつはまだ現れない。
海外の出張で帰ってきてるはずなのに。
「オレ、ちょっと探してくる」
城山と夏目に声をかけてから、オレは3年校舎へと向かう。
教室に向かう途中、一瞬だけ目的の教室の窓が光った気がした。
「?」
訝しげに顔をしかめたオレはおそるおそる教室に近づき、中を窺った。
教室にいたのは、机に腰かけている姫川ひとりだ。
「姫川…」
「おう。久しぶり」
「なにが久しぶりだ。体育館に顔も出さねえで…」
「懐かしくて寄っちまった」
そう言って小さく笑うそいつに近づくと、ほのかな甘い香りがした。
匂いのもとを辿ると、オレの席に湯気を立たせたホットココアの缶があった。
「…おまえ、甘いの嫌いじゃなかったか?」
「やるよ。おまえのだ」
「? どうせならヨーグルッチ残せよ」
そう言いながらもオレは半分くらい残ったココアを口にする。
同時に、懐かしい思い出がよみがえりかけた。
確かオレは昔、ココアのせいで不思議な経験をした気がする。
それがなにかは思い出せない。
10年前だろうか。
家庭科室で倒れていたところを姫川に発見されて、横抱きにされて保健室に連れていかれたことは覚えてる。
「大丈夫か?」と顔を近づけてきたのを見計らって、オレは「好きだ」と姫川に言ったことも。
あの時、どうしてあんなことを口走ったのかはわからない。
ただどうしても言わなければならない気がした。
そうじゃないと後悔する気がした。
たとえこの先一緒にいることができなくても。
オレが告白したら、あいつは面食らった顔をして、そっとオレのファーストキスを奪っていった。
そしてめでたく、今でも恋人同士だ。
親には今でも反対はされてるが、オレ達は屈せずともにいる。
愛に障害はつきもの、って言った奴の言うとおりだ。
なんて考えていると、姫川はオレの体を抱きしめてきた。
「指輪、つけてきてくれたのか」
「た、たまたまだ」
今年のオレの誕生日に、姫川から婚約指輪を渡された。
純銀の指輪を。
互いの髪色に合わせてなのか、姫川の左手には純金の指輪が光っている。
「待ってた…」
「ん?」
「いいや?」
クス、と耳元で笑われる。
「神崎…、オレがファーストキスの相手だって?」
突然のことにオレは目を見開いた。
「だ、誰がそんな…っ」
夏目たちにも言った覚えはない。
「自分で言ったんじゃねえか」
「はあ!?」
「キスしたら離れられなくなるってことも…」
「う、自惚れてんじゃねえよっ!!」
だからこうして今のオレ達がいるわけだが。
「神崎、ほら、見上げろ」
「!」
姫川はポケットから、2つ持っているうちのひとつのケータイを取り出し、オレと自分に向け、シャッターを押した。
「再会記念だ」
.END