電子レンジでタイムスリップしました。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「…?」
眩しい光がおさまったようで、目を開けた瞬間オレは絶句する。
いつの間に外に出ていたのか、いつの間に移動していたのか、オレは石矢魔校舎の前に立っていた。
「…んん?」
オレはさっきまで聖石矢魔の校舎の、家庭科室にいたはずだ。
あの光が瞬いた間になにが起きたのか。
しかもなにより、石矢魔校舎が建っていることに仰天していた。
男鹿に壊されたはずなのに。
工事をしている話は聞いてはいたが、建造されるのはまだ先の話だ。
昔からそこにあったように建っている。
「どうなってんだ…」
周りに人の気配はない。
意を決したオレは昇降口から中へと足を踏み入れた。
校舎内に入って、疑問が増す。
あちらこちらに視線をやると、ガラス窓は割られ、壁には幼稚なラクガキが見当たった。
石矢魔生徒の痕跡だ。
まだ開校されてないうちに、どこかのバカがさっそくおっぱじめたか、それとも、オレ達には黙って石矢魔生徒が通っているかだ。
ひんやりとした空気に包まれた静かな廊下に自分の足音が響く。
もうすぐ夕方。
薄暗くなる廊下に不気味さを覚えた。
「…!」
そこでオレは気になるラクガキに目をとめた。
窓の下に横書きで書かれてある。
“祝!! 石矢魔新校舎10周年!!!”
「…10周年?」
新校舎ということは、男鹿に壊されて新しい校舎が建って10年経過したってことか。
そんなバカな。
ありえない、とオレは鼻で笑い、3-Aへと向かった。
自分の教室だ。
3年校舎にやってきて、3-Aに顔を出すと、やはりというか誰もいなかった。
机の位置はバラバラ。
自分たちの好きなように置いてある。
オレの席はあのへんか、と自分の席に近づくと、机になにか書かれてあるのを見つけた。
“伝説の東邦神姫・神崎一の席!!”
「誰だラクガキした奴」
古びた机だ。
新校舎だったら新しいの使えってんだ。
そう思いつつ、オレは不安を覚えた。
ここは確かにオレの教室のはずだ。
この校舎は石矢魔校舎のはずだ。
なのに、空間にうまく馴染めない。
オレ自身とこの校舎が釣り合っていない気がした。
オレは自分の席に座り、教室内をぐるりと見回した。
その時だ。
突然、教室のドアが開かれた。
「あ」
「!」
現れたのは、スーツ姿の姫川だ。
「神崎…だよな?」
「え、あ…」
なんでこいつがここに来るんだよ。
なんでスーツ姿なんだよ。
「…久しぶりだな」
「ああ!? なにが久しぶりだ。さっき会っただろうが。…つか、なんでスーツ着てんだ?」
不可解な姫川の発言に、オレは席から立ち上がって返した。
すると、姫川は首を傾げ、ゆっくりと机の間を通りながらこちらに近づいてくる。
「そっちこそなんで学ランなんだよ。似合うけどよ。自分が28だってこと忘れてねーか? あと2年で三十路だっつーの」
「ボケてんのか! オレはまだ18だ! 誰が三十路だコロスぞ!!」
会話がかみ合わねえ。
「は…、なに言って…」
そこで姫川がオレの顔を見て一度黙った。
「………タバコやめたか?」
「あ?」
すると、姫川はオレの首元にいきなり鼻を近づけて嗅いできた。
「ちょ…っ!!」
慌てたオレは姫川を突き飛ばした。
「いいい、いきなりなにしやがんだてめえ!! オレがタバコ吸うわけねえだろ!! タバコは20から!!」
「……神崎…、おまえ…」
オレが肩を押したところをおさえた姫川の右手に、目が留まる。
左手の薬指に、指輪がはめられていた。
.