12年前、とある大激闘がありました。
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「ぐ…っ」
満身創痍のアヴァンは魔石を握りしめたまま、ふらふらと遊園地から逃げ出そうとしていた。
「ようやく手に入れたんだ…。こんな…ところで…」
観覧車から離れ、出入口に向かおうと片脚を引きずりながら進んでいたが、目の前に、男鹿とヒルダを乗せたアクババが舞い下りる。
「! チッ」
「どこへ行く。いい加減観念したらどうだ?」
「くく…っ。観念だと? てめーら、状況をわかってないな…。オレの手の中に魔石があるかぎり、この世界も時間も思いのままだ!!」
アヴァンは手の中の魔石を上にかざした。
子姫がやったように、周りの時間を止めようとしている。
「往生際の悪ぃ…」
今度こそのしてやろうかと一歩踏み出した男鹿だったが、ヒルダは「よせ」と男鹿の肩をつかむ。
「黙ってみていろ」
「…!?」
異変はすぐに起きた。
「な…、なに…?」
目の前の男鹿とヒルダが大きくなっているように見えた。
いや、自分が縮んでいるのだ。
「ど…、どういうことだああああ!!?」
幼児の姿になったアヴァンは自分の小さな手を見て絶叫する。
服は縮まず、ズボンだけが地面に落ちていた。
「フン。愚か者が。貴様の脳はウジ虫以下か。そんな姿になって、まだ気付かないのか? クロノスの魔石に見放されたことに…」
ヒルダは冷めた目で小さくなったアヴァンを見下ろす。
「は…、はあ!? ふ、ふざけんじゃねえ! あの人間のガキにも時間操作ができたんだぞ! オレだって時空移動ができた! それが今更…!!」
「その魔石は確かに世界を滅ぼす危険性を秘めた石で、時空も時間も自由自在。だが、その力がまともに使用できるのは悪魔だろうが人間だろうが1度きり。これは城の者しか知らされていない事実だ」
「1度…きり…?」
アヴァンは耳を疑った。
それが本当なら、こちらへ時空移動したことでアヴァンの「1回」は使って切ってしまったことになる。
空気が抜けたかのように、アヴァンはその場にへたりこむ。
構わずヒルダは続ける。
「一度使用されたあとのクロノスの魔石は気紛れだ。相手に絶望しかもたらさない、呪われた石でもある。しかし、よかったではないか…。老人にされたわけではない。文字通り、生まれ変わって一から出直せ」
「マ・ジ・か・よ…」
アヴァンの引きつった口からはその言葉しか出てこなかった。
がっくりと肩を落とし、うつむいた。
その手の中から、魔石がこぼれ落ちる。
それを拾い上げたのが男鹿だ。
「こんなキレイな石ころに踊らされてたってことか…。こいつが自滅するなら、オレらが出る幕は…」
「使用が1度きりとはいえ、売りさばかれれば同じことだ。1度きりでも、使い方次第で世界は破滅する…」
ゾッとしない話だ。
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