12年前、とある大激闘がありました。
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一方、誘拐屋の連中を撒いて指定場所に向かっていた姫川も、今度は警察に追われていた。
特徴的なリーゼントを一目見て通報されたらしい。
警察は血眼になって姫川が逃げ込んだ公園内を捜しまわる。
中にいた母親と子どもに居場所を聞き出そうとするが、あちこちに逃げ回っているのかバラバラに答えられた。
警官のひとりが3段に積まれた土管を見つけた。
隠れるにはうってつけだ。
近づき、おそるおそる中を覗いてみる。
「ばぁ」
「!」
1番上の土管から顔を出したのは、生意気な顔をした子どもだった。
左頬に絆創膏を貼り、クラスでガキ大将の立場にいそうな、わんぱくな格好をしている。
驚いて一歩あとずさる警官の反応に満足し、指さして笑った。
「ぼ、ボク。ここに、リーゼントの男が来なかった? こんな髪した」
気を取り直し、手を使ってリーゼントを表現して尋ねる警官に、
「あっち行ったのみた」
「! ありがとう!」
公園の出入口を指さした子どもに礼を言い、警官は無線機で他の警官と連絡をとってそこから去っていった。
それを見届けた子どもの口元がニヤリと笑う。
「行ったぞ」
「よくやった、少年」
子どもが土管から出ると、あとに続くように先にリーゼントが出てきた。
「けど、本当は警察にウソついちゃダメなんだぜ? 助けてくれたことには礼を言うがな。コレ、とっときな」
注意をしつつ、姫川は1万円札を取り出した。
受け取った子どもは上にかざし、目を輝かせる。
「これが大人のお小遣いか…!!」
「大人のお小遣い…」
実は幼少の頃からもらっている姫川。初めて見た金も大人のお小遣いだ。
それは思っても子ども相手に口にしない。
「しかしなんでオレの味方してくれたんだ?」
警察に見つかりそうになって隠れた土管には、先客がいた。
今更バックして出ることもできず、「しー」と口元に人差し指を当てると、なぜか子どもに輝いた目で「追われてるのか?」と尋ねられ、正直に頷くと、お礼を出すとも言ってないのに助けてくれた。
子どもは土管から飛び下り、親指を立てる。
「警察は嫌いだ。オレは悪党の味方。“ごはんくん”なら、うんこ男爵の味方だっ」
(つまりは悪役好きってことか…)
呆れながらも姫川も土管から下りる。
「それがリーゼントか…。フランスパンみたいだなっ」
「褒めてんのか? バカにしてんのか?」
そこで姫川ははっとし、しゃがんでその子どもの顔をじっと見つめた。
「ち、近い…」
子どももドン引きするほどの顔面の近さだ。
(どっかで見たことあるような…)
「おまえ…、名前は?」
「え…。か……」
子どもが名前を明かそうとした時だ。
「いたぞっ!!」
まだ公園内にいた警官に見つかってしまった。
姫川は「ヤベッ」と呟き、立ち上がる。
「じゃあまたな。はじめちゃん」
姫川は子どもの頭を撫で、逃げ出す。
残された子どもは呆けた顔でその背中を見送った。
「あいつ…、なんでオレの名前…。つか、はじめちゃん言うなァっ!!」
いずれ再び出会う背中に向かって怒鳴る。
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