12年前、とある大激闘がありました。
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「大魔王様から、緊急の手紙だ」
男鹿の家に、魔界速達便から一通の手紙が届いた。
魔王からなにか届いた日はロクなことがない。
幾度の経験から察した古市は、「お邪魔しまーす」と玄関を出ようとしたところで、男鹿に「ゆっくりしていけよ。面白いから」と足を引っ張られて部屋へと引きずり戻された。
「面白いってなに―――!?」と泣き叫びながら廊下に爪痕を残す古市。
封を開けて内容を読むのはヒルダだ。
“お久しぶりっ子ー! 元気~? ワシ超元気~♪ 今この間魔界で発売された最新ゲーム、PN2プレイ中 もうガンガンいくぜってやったらいきなり全滅って…ウーケーr”
「すまん、すっ飛ばして肝心の内容のほうを」
「PN2って…。今は3だろ…」
大魔王の手紙を飛ばし読みのはヒルダの望むところではないが、視線がだいぶ後の方に移る。
“そーそー、話変わるけどー、ワシの不注意で魔界の秘宝が盗まれちったー(テヘペロ) それ、盗んだボケから取り返してくれるー? ついでに魔王にかわってお仕置きしちゃって☆”
「魔界の秘宝?」
「コレのことだろう」
同封されていたのは、2枚の写真だ。
1枚は犯人であるアヴァン・ヘイズの写真。
もう1枚は盗まれた“クロノスの魔石”だ。
「この人が盗人ってことですか?」
古市がアヴァンの写真を見せると、ヒルダは頷く。
「そうだ。一時期、魔界を騒がせていたコソ泥だ。盗むためなら、平気で仲間を裏切り、関係のない一般人まで傷つけるクズ悪魔。収監されていたはずだが、脱獄したようだな…」
「―――で、盗まれたのがコレか。アホだな大魔王」
男鹿は“クロノスの魔石”の写真を見せ、「ただの宝石に見えるけど?」と問いかける。
「時空を操る魔石。大昔はコレをめぐって戦争が勃発したこともある。そこで前大魔王様が2度と戦争が起きないようにと城の奥に封印なさった」
「封印…。壊して処分することはできなかったんですか? そんな危険なものなら…」
「たわけ。壊したら危険が増えてしまうであろう。壊しても魔力が消えることはない。そのために、どこで聞いたのかあの盗人は魔石をバラバラに破壊し、売りさばこうなどと考えているらしい」
「そんなことになったら…!」
「!」
魔石の写真を見ていた男鹿は、写真の裏側に文字が書かれてあることに気付く。
ヒルダに読ませてみると、とんでもないことが書かれてあった。
“P.S.魔石ってヘタすると魔界どころか人間界滅ぼすんで(笑)”
「「大魔王おおおおおおおおっ!!!」」
どうしてそれを最初の文章に書かないのか、どうしてそんな状況でPN2が出来るのか、どうしてそれを人間の自分達に押し付けるのか。
ぶつけたい怒りは多々あった。
「タチ悪っ!! 大魔王タチ悪っっ!!」
「てめーがガンガン行けやっ!! そんで死ねぃっ!!!」
古市と男鹿は怒りのままに手紙を何度も踏みつける。
そしたらヒルダに殴られた。
「大魔王様の手紙だぞ。丁重に扱えドブ男共」
「それで、依頼はされたが、このコソ泥はどこだよ。居場所がわからねーとブッ飛ばしようもねーぞ」
「おい、その写真の裏にもなにか書いてある…」
気付いた古市は、男鹿が指につまんでひらひらとさせる写真を指す。
「んあ?」
“逃亡口に使われたと思われる、魔界と人間界を繋ぐ空間がその辺りに出現するはずだから”
「「その辺り???」」
男鹿と古市は窓に近づいてそれらしいものを捜す。
ドガァッ!!
「「!!?」」
すると、天井を突き破って人が2人の背後に落ちてきた。
見事に天井に穴が空いている。
「いってぇーっ! マ・ジ痛てぇっ!! なんだこのボロい家! こんなとこに出るなん……て…」
見比べてみると、写真と目の前の顔が一致する。
男鹿達を視界に入れたアヴァンも一瞬呆けた顔をした。
「部屋の屋根…っ!!」
男鹿はバキバキとコブシを鳴らし、尻餅をついたアヴァンを見下ろす。
「弁償しろやコラああああッ!!!」
「うわっ!! なにおまえ!! なんだおまえ―――っ!!」
殴りかかってきた男鹿のコブシをひょいと避け、アヴァンは男鹿の部屋の窓を突き破って屋根に着地し、他の家の屋根へと飛び移る。
「逃がすな愚か者っ!!」
ヒルダはアクババを呼んで飛び移り、飛行しながらアヴァンを追う。
「誰がタダで逃がすかあの器物損害ヤロー!! 行くぞ古市!!」
「オレも行くのっ!!?」
男鹿と古市も、走って追いかける。
逃がせば世界の危機。
押し付けられた責任は重大だ。
男鹿達から逃亡するアヴァンは、過去へ逃げようとその地点を見つけたものの、神崎と姫川を巻き込んで飛んでしまった。
男鹿達は空間が閉じる寸前にそこへ飛びこみ、同じく過去へと飛ばされ、追跡を続行した。
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