小さな話でございます。
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神崎はどうしても、仔犬と戯れるキレイな姫川が信じられず、放課後問い詰めたところ、あっさりと自分そっくりの山崎のことを白状した。
すると、調子に乗って、並んでいるところが見たいと言いだしたので、仕方なく、後日、メールで山崎と連絡をとって会ってもらうことになる。
神崎だけに見せるはずが、神崎が喋ってしまったのだろう、夏目と城山も来ることになった。
石矢魔公園には、リーゼントとサングラスをした姫川と山崎の姿があった。
最初に公園にやってきた夏目も驚いて目を見開く。
「ホント…、気持ち悪いくらいそっくりだね」
「一言余計なんだよ」
「どうも、山崎です」
姫川の左隣に立つ山崎は礼儀正しく夏目に挨拶する。
「おいコラ、これから神崎をからかってやるんだから、オレらしく振るまってろよ」
「からかうって…、神崎君に悪いと思わないのかい? カッコ悪いよ」
「うっせーよ! 神崎のことなにも知らねえくせに知ったふうな口利くなっ」
外見はそっくりでも、中身が正反対の2人の会話を聞いて夏目は思わず噴き出してしまう。
「中身全然違う。なにこれ面白い(笑)」
「こっちにこい、夏目。今すぐそこの噴水にぶちこんで犬神家にしてやる」
「まあまあ、姫川君」
そこへ城山もやってきた。
「待たせたな、姫か…わ―――!!? 姫川が2人!!? ドッペルゲンガーだ! 離れろ! 死んでしまうぞっ!!」
姫川と山崎を見るなり、城山は顔を真っ青にして声を上げた。
「…山崎、どっちが失礼か言ってみな」
「……………」
面白がる夏目と大袈裟に騒ぐ城山を呆れた目で見つめて尋ねる姫川に、山崎はフォローの言葉もない。
そこへ、ようやく神崎がやってきた。
「おおっ。マジで似てるな」
肩を並べる2人を目撃し、こちらも驚いて目を見開き、そう言いながら近づいてくる。
「おまえが山崎か? 仔犬と戯れてたのはおまえの方だよな?」
山崎はただ突っ立っているだけなのに、真っ直ぐに山崎のもとに歩み寄り、まじまじとその顔を見つめた。
「…どうも。初めまして…っていうのはおかしいかな」
「うわ。やっぱ声も似てるな」
「………おい」
姫川は突然山崎の肩をつかんで引っ張り、神崎からは見えない近くの木の裏につれていく。
「神崎、どっちがオレだ?」
数秒後、木を間にひょっこりと現れる2人。
「右」
神崎は即答する。
正解だ。
姫川はもう一度山崎を木の裏に引きよせ、数回まわってもう一度木の裏から現れる。
「今度は左が姫川だ」
またもや即答する神崎。
ここへやってきたと同時に山崎を言い当てたのはまぐれではなさそうだ。
それからも妙な対抗心が湧いてしまい、山崎と自分を言い当てようとさせ、全部正解されてしまう。
心の中でどっちがどっちと何度か間違えた夏目と城山も唖然としていた。
「すごいね。よくボクと姫川君の見分けが…」
「いい加減にしろ。喋り方まで変えんな、姫川」
「!」
山崎のキャラを装って神崎の前に出て来たがまたもや見破られてしまう。
「あー…よくわかったな。最初は間違えたんだろ?」
「最初はな。けど、並んでみればわかるもんだ」
「ボク達こんなに瓜二つなのに…」
同じく驚いている山崎に、神崎はニッと笑って山崎に指さす。
「全然違うっての。おまえはおまえ。姫川は姫川だ」
「…!」
トクン…
「惚れるなよ!!?」
察知した姫川はすぐさま山崎に怒鳴りつける。
「さすが神崎さん、オレ全然わかりませんでしたっ」
「なにが違うのかもね」
「ああ? 全然違うだろーが。まずはリーゼントの長さ! 休日にオレと会う日は大体47.9cm! だが今日は城山と夏目も来たから、マイナス2cmだな。 次に声色! オレに対してはどこかエロい! そんでオーラ! ゲスのオーラに気付かねえとはてめぇらもまだまだだな! そしてアロハシャツ…」
「うん。うん。とにかく、姫ちゃんと山崎君の見分け方は、絶対神崎君しかわからないことがわかった」
「確かに…、ボクが知ったふうにきいていいことじゃなかったね。…姫川君? 複雑そうな顔してるけど…」
(まとめて、「愛」だと思うけど…、言ってほしかったけど…、ゲスのオーラって…)
ピュアな自身を見ても動じなかったが、普段まったく気にしないことを気にさせるのも、また、神崎だけだった。
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