12年前、とある大激闘がありました。
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魔界の城下町の外れにある監獄にて、耳をつんざく警報が鳴り響く。
「5031番が逃げ出した!!」
「バカな!!」
「S級犯罪悪魔だぞ!! こんなことが大魔王様に知れたら…!」
「心配するくらいなら血眼で捜せ!! まだそう遠くないはずだ!!」
看守や城の兵士達はざわめき、脱獄した囚人を追うが、収監されている間も監獄のことを調べ上げていた囚人は気配を押し殺し、複雑な脱走経路を駆け抜ける。
外へ出ても、行く先は町の外ではなく城内だ。
魔王の銅像の陰から、集合に遅れた兵士を見つけ、音もたてず素早くその背後に近づいた。
はっと気配に気付いた兵士が振り返ると同時に、囚人は右手を兵士の顔面に近づける。
「あれはどこだ?“クロノスの魔石”は…、どこだ!?」
囚人の右手のてのひらには、ひし形の目の刺青が彫られていた。
その目を合わせた兵士の目は途端に虚ろになり、しかし口調ははっきりと「こちらです」と答え、囚人に背を向け案内する。
囚人の口元はほくそ笑んだ。
「ああ…、そ・の・ま・え・に…」
囚人が立ち止まると、兵士も立ち止まり振り返る。
「コレ、切ってくんね?」
兵士に見せつけたのは、両手首を50センチほど繋いだ鎖だった。
手枷は鍵がないと開けられそうにないので諦めるが、せめて右手の自由が利きたい。
兵士は「承知しました」と剣を抜き、囚人の手首の間に勢いよく振り下ろした。
大きな金属音とともに鎖は砕かれるように断ち切られ、囚人は腕の自由を取り戻す。
「あ―――、腕が回せるっていいよなぁ…」
久々に両腕を左右に広げて回すと、骨がバキバキと鳴った。
「じゃあ、案内ヨロシク」
「承知しました」
ここまでは順調だ。
一方城では、頂上まで騒ぎが広がっていた。
「大魔王様ぁ―――!!!」
「なになに~!? わし今チョー忙しいんですけど―――!」
「大魔王様っ、右手、赤です!」
大魔王は今、ツイスターゲームに夢中だった。
他の女兵士達4人と一緒にプレイ中だ。
「ツイスターゲームをしている場合ではありません!! S級犯罪悪魔アヴァン・ヘイズが脱獄しました!! しかも兵士を操り、城の秘宝・“クロノスの魔石”を盗みだしました!!!」
能天気な大魔王に対し、焦燥感を丸出しに早口で喋る兵士に、大魔王は四つん這いの格好のまま一度首を傾げる。
「クロノスの魔石…? そんなのうちに…。あ―――、そういえばあったあった。…え、じゃ、マジヤバくね? はうっ!! 腰が!!!」
「大魔王様ぁぁぁあぁああ!!!」
兵士に振り返ると同時に、腰がイッた。
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