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家に帰っても、神崎はしっかりと付き纏ってきた。
扉を閉めても、すり抜けて通ってくるのだからタチが悪い。
「いい加減にしろよ、ストーカー」
「あ゛ぁ? てめーがさっさと願い事言わねえからだろうが」
キッと睨みつければ、ギロリと睨み返される。
「早く願い事言えよ―――」
「じゃあ、今すぐそこから下りろ」
図々しくもベッドの上でゴロゴロとする神崎に姫川は厳しい口調で言う。
「だからそんな願いじゃダメだって言ってんだろ―――」
神崎は「うーん」と仰向けになって伸びをし、脚を組んで右足をぷらぷらと揺らした。
「オレの方がてめーより、倍疲れてんだよ。めんどくせぇ、会社の奴らを相手にしなきゃなんねーし…」
「だったら、そいつら消しちまうか?」
「物騒な願いも却下だ。それに、消しても次の面倒な奴らが来る。キリがねーよ」
そう言って姫川はベッドの端に腰を下ろし、窮屈なネクタイを外した。
「ふーん?」
「てめーを誰かに譲渡するって願いは?」
「それもダメだ。ヨーグルッチをてめーが飲んだ時点で、てめー自身の願いを叶えなきゃなんねえ。…にしても、オレも面倒な主人に当たっちまったもんだな。金もある、モテる、仕事に恵まれてる、普通の人間でいたい…」
「オレ自身…」
姫川は天井を見上げながらリーゼントを崩した。
その横顔を横目で見た神崎は驚いた顔をし、苦笑する。
「…! 確かに、そのツラなら女に困んねーだろうな」
「あ?」
小さな呟きに、姫川は肩越しに振り返るが、神崎は「なんでもねえよ」と返した。
「―――ったく…、会社の奴ら相手とてめーの相手してたら身がもたな…い…」
急激に襲ってきた眠気に耐えきれず、姫川は仰向けにベッドに倒れた。
「おい…」
驚いた神崎は思わず身を起こす。
「眠ぃ…」
「風呂は?」
「朝に入る…」
数秒後、姫川は流されるように眠りについた。
その寝顔を見下ろした神崎は呆れた顔をし、後頭部を掻く。
(頭が悪いわけでもねぇ。疲れずラクに仕事したい、って願えばいいのに…。…あ、普通の人間らしくねえからか? ホント、面倒な奴だな…)
そう思ったあと、パチンッ、と指を鳴らせば毛布はふわりと浮かび、神崎は姫川の腕を引っ張ってベッドの真ん中まで運んだ。
もう1度、パチンッ、と指を鳴らせば浮いていた毛布は姫川にかけられる。
「…本当に、なにも欲しくねえのか?」
神崎は人形のように整った寝顔に尋ねるが、寝息しか返ってこなかった。
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