我ら石矢魔生徒会。
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どの学校にも、生徒会という団体は存在する。
ここ、聖石矢魔学園にも聖石矢魔学園生徒会がある。
だが、もうひとつの生徒委員会が存在していた。
それが、石矢魔生徒会執行部。
今年から出来た生徒委員会だ。
聖石矢魔が表なら、さしずめ裏の生徒会だ。
放課後、その石矢魔生徒会執行部のメンバーがそろっていた。
石矢魔特設教室の1階下の空き教室で、会議らしく机を並べ、それぞれ自分の席に座っている。
教卓には、姫川が立っていた。
生徒会長・姫川竜也
生徒副会長・東条英虎
会計・古市貴之 男鹿辰巳
書記・邦枝葵
庶務・神崎一
ベル坊の保護者・ヒルデガルダ
「それじゃあこれより石矢魔生徒会執行部の会議を始めまーす」
やや棒読みに言って、姫川は会議を始める。
「会長」
邦枝が手をあげ、姫川は「なんだ?」と尋ねる。
「今更だけど、これ、全員眼鏡かける必要あるの? アンタだけグラサンだし…;」
「文句があるなら顧問に言えよ」
顧問・早乙女禅十郎。
今日はやる気がないのでさっさと帰ってしまったダメ顧問だ。
全員眼鏡着用と言いだしたのも早乙女だ。
「…けど、オレは悪くねえと思うけど?」
意味ありげに神崎を見る。
伊達眼鏡の神崎。
悪くない組み合わせだ。
「オレも文句はこれ一切ありません」
古市も手をあげて答える。
伊達眼鏡の邦枝に満足しているようだ。
「ダッ」
「坊っちゃま、伊達眼鏡も愛くるしい…!」
「会長、てめえが生徒会長ってのも納得できませーん」
机に足をのせて組んでいる神崎は手を挙げ、棒読みで言う。
「オレが一番頭いいからだ」
「うわっ。フツー自分で言うかっ。だったら古市と替われよ。常識はてめーよりあるぞ」
「普通すぎてつまんねえだろ。大体、おまえだって人のこと言える立場じゃねえだろが。…オレはいいけどな」
「よくねーよ。それと、会計に2人はいらねえだろっ」
「男鹿に会計ができるわけねーだろ」
計算する仕事だ。
なので、古市をつけることにした。
「書記やらせりゃいいだろが!」
「邦枝の方が字がうまい」
ざっくりとした理由だった。
ちなみに、庶務である神崎の仕事だが、実はもうひとつ重要な仕事がある。
「おまえら!!」
突然、東条が立ち上がり、全員を見渡して伊達眼鏡を指先であげて言い放つ。
「バイトの時間だ!! 神崎、あとは任せた」
「ゆけっ!! そして2度と帰ってくんなっ!!」
「あの人ちゃんと出席したことありましたっけ?」と古市が今更な疑問を口にする。
東条が教室を飛び出したあと、神崎はため息をつきながら副会長の席に座った。
神崎のもうひとつの役割は生徒副会長代理だ。
「もういっそのことあいつが庶務で、オレが副会長でよくね?」
「変わらねえよ。あいつが庶務抜けたら神崎がやるしかねえんだ」
「クビにして誰か別の奴入れろよっ!!!」
「オレばっかりやらせるな」と神崎は思わず勢いよく席を立ってがなった。
こんなカンジで、今日も生徒会の会議が始まる。
姫川が教卓の下から取り出したのはご意見箱だ。
職員室の近くに設置された聖石矢魔生徒と石矢魔生徒の希望や悩みなどを紙に書いて投入する。
ちなみに、聖石矢魔生徒会が設置したご意見箱には、“野球部の部活用具を増やしてほしい”、“自動販売機が故障した”、“2階の階段の踊り場でよく男子がたまってます、注意してください”などの意見がある。
石矢魔生徒会に来るのは、石矢魔の生徒に関することがほとんどだ。
身内のことは身内で片付けてほしいとのことなのだろう。
姫川はご意見箱の底の蓋を開け、中身を教卓の上に出した。
それを全員にまわす。
「今回もうちの問題児共がいろいろやらかしてるぞ」
“この間、階段の下からスカートの中のぞかれました”
「クズですねっ!」
古市は目付きを鋭くさせて、“粛清”のハンコを押した。
このハンコを押されれば粛清を執行する、石矢魔生徒会にだけ許される特権である。
「こらこら、てめーが執行するわけでもねえのに簡単にハンコ押してんじゃねえよ」
そう注意するのは男鹿だ。
「たまたま見ちまったってだけかもしれねえだろ。ラブコメでよくある展開だ。そこから発展する恋もある。私情を挟むな。本当に相手に故意があったのか考えるのもオレ達の仕事だ」
そう諭すのは姫川だ。
そんな展開はかなりの確率でないだろうと思いつつ、クラスメイトをそう簡単に疑っちゃいかん、と悟った古市は「す、すみません…」と目を伏せて謝る。
「これはどうだ?」
神崎は1枚の紙を姫川に渡した。
“石矢魔の不良の中でリーゼントしてる人いるじゃないですかぁ。長すぎて腹の皮がよじれるんで切っちゃってくださいw”
「蓮井ぃ!!!」
「はい」
大声で叫ぶと同時に蓮井が教室のドアを開けて入って来た。
姫川は顔にいくつもの青筋を立てたまま蓮井にその紙を手渡す。
すでに“粛清”のハンコは押されていた。
「至急、この紙に付着した指紋から投入したヤロウを割り出して連れて来いっ!! このオレ様が直接腹の皮よじってやる!!」
「承知しました」
「アンタこそめっちゃ私情挟んでるじゃないですかっ!!!」
確かに悪意に満ち満ちた意見ですが。
神崎も、とある紙を見つける。
“ヨーグルッチ、正直好きじゃないので、そろそろ別の飲料と替えてください”
「城山ぁ!!!」
「はい!」
こちらもすぐに来た。
神崎はいくつもの青筋を立てたまま城山にその紙を手渡す。
これもすでに“粛清”のハンコが押されてある。
「至急、この紙入れた奴捜し出してオレの前に連れて来い!!「ヨーグルッチラブすぎて死にそう」って言わせるまで踊り飲ませる!!」
「わかりましたっ!」
本来なら聖石矢魔のご意見箱に入れるはずのものが間違えて入れられたのだろう。
「あ、こんなのも…」
今度は邦枝が見つけた。
“体育館倉庫がたまにホテルに使用されています。その証拠に、使用済みのコンドームやティッシュが放置されていました”
「これは酷いわ…」
邦枝は呆れてそれを見通し、ハンコを押そうとした。
その手を、男鹿と姫川が同時に止める。
「……なに?」
「コレはほっといていいと思う」と姫川。
「そうだ。ホテルに行く金なんて、高校生が毎日持ち合わせているわけじゃねえだろ」と男鹿。
「「……………」」
神崎と古市は明後日の方向を向いたまま無言を通す。
「あんた達…、まさか…」
そんな生徒会。
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