とある子猫達。
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
飼い主から、謹慎を言い渡されました。
そりゃあ、朝から行方をくらませた挙句、傷だらけで帰ってきたら仰天ですよ。
腰も抜かしますよ。
謹慎期間は1週間。
ずっと物置に使用されているちっちゃい部屋に放りこまれていた。
それでもオレは反省せず、自分の部屋に戻されると同時に窓から飛び出して神崎に会いに廃車置き場に行った。
「ぎゃははははっ!!(笑)」
1週間ぶりだってのに、爆笑されてしまった。
他の野良猫共も遠慮なく笑っている。
「笑うな…っ」
怒りを抑えつつオレは注意する。
「だっておまえそれ…っ、それがアレか? エリザベスカラーってやつか?」
オレの首には傷を舐めないようにとピンクのエリザベスカラーがつけられていた。
野良猫共には縁遠いものだろう。
ポジティブに、西洋の貴族のようだと思いこむようにしていたのに、デリカシーの欠片もねえやつらはそんなこと微塵も思わねえだろう。
道化師のような格好だと言わんばかりの笑いっぷりだ。
別に狙ってねえよ。
自分じゃ取れねえんだよ。
神崎会いたさに飛びだしたのが間違いだった。
「笑うんじゃねえええ!!!」
スピーカーのようにオレの怒鳴り声が辺りに響いた。
神崎を含め、ほとんどの野良猫共が耳鳴りに苦しんでいる。
ざまあねえと笑ってやった。
「みーっ」
「みゃっ」
しばらくして、チビ達がこちらに駆けつけてきた。
「……隣町にも聞きまわったが、こいつらの飼い主や親は見つからなかった。だから、自分でエサとれるようになるまで、オレが面倒みることにした」
神崎は甘えてくるそいつらを優しい目で見下ろしながら言った。
「ひとりでか?」
「ああ。この間は任せちまったばかりに、ケガさせたからな…」
さっきは爆笑されたが、オレが1週間の謹慎を食らっている間、神崎なりに気にしていた様子だ。
「けど、そいつらオレとおまえしか懐かねえじゃん?」
「そうだけどよ…」
「オレにも子育て、手伝わせてくれねーか?」
「……………」
「神崎…」
オレは神崎に近づき、自然と微笑んだ。
「父親は、必要だろ?」
「あ」
エリザベスカラーで隠れて周りに見えなかったものの、間違いなくオレ達がキスしたのがわかったはずだ。
「「「「おお―――っ!!」」」」
オレ達の関係は前から知られていたのか、夏目は驚かずに面白げに笑っていた。
反対に城山は「神崎さんっ!!」とショックを受けている。
「いきなりなにすんだこのヤロォッ!!!」
すかさず爪で顔面を引っ掻かれそうになったが、オレはエリザベスカラーで防ぐ。
かなり丈夫だぜ、エリザベスカラー。
「それになにが父親だ!! オレが母親とでもいいたいのかっ!!?」
「最初に乳を吸わせた奴が母親だよ」
「な…、なんでそれを…っ!!?」
おまえの次にオレも吸われたからだよ。
「―――というわけで、オレが父ちゃんだからな」
オレはチビ達に振り返り、言い放った。
これから先、オレがここに通うことになる。
オレと神崎の子供。
そう思っていいのなら、苦には感じない。
神崎はもうなにも言うまいとオレの背後で苦笑混じりにため息をつく。
清々しく言ったのがよかったのか、他の野良猫達も拍手を送ろうとしてくれたみたいだが、肉球がぷにぷにと音を立てるだけだった。
「みゅーん」
「みゃっ」
チビ達は目を輝かせていた。
おまえらもそれでいいんだな。
「よし。まずはオレを父親と呼ばせる練習だな」
「みゅーん」
「みゃっ」
「いきなり方向間違ってねえか?」
「みゅーん」
「みゃっ」
「オレは「パパ」とかがいいな。ん?「父上」?「父ちゃん」? …はじめはどれがいい?」
「みゅーん」
「みゃっ」
「待て待て。ボスネコが「母ちゃん」って呼ばれるのは違和感パネェだろ」
「みゅーん」
「みゃっ」
「いちいち気にするなよ。なぁ、たつ…」
「みゅ…おやじっ!!」
「み…おふくろっ!!」
「「「「喋ったっっっ!!!??」」」」
しかも反抗期に突入する前の呼び方だ。
オレと神崎にちゃんと育てられるのか、早くも一抹の不安を覚えてしまう。
.END