とある子猫達。
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廃車置き場をあとにしたオレ達は、近くの公園へやってきた。
そこならこいつらを遊ばせてやれると思ったからだ。
だが、早くも断念しなければならない事態に陥った。
どこぞの幼稚園の団体が先に遊びに来ていたからだ。
オレ達を一目見つけるなり、「わーっ、ニャンコだーっ」、「カワイイーッ」、「触りたーいっ」とサバンナのムーの群れの如く、砂煙をあげながらこちらに突進してきた。
「ぎにゃああああっ!!!」
オレははじめを背中に載せ、たつやを口に咥えてそこから決死の逃亡。
つかまってたらどんな目に遭わされたかと考えるだけでゾッとする。
間違いなくチビ2匹はもみくちゃにされて衰弱死だ。
笑えない。
公園がダメとなると、空き地だ。
はじめとたつやを連れ、やってきた空き地は手入れされた形跡もない錆びれた空き地。
そこに入る前に有刺鉄線を潜らなければならないので、人間も滅多に入ってこない。
視界は悪いが、文句は言わない。
チビ達はオレから離れ、蝶を追いかけている。
オレは空き地を見渡すためにそこにあったピラミッドのように積まれた土管の上にのぼり、チビ達を見下ろした。
ここに来るのは2度目だ。
神崎が「スズメの取り方教えてやるからついてこいっ! 早くっっ」と強引に引っ張りこまれた場所だ。
必死にスズメを追いかけるあいつの姿を思い出す。
「フ―――ッ!」
「!」
威嚇するたつやの声が聞こえた。
はっとして見ると、チビ達の前に大きな黒い野良犬がチビ達を見下ろしている。
たつやははじめを守るようにその前に立ち、大した攻撃力もない爪を出し、ちびっこい体の毛を逆立たせて威嚇している。
はじめは心配そうに目の前のたつやの背を見つめていた。
「なんだおまえら…、ここ、オレの場所なんだけど?」
大きな黒い野良犬はチビ達を見下ろし、困ったように言った。
「おい!」
オレが声をかけると、黒い野良犬はこちらを見上げた。
「あー…、誰だっけ?」
「姫川だボケ!! この間会っただろ!!」
そう、オレとその黒い野良犬は知り合いだった。
オレもうっかり忘れてたな。
ここ、あいつの昼寝専用地だった。
オレは土管を下りてそいつに近づく。
すると、チビ達は急いでオレの後ろに隠れた。
オレの知り合いだからといって、誰にも懐くわけじゃないようだ。
「ああそうだった、ひめかわだ、ひめかわ。確か、神崎が連れてた…」
黒い野良犬・男鹿は思い出したように言った。
「男鹿、珍しいな。古市はどうした?」
古市というのは、男鹿とよく一緒にいる、少し臆病な白い飼い犬のことだ。
オレと神崎と似たような関係だな。どこまでの仲かはわからないけど。
「動物病院だ。昨日、カラスの奴らに外でメシ食ってるとこ襲われちまってな。ちょっとケガしたらしい」
「カラスに?」
オレは数回瞬きする。
「ここんとこ、凶暴なのが多いんだよ。巣作りの時期なんだか知らねえけど。チビ達も気をつけな」
男鹿はチビ達に穏やかな口調で忠告するが、チビ達はまだ警戒してるのかオレの背中にしがみついて必死に爪を立てていた。
「ところで…、そいつら、神崎とおまえのガキか?」
「……………;」
もうつっこむのはやめよう。
正直、そう言われて悪い気はしないし。
適当に「そうだ」と頷き、オレ達は空き地を男鹿に譲ってあとにした。
帰ってきた頃にはオレの肉体と精神は疲れ切っていた。
神崎と行動して体力ついてきたかと思ったが、ガキの体力は無限大で最後までついていけない。
家に帰る最中でも、こいつらはオレの周りでぴょんぴょん飛びまわるし、オレのシッポをつかもうとするし、オモチャもないのに遊びを見つけるのが得意のようだ。
ただ、はしゃいで周りが見えなくなるふしがあるから、車が走ってきた時は酷く焦った。
心臓に悪い。
裏庭に戻ってくると、そいつらは抱き合うようにくっつきあったまま眠り始めた。
オレも自分の部屋に戻って爆睡。
それから仕事から帰って来た飼い主に起こされて寝惚けた頭で夕飯を食べ、途中でチビ達のことを思い出し、残しておく。
そして、飼い主が就寝したのを見計らい、ハンカチに包んだ夕飯を持ってチビ達のところへ持って行った。
学習しないのか、また真っ先にオレの乳に吸いついてきた。
「だからぁっ! メシはこっちだっつってんだろっ!」
遊んだぶん空腹が最高潮だったのか、オレは危うく乳首を失うところだった。
ヒリヒリする。
メシを与えたあとは、寝かせるだけ。
男鹿の言ってたカラスのことも気になるし、今夜はこいつらの傍にいてやろう。
オレが寝転ぶと、最初にはじめがオレの背中にひっついてきた。
おまえホントオレの背中好きだな。
ゴロゴロと喉を鳴らすので癒されずにはいられない。
顔を舐めてやると、くすぐったそうに「みー」と鳴いた。
神崎に似てるだけあってカワイイあまりに卒倒しそうだ。
あいつもこれくらい甘えてくれたらいいのに。
そしたらめちゃくちゃ愛で返してやるのに。あいつも昔はこんなだったのだろうか。
「みゃっ」
たつやはオレではなく、はじめの背中にくっついた。
なにこのサンドイッチ。
人間なら思わず撮影せずにはいられない光景だ。
ここに神崎がいたら完璧なのに。
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