小さな話でございます。
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オレと神崎は、することもなくソファーに並んでだらしなく座りながら目の前のテレビを見ていた。
神崎が適当に選んだ番組だ。
内容は薄っぺらくて見ているだけで欠伸が出てくる。
隣の神崎もつまらなそうな顔をしていた。
“あんたになにがわかるってのよ! あたしの気持ちなんて!”
主人公に片思い中の女がキレた。
オレは思わず鼻で笑ってしまう。
「バカだなー。他人の気持ちがわからねーのは当たり前だろが。そういや、昔いたな、そんな女。「あんたに人の気持ちなんてわかるわけないでしょ」って言われたっけ…」
こんな安っぽい番組なら、ニュースの方がまだマシだ。
オレは神崎と自分の真ん中にあるリモコンを手に取ろうとした。
「オレはおまえの気持ち、わかるぜ?」
「あ?」
神崎がこっちを見てそんなことを言い出すから片眉を吊り上げた。
随分と自信たっぷりな顔じゃねえか。
てっきり、オレと同じく番組のこと嘲笑してるもんだと思ってた。
オレは「ほう…?」と小ばかにするような笑みを浮かべ、「じゃあ今オレがなに考えてるか当ててみろよ」と挑発してみた。
どんなことを言っても、否定してやればオレの勝ちだ。
いくら恋人でもオレの気持ちなんてわかるはずがない。
そう高を括っていた。
神崎がいきなり詰め寄ってきて、オレの両頬をつかんで至近距離に顔を近づけてくるまでは。
「…!?」
「……今、キスされる、って思ったろ?」
神崎が余裕の笑みを浮かべている。
「違うか?」
「……………」
「そうか、違うか。当たってたらオレからしてやったのに…」
滅多にない、神崎からのキス。
素直に「うん」と言えないのはオレのプライドが邪魔をするからだ。
心理戦でオレが負けるわけにはいかない。
神崎の笑みは崩れない。
ゆっくりと右手をオレの頬から離し、「次はオレがなにするか気になってんだろ?」と言った。
さまよう手は、オレの胸に当てられ、じわじわと煽るように下にくだっていく。
普段の神崎ならありえないことだ。
オレはその目を見つめ、気づいた。
口元は笑っているが、目が笑っていない。
「神崎、今、怒ってる?」
すると、「ふはっ」と小さく噴き出した。
「……オレの気持ち、わかってんじゃねーか」
もう一つ当てさせてもらうと、それは嫉妬だ。
オレが昔の女の話したから。
「姫川、今、キスしたいだろ? ん?」
「ああ。させろ」
オレとの付き合いが長いせいか、狡猾さと誘い方に拍車がかかりやがった。
先程のプライドはどこかに投げ捨て白旗をあげたオレは、自分の気持ちに素直になって神埼とキスしたあと、リモコンをとってテレビを消し、続きを楽しんだ。
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