とある子猫達。
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朝、飼い主が出かけたのを見計らったオレは、あらかじめ残しておいた残飯を器用にハンカチに包んで口に咥え、チビ達に持って行ってやった。
面倒だが、オレは一度屋根に出て、庭に生える木に飛び移って下におりなければならない。
裏庭は日陰で、この季節、熱中症にならなくて済むはずだ。
それに、うちの庭は時間によってスプリンクラーが発動するようになっているため、水分不足にも困らないだろう。
家の裏にまわると、そこで大人しくしていたチビ達が、みーみー鳴きながらこちらにやってきた。
「おまえらー、メシだぞー」
「みゅーんっ」
「みゃっ」
ハンカチを広げてメシを見せてやってるのにも構わず、チビ達はいきなりオレの乳に吸いついてきた。
「出ねぇよっ!! メシはこっち!!」
神崎もやられたのだろうか。
想像するとエロいな。
固形の高級フードなので、食べやすいようにスプリンクラーの水でふやかして食べやすくしてやる。
オレってなんて頭の良いネコなの。
さすが子猫というか、よく食べる。
特にはじめ。
見た目やエサのがっつき方とか、神崎そっくりだ。
無理だとは思ってるが、やっぱりあいつ産んだんじゃねえのか。
対して、たつやの方は落ち着いて食べている。
はじめがたつやの分を取ろうとすれば頭を叩いて叱った。
「みゅーんっ」
ちなみに、「みゅーん」や「みー」と伸ばして鳴くのが、はじめ。
「みゃう」、「みゃっ」と短く鳴くのが、たつや。
今更な疑問だが、こいつらって兄弟なのか。
性格や鳴き方も違う。
「みゅーん」
「ん? どうしたはじめー」
食べ終わったあとは、はじめにおんぶを要求され、背中を向けてのせてやる。
毛並が崩れるが、気にしないことにした。
見た目、生まれて数日とみられるそいつらは体重が羽のように軽かった。
落ちないように爪を立てるが、こそばゆい程度だ。
「みゃっ」
「?」
たつやがオレを呼んで、茂みへ顔を向けている。
外に出たいのか。
「……散歩に行くか?」
ずっと裏庭にいさせるのも悪いしな。
「みゃっ!」
「おい、先に行くなっ。外は危ねえんだからなっ!」
たつやが早速茂みの向こうへと駆けだすので、オレははじめを背負ったまま急いでそのあとを追いかけた。
茂みから出るのはあまり好きではない。
せっかく毛づくろいした毛並が乱れるからだ。
体のところどころに葉っぱをつけて道路に出たオレは、右の道にたつやの背中を見つけて早歩きで追いかける。
走らなくてもすぐに追いついた。
「コラッ」
「みゃ?」
「飛びだすんじゃねぇ!」
たつやの背中を咥え、捕まえて叱った。
たつやはまだ両足をバタバタとさせている。
オレにもこんな外の世界に好奇心旺盛な時代があったな、と昔を思い出させる。
ケガでもされたらオレに任せてくれた神崎に顔向けできないから、こいつらからは一瞬でも目を離すことはできなかった。
散歩といっても、1時間くらい街をまわる程度だ。
あまり遠出させるとチビ達が迷子になったとき捜索できないからな。
ある程度の範囲は神崎の道案内のおかげで覚えることができた。
途中で神崎達が根城にしている廃車置き場にやってきたが、わかっていたが、神崎の姿はなかった。
根城を守る取り巻きたちがちらほらいるくらいだ。
チビ達も神崎を捜しているのかキョロキョロと辺りを見回している。
特にたつやなんか、廃車の下に潜ってまで「みゃっ、みゃっ」と鳴きながら捜しているのだから。
オレより神崎に懐いているのは見ててわかった。
一方、はじめの方はオレの背中が居心地いいのか降りようとしない。
「たつや、戻ってこい。ママはお出かけしてんだ」
言ってて自分で恥ずかしくなった。
まさかこんなセリフを言う日がくるとは。
「みゃ…」
たつやは耳を垂れさせ、しょんぼりとうつむいたまま、とぼとぼとこちらに歩み寄ってきた。
「やっぱ…、いないよな…」
たつやの落ち込みが移ってしまい、オレもしょんぼりとしてしまう。
「みー」
背中のはじめは、垂れたオレの耳を舐めて慰めてくれた。
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