とある子猫達。
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この町に引っ越してきて、野良猫の神崎と出会ってからは、飼い猫生活のオレの退屈は風に乗ってどこかへ去ってしまったようだ。
神崎との野良猫飼い猫自慢話対決も退屈しのぎになったのだが、ついこの間、夜の集会に呼ばれたはずなのに、ちょうど神崎が発情期迎えるからそのまま流れでエッチした。
予想もしなかった流れだ。そこで自覚してしまったことだが、どうやらオレは神崎に惚れていたようだ。
優雅な飼い猫生活を送ってたオレが、野蛮な野良猫(オス)と。
神崎も満更でもなかったらしく、神崎とエッチのあと、オレ達は人間でいう、恋人関係になった。
神崎はこの町のボスネコだから、この関係はオレ達だけの秘密だ。
オレは別に暴露してしまってもいいのではないかと言ってみたが、毛を逆立たせて真っ赤な顔で反対された。
とにかく、責任はとらねえとな。
これはその数ヵ月後の話だ。
「姫川ー」
夜中、神崎の声が屋根から聞こえ、オレは開け放たれた窓から出て屋根へとのぼった。
こんな夜更けに神崎が訪れてくるのはもう慣れた。
美味いマタタビを持ってきたか、エッチしにきたか、相談にきたか。
屋根にいた神崎は困惑の表情を浮かべていた。
今回は相談のようだ。
「今日はどうしたんだ? つうか3日ぶりだな」
オレは正面にいる神崎に歩み寄りながら優しく尋ねる。
「実は……」
神崎の背後に小さく動く2つの影があった。
「ん?」
オレが後ろにまわって確認する前に、そいつらは神崎の頭や背中にのったりしている。
「みゅーん」
「みゃう」
頬に傷痕のあるちっちゃいトラネコと、銀色の毛並のちっちゃいネコ(たぶん雑種)がいた。
似てる。
オレ達に。
激似。
一度深呼吸してもう一度そいつらを見る。
神崎にめっさ懐いてる。
オレはもう一度息を大きく吸い込み、言葉を吐き出した。
「産んだのかっっ!!!?」
「産めるかぁっっ!!!」
バリィッ!
鋭い4本の爪で顔を引っ掻かれてしまった。
神崎が言うには、自分の寝床であるバスの中でひとりで昼寝していたところ、耳を引っ張られる感覚に目を覚まし、隣町のネコの奇襲かと思って反撃しようとしたら、このチビ達がすぐ傍らにいたそうな。
「発見した時は…、確かにオレも寝てる間に産んだんじゃねえかと思った」
「だろうな」
生物学上、オスネコは産めねえけどな。
そのあと、親が誰なのか聞きこみまわったらしい。
今こうしてオレのところにきたということは、親は見つからなかったようだ。
それともまさか、オレと別のメスの子か確認しにきたとでもいうのか。
「この3日間、そいつらの世話で忙しかったわけだな」
「そう。悪いな、なにも言わなくて…」
「いいけど…、それで今日はそいつら連れてどうした? 言っとくが、おまえとしかヤッてないからな」
「チビの前でなんてこと言ってんだ! んなことはわかってんだよっ。オレが今日来たのはだな…。3日間、こいつらの面倒見てほしくて…」
「…は!?」
面倒を見てほしいって、オレ飼い猫だぞ。
面倒みられてる側だっての。
「遠征に行かねえといけなくなって…。チビ達連れていくわけにはいかねえし…」
「ちょっと待てよ。急に、そんな…」
「頼むっ。おまえしか頼める奴いねーんだよっ」
頭を下げる神崎に、オレは少し唸り、庭を見渡した。
「……裏庭なら…、大丈夫かも…」
「マジ!?」
けど、そいつらは神崎に懐いているから、いきなり知らない奴のところに住まわせるのは感心しない。
環境の変化ってストレスになるし。
そう思ったところで、チビ2匹がオレに近づいてきて、みゃぁみやぁ鳴きながらオレにくっついてきた。
「懐くの早っ!!」
野良猫としてはダメだろ。
「おー、オレも正直懐くか不安だったが、大丈夫そうだな。他の奴には懐かなかったんだぜ?」
どう見ても、パパママに思われてるんじゃないだろうか。
「神崎、こいつら名前は?」
「…そういや知らねえな」
知らなくて3日間も相手してたのか。
呆れつつ、オレは「決めろよ」とつっこみ、とりあえず2匹に名前をつけることにした。
「はじめと、たつやってのは?」
「なんで?」
「適当」
しかし、その名前が気に入ったのか、はじめとたつやは、みゅーみゅーとはしゃぐように鳴いた。
「それじゃあ、そいつらのこと、頼んだからな」
「神崎」
「!」
去る前に、オレは神崎の額にキスしてやった。
「遠征、気をつけて行ってこいよ」
「あ…っ、当たり前だろ…っ」
真っ赤な顔を隠すように、ぷいっとオレから顔を逸らし、屋根から庭の木に飛び移って行ってしまった。
振り返ると、好奇の目でこちらを見つめるチビ達がいた。
「さて…、とりあえずもう遅いし、寝るか」
「みゅーん♪」
「みゃう」
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