ドントタッチミ-。
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石矢魔特設クラスにて。
神崎一派+姫川は、神崎の机を囲んで大富豪で遊んでいた。
「また神崎君が大貧民♪」
「…っ!!」
「神崎、ホント弱ぇなぁ」
何度目かわからない程負け続けの神崎に、夏目と姫川が笑っている。
手元のカードを睨みつけ徐々に眉間の皺が深くなる神崎に、城山はフォローするように言った。
「神崎さん、気にすることありませんよ。大富豪なんて最初に負けた人が大体負け続ける……」
「次は勝つ!!」
「……………」
何度目かの「次は!」を口にする神崎に、城山はこれ以上のフォローは火に油を注ぐようなものだと諦めた。
「何回やっても変わんねーよ!」
「うるせーよフランスパン!」
舌を出してからかう姫川に、神崎は意地になって言い返す。
「よし、わかった」
すると、その様子を楽しそうに見ていた夏目が口を開いた。
「次、大貧民だった人は罰ゲームってのはどう!」
「「罰ゲーム?」」
夏目の提案に、神崎と姫川は首を傾げる。
「うん。その方が、神崎君も燃えるかなと思って」
夏目はそう言いながら中央のカードを集め、切って配っていく。
「罰ゲームか…」
神崎は腕を組んで考える。
「勝つ自信ねーのか?」
「あるっての!」
「神崎さんっ」
城山が止めるのも聞かずに、姫川の挑発に簡単に乗ってしまう神崎。
「じゃあ大富豪が大貧民の罰ゲームを決める! それでいいでしょ?」
「上等じゃねえか!」
「オレは構わねえよ」
「オレも…」
全員が頷いた。
罰ゲームの条件つきなのか、先程より勝負は白熱していた。
「オレの勝ちだな」
「まだだ!」
「革命!」
「!!」
ニヤリと嫌な笑みを浮かべた姫川が7のカード4枚を机に叩きつける。
「マジか!」
神崎は早くも半泣きだ。
革命を起こされては、数字が少ない方が有利となってしまう。
手持ちに少ないカードがない神崎は大貧民確定だ。
「甘いよ、姫ちゃん」
「?」
姫川が神崎にどんな罰ゲームを強いようか妄想を巡らせたとき、夏目が不敵な笑みを浮かべた。
嫌な予感を覚えた姫川の額から冷や汗が浮かぶ。
「秘技、革命返し!」
「なんだと!?」
「おお!!」
夏目が7のカードの上にKのカード4枚を机に叩きつけた。
「よくやった夏目!!」
今にも夏目に抱擁しようとせんばかりの神崎と、顔をひきつらした姫川。
「ゲームでも大富豪になれるとは限らないよ、姫ちゃん」
「これで勝負はわからなくなったな!」
突然の逆転劇に城山のテンションも上がっている。
結局、大富豪は夏目、富豪は城山、貧民は神崎、そして大貧民は姫川となった。
「一応勝ちは勝ちだな?」
「一応じゃなくて、神崎君はちゃんと姫ちゃんには勝ってるよ?」
そう言われ、神崎は鼻を鳴らして勝ち誇った顔をする。
「クソッ、夏目がいらねーことしなければ…。つうか、神崎、てめーはオレとそんな変わらねえだろうが!」
「変わるだろ、大貧民」
「さっきまで負け続けたクセによく回る口だなぁ!?」
姫川は手を伸ばし、神崎の両頬をつまんだ。
「ひてぇえええっ!」
頬の痛みに神崎が呻いていると、夏目は「決ーめたっ」と歌うように言った。
「「?」」
「姫ちゃんの罰ゲーム、1週間神崎君に触れるの禁止!」
「はあっ!?」
姫川は思わず神崎の頬から手を放した。
解放された神崎は両頬を擦って姫川を睨みつける。
「前々から思ってたんだけど、姫ちゃんは神崎君に触りすぎ、それと苛めすぎ!」
「いじめられてねえよっ」
神崎がムキになって言い返す。
いじめるのも愛情のひとつだと思っている姫川は神崎を引き寄せ、夏目にがなった。
「意味わかんねぇよ!! 別にてめーには関係ねえだろっ!!」
「もう決めたから、なに言っても、ムーダ」
怒りの姫川に動じず、夏目は笑顔を浮かべたまま言い放った。
「せめて1日にしろ。拷問だっ」
「大富豪のオレが決めることだよ。嫌なら、代わりに神崎君が罰を受けることになるよ。一緒にやるわけだし」
「は!? 大貧民だけじゃねーの?」
未だに姫川に抱きしめられている神崎は驚いて尋ねる。
「うん。ちなみにこの1週間少しでも姫ちゃんが神崎君に触れたら、神崎君は…、1週間ヨーグルッチ禁止」
すぐに神崎は姫川を押し退け、「触るな」と両腕で×マークをつくった。
「オレはヨーグルッチ以下かよ!!」
「夏目、べつに1ヶ月でもかまわねーんだぜ?」
「それはちょっと…」
(神崎君が寂しがるじゃん)
それから、最初は余裕に思っていた姫川も、2日経過しただけで苛立ちがピークに達していた。
数日の旅行期間なら平気だったというのに。
理由はすぐにわかった。
神崎が視界に入るからだ。
犬に例えるなら、エサを目の前に「待て」の状態だ。
いるとわかっていれば接触したくなる。
視界に入れまいと視線を逸らすが、耳はちゃっかりと神崎の声を聞きとっている。
いっそのこと学校を休んでしまおうかと思ったが、口にする前に夏目に却下された。
「それじゃあ罰ゲームらしくないし」
「てめぇはオレになんの恨みがあるんだ!!?」
「恨みはないよ。面白いだけ★」
姫川の脳裏に、夏目をどうにかすれば罰ゲームが無効になるのでは、と黒い考えが浮かんだ。
「姫ちゃん、顔が犯罪者っぽいよ」
姫川の心を読みとったのか、夏目は一歩引いた。
*****
罰ゲーム開始から3日目。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」
姫川は息使い荒く、飢えた獣のような目で神崎を見つめながら、その周りを1m保って徘徊している。
うろうろうろうろ。
目の動きも露骨にいやらしい。
「この変質者マジでウゼーんだけど」
神崎も触れないように距離を置こうとする。
今にも飛びかかってきそうなので、いつでも返り討ちにできるよう心構える。
(触りたい。撫でたい。抱きつきたい。いじめたい。泣かせたい。×××したい)
ゾッと悪寒を覚える神崎。
「神崎を…、神崎をくれぇ…」
「中毒患者かてめえはっ!!」
外なら警察に通報されかねない。
4日目。
神崎もいい加減この罰ゲームにうんざりしていた。
学校にいる時でも、家にいる時でも、姫川の着信とメールがいつも以上に殺到しているからだ。
ほとんどの内容が、罰ゲームに負けてくれとのことだ。
許可をとろうとする心は褒められたものだが、神崎は頷かなかった。
1週間ヨーグルッチを取りあげられるのは、突然の禁煙と禁酒のようなものだからだ。
1日抜いただけでも殺気立つほどだ。
姫川はやはり今日も机の周りをうろうろとしている。
(鬱陶しい…)
「かーんーざーきー」
目の前で、神崎の机にアゴをのせてご機嫌をうかがう姫川。
「…リーゼントが触れるだろ」
神崎はヨーグルッチを飲みながらそう言って、リーゼントが当たらないようにとふなを漕いで避ける。
「神崎ちゃーん…。寂しいんだけど…。ねえ…」
目は死んでいるが、なぜか可愛く見えてしまう。
(小首傾げる死んだ目リーゼント…)
「姫ちゃん、コレあげる」
夏目が近づいて姫川に手渡したのは、おもちゃのマジックハンドだ。
先端がCの字になっていて、コタツやベッドから出たくない時に使用する物である。
引き金をひくと、先端が曲がって様々なものをつかめる。
「ほら、10円もつかめるよー。これなら直接触ったことにならないし」
早速夏目が試し、使い方を説明した。
「……………」
姫川は先端を見つめ、かしょん、かしょん、とその動きを確かめる。
「お…、おい…」
いきなり目の前に伸ばされ、左の耳たぶを挟まれる。
「痛てぇっ」
「……………」
一度放した姫川は黙々と先端で神崎のあちこちをつついてみた。
「や、やめろ…、うぁっ!?」
移動したマジックハンドは布越しに右の乳首をつまむ。
「ン…ッ、痛…っ」
「………っ」
姫川が喉を鳴らすと、はっとした神崎はマジックハンドを手の甲で払った。
「やめろって言ってんだろ! 夏目、取り上げ…はがっ」
大口を開けた瞬間、舌先を挟まれ、軽く引っ張られた。
初めてにしては器用に使いこなしている。
「んや…っらぁ…っ」
「……!!」
無意識に浮かんだ熱っぽい表情に思わずマジックハンドを放すと、唾液の糸が伸び、ぷつりと切れた。
それを見た姫川の理性もぷつりと切れた。
「だあああああっ!! むりいいいいいっ!!」
雄たけびを上げた姫川は、自ら首を絞めていたことを自覚し、神崎に手を伸ばし、抵抗される前に肩に担いだ。
「わあああ!?」
「もうムリっ!! ムリだからっ!! こんな拷問にいつまでも耐えられるかっ!!」
ヤケクソ。
「てめえ罰ゲームは!!?」
「リアル大富豪はなんでも許されるんだよ!! そもそもガマンなんてしねえんだよ!! 欲しいモンはなにがあっても手に入れるんだよっ!!」
「屁理屈っつーんだよっっ!!!」
姫川はその後、ぎゃあぎゃあと喚く神崎を連れ、全員が注目する中、教室を飛び出した。
「神崎さーんっ!」
「4日もっただけでもエラいよ、姫ちゃん…」
姫川の腰には、気に入ったのかマジックハンドが挟まれていたそうな。
翌日から、神崎は1週間ヨーグルッチを禁じられた。
3日目になると、その苛立ちは目に見えていた。
席に座りながら誰もが近寄りがたいオーラを放出し、城山達や姫川でさえ遠ざけるほどだ。
近づけないのでは自分の罰ゲームの続きではないか、と姫川は気付く。
「ちなみに、神崎が1週間以内にヨーグルッチを飲んだらどうなるんだ?」
「また、姫ちゃんが神崎君に触れちゃダメって罰を…」
「無限ループじゃねえかっ!!」
神崎がギロリとこちらを睨む。
視線だけで人を射殺せそうだ。
だからてめぇがガマンしてればこんなことには、と言いたげな顔だ。
「今近づくと殺されちゃうよ、姫ちゃん」
「……………」
姫川はマジックハンドを伸ばし、ヨーグルッチの代わりになるような別の乳酸飲料のパックを挟んで渡した。
猛獣に檻越しにエサを与えるような光景だ。
「……………」
神崎はそれを受け取り、やはりヨーグルッチの方がいいのか、渋い顔をしながら喉を鳴らしながら飲み始める。
姫川の言う無限ループとならないためにも、神崎は禁断症状が出ても自分や姫川のために1週間乗りきったそうだ。
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