呪いの解き方、教えて下さい。
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朝食を食べている姫川は至って普通だ。顔色も悪くない。
「…死神?」
神崎は昨夜のことを話すと、姫川は欠伸のあと片眉を吊り上げてそう聞き返した。
信じている様子ではない。
向かい側の席でゆっくりと朝食を食べている神崎は頷く。
「……………」
「おいおい、マジな顔してんじゃねーよ」
あくまで姫川は夢だと思っているようだ。
神崎の視線が、姫川の胸元にぶら下がっているネックレスに移る。
(……チェーンが、短くなってる?)
ドクロの位置が、胸の下から胸の中心に変わっていた。
姫川はそれに気付いてない。
廊下に出て床を見ると、切りつけられたように傷がついていた。
それを見下ろした神崎は喉を鳴らし、顔を青くする。
その日は登校日で、2人は肩を並べて一緒に学校へ行った。
その間も神崎は姫川の様子を窺った。
特に変わった様子はない。
教室に足を踏み入れた時だ。
神崎達より早く来ていたヒルダが突然席を立ち、神崎達に近づき、姫川の胸倉をつかんだ。
「貴様…、コレをどこで手に入れた!?」
いきなりだったので、神崎と姫川は目を見開いた。クラスの連中も何事かと注目する。
ヒルダの視線は姫川のネックレスを見ている。
ケンカを売られていると思った姫川はヒルダを見下ろし、睨みつけた。
「なんだ突然」
「このままだと貴様、明日、死ぬぞ」
「!?」
いきなり死を宣告され、姫川は動揺しつつ、「な、なに言ってんだ」と返す。
すると、神崎は姫川とヒルダを廊下へと連れ出した。
扉を閉め、真剣な顔をヒルダに向ける。
「ヤバいものなのか?」
「……見たのか?」
聞き返され、神崎は頷いた。
3人はHRをサボり、校舎裏へと移動した。
そこでヒルダから詳しい話を聞く。
「“亡者の首”?」
姫川は聞き返し、自分の胸に光るネックレスを見た。
「呪われた代物で、魔界のどこぞの地に収められていたはずだが…、盗人につかまされたな。格安で買ったということは、人間が苦しむ様を眺め楽しむ輩だろう」
神崎は露店の男を思い出し、歯がみする。
「あのヤロー…ッ」
「それで、コレつけてると明日死ぬって…?」
「文字通りだ。亡者は失った自分の首を捜している。1日目は傍観、2日目は接触、3日目は…切断だ。日を追うごとに呪いは強まる」
姫川は蒼白の顔で喉を鳴らし、自分の首元に触れた。
神崎も同じく蒼白の顔で姫川を見つめ、そのネックレスに手を伸ばす。
「完全に呪われる前に外して捨てれば…!」
引っ張った時だ。
ビシャアアアッ!
「「ぎゃあああっ!!」」
いきなり電撃に襲われ、2人は焦げくさい煙を漂わせながらその場に倒れた。
ヒルダにとっては、人物は違うが見慣れた光景だ。
「ムリに外そうとするとそうなるのか…。おい、もう死んだか?」
確認のために、傘の先で2人の頭を交互につつく。
「「勝手に殺すな…」」
2人は、黒い煙を吐きながら言った。
「私でも、呪い相手では無力だ。だが、呪いにはルールが存在する。この呪いを解くためには、呪いの達成時間を越えるまで、ただひたすら逃げ回ることだ。…できればの話だが…」
その夜、姫川は神崎と共に自宅にいた。
部屋は3001号室。
時刻は午前4時をまわっていた。
隠されるようにベッドの上で毛布にくるまれた姫川は蓮井と連絡をとる。
「蓮井、どうだ?」
姫川の口から事情を聞いていた蓮井は、別室のモニタールームからマンション中の監視カメラを見ていた。
“今のところは…”
玄関前や内部には、金で雇ったボディーガードを50人ほど待機させていた。
これなら、いくら亡者でも時間内にここに侵入してこれないだろう。
「よし、引き続き監視を…」
“!! 坊っちゃま!”
その時、蓮井は驚いて声を上げた。
注目しているのは、玄関前の監視カメラだ。
黒いローブがフラフラとこちらにやってくるではないか。
ボディーガード達もそれに気付き、構えた。
危険はあるが、出来るだけ時間を稼ぐことが目的だ。
だが、死神を思わせる黒いローブの亡者が大鎌を一振るいすると、先頭から順番にボディーガード達が倒れてしまい、マンション内のブレーカーがすべて落ちてしまった。
「!? 蓮井!?」
蓮井とも連絡が取れなくなってしまった。
神崎と姫川は顔を見合わせ、廊下の物音に耳を澄ませる。
時計の長針が40分を切ったところで、それは聞こえた。
ぺた、ぺた、と裸足の音が。
あらかじめ、玄関の鍵は閉めておいた。
しかし、鍵を持っているはずがないのに、ガチャリ、と鍵が回る音が聞こえた。
姫川の傍にいた神崎はベッドの下から金属バッドを取り出し、ドアに近づいた。
「神崎…!」
「それをやったのはオレだ。オレが姫川を守る…!」
「姫神とは思えないほどの男らしさだな」
「言ってる場合かっ」
肩越しに睨みつけると、ドアが勢いよく開かれた。
神崎のすぐ目前に、首のない顔が近づく。
昨夜とは違い、大鎌は引きずられることなく手に提げられていた。
「…っ! このバケモンがっ!!」
一歩後ろに引いた神崎だったが、すぐに金属バッドを振るった。
「!?」
ローブに当たるも、胴体にぶつかる手応えはなかった。
亡者は神崎の横を通過し、姫川に近づく。
神崎がそれを許さない。
「待てコラァ!!」
ローブをつかんで止めようとするが、亡者が振り返ると同時に後ろから引っ張られるように、神崎の体が吹っ飛び、
「がっ!」
クローゼットに背中を打った。
「神崎!!」
姫川は毛布を取ってベッドから飛び下り、神崎に駆け寄ろうした。
だが、亡者は2人の間に入り、行く手を阻む。
「!!」
亡者は大鎌を足下に落として痩せこけた両手を伸ばし、姫川の両頬に触れた。
その死人のような冷たさに、姫川はビクリと体を震わせる。
“この首…もうすぐ…私の物…。綺麗な首…”
「ぐ…っ」
両頬をつかむ手は下にくだり、その首を締める。
手を払っただけでも折れてしまいそうな細さだというのに。
「離…れろっ!」
立ち上がった神崎は亡者に殴りかかったが、亡者は黒い煙となり、不気味な笑い声を残して消えた。
「…っ」
「姫川!」
倒れてくる姫川を抱きとめる神崎。
姫川の首には、亡者の手痕が生々しく残っていた。
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