呪いの解き方、教えて下さい。
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その日、神崎はひとり夕暮れの街を歩いていた。
アクセサリーショップを覗いては、しばらくして手ぶらで出てくる。
そんなことを繰り返していた。
店の掛け時計を見て、姫川の家に訪れる時間まで、あと1時間。
それまでに思ったものが見つからなければ、明日また出直すつもりだ。
このまま姫川の家へ向かおうと足を向けた時だ。
「そこのお兄さん」
「!」
薄暗い路地から声をかけられ、神崎は足を止め、そちらに顔を向ける。
シートにアクセサリーを並べた小さな露店だ。
「アクセどう? お兄さんにぴったりのアクセ、あるかもよ」
ニット帽を被り、耳にいくつものピアスをつけたチャラ男が愛想いい笑顔を向ける。
神崎はそこに近づき、「いや、オレのじゃねーけど…」とアクセサリーを眺めた。
どれも銀色のメンズアクセサリーで、繊細な作り。
値札がつけられていないのは気になった。
「…!」
中でも、神崎が惹きつけられたのが、ドクロのネックレスだ。
試しにそれを手にとると、見た目の割に軽かった。
露店の男は口端を吊り上げる。
「お兄さん、お目が高いね。一番人気のアクセだよ。運がいいことに、それで最後だ」
「…高いのか?」
「運がいいお兄さん、今ならこれくらいでいいよ」
露店の男は計算機を取り出して打ち、神崎に見せる。
その格安の値段に、神崎は目を見開いた。
「……マジで?」
「マジマジ」
神崎は「じゃあくれ」とサイフを取り出し、そのネックレスを購入した。
「お兄さんは本当に運がいい…」
露店を立ち去ろうとしたとき、神崎はお礼を言おうと肩越しに振り返ったが、
「?」
いつ去ってしまったのか、そこあった露店がなくなっていた。
気味悪さを覚えつつ、神崎は姫川のもとへと早足で向かった。
*****
「…オレに?」
家に到着し、共に夕食を食べ終えたあと、神崎は露店で購入したものを姫川に手渡した。
「ああ。…ほら、いつもつけてるやつ、紐が切れただろ?」
姫川は黒のリボンを解いて小箱を開け、中に入ったネックレスを取り出した。
鈍色を放つ、ドクロのネックレス。
「へー、どこのブランドだ?」
「いや…、露店で買ったからブランドは…」
姫川は目前に近づけ、そのつくりをじっくり見てから、首にかけた。
「ふーん…、いい細工だな。…ありがとな」
姫川は神崎に近づき、その頬にキスをする。
たちまち、神崎が頬を染めるものだから、「てめーはいつも初々しいな」と小さく笑い、「先に風呂入ろうか」と誘った。
その夜、夜の営みのあと2人は同じベッドで肩を寄せて眠りにつく。
入浴中も、行為の最中も、姫川は神崎からもらったネックレスを外さなかった。
時間は午前4時40分。
「…?」
ふと、神崎は物音で目を覚ました。
ズズズズ… ズズズズ…
(なんの音だ?)
廊下の方から聞こえる。
なにかを引きずる音だ。
その音はどんどん寝室に近づいてくる。
恐怖を覚えた神崎は半身を起こそうとしたが、指先さえ動かせない。
(体が…動かねえ…っ)
隣では姫川がすやすやと寝息を立てて気持ち良さげに眠っている。
(姫川っ、起きろ…!)
声も発せない。
引きずる音は寝室の扉の前で止まり、ドアノブがゆっくりとまわされた。
「…っ!!」
部屋に入ってきたのは、黒いローブを纏った者だ。
それはゆっくりと手に提げた大鎌を重そうに引きずり、床をきずつけながら、ベッド脇に近づいてくる。
身動きがとれない神崎はその様子をずっと凝視していた。
黒いローブはベッド脇で立ち止まると、姫川の顔を覗きこんだ。
「!?」
ローブの中が見えた。
顔どころか、首そのものがない。
“私の…首…”
ヒヒヒヒ…ッ、黒いローブは不気味な笑い声を立て、黒い煙に包まれて消えた。
時間は、4時44分をまわっていた。
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