小さな話でございます。
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急に姫川に呼び出された神崎は、その光景に我が目を疑った。
姫川の家、ダイニングで10匹のヒヨコがひよひよと鳴きながら家の中を走り回っていたのだ。
姫川はひとり、ソファーに座って「待ってたぜ」と神崎に声をかけた。
合鍵使って入ってきてくれと言われたわけがわかった。
動けない状態にあったからだ。
ヒヨコはほとんど姫川を中心に走ったり、その体に登ったりしている。
中にはリーゼントの頂上で休んでいるヒヨコまで。
「おまえ…、これいったいどういう状況だよ」
「知り合いからもらった卵が孵ってな。騙された…。てっきり食用の高級卵かと思ってたから…」
押し付けられたというわけだ。
刷り込みでヒヨコ達は姫川を親だと思い込んでいるらしい。
ヒヨコまみれの姫川。
実にシュールな光景だ。
「ほらー、おまえ達ー、ママだぞー」
姫川はヒヨコを1匹両手に載せ、神崎に見せつける。
「誰がママだっ!! 見せびらかしたいだけならオレ帰るからな!」
「待てよ。おまえのとこ、夏になったら出店とか出すだろ。祭りで」
「あれは…、ウチのモンが勝手にやってるだけだ」
「それでこいつら里親出すってのはどうだ? オレひとりだと面倒見きれねーし…」
相談したいのはそのことだ。
神崎はヒヨコ達を見て、腕を組む。
「…たぶん、オレが言ったらやってくれる奴いるかも…」
「頼んでくれるか?」
「そいつらのためだからな」
姫川は安堵の笑みを浮かべる。
「助かる」
(別にオレじゃなくても頼める奴が他にいるだろが…)
そう思いながらも、口を緩める神崎はヒヨコ達のあとを引き受けることにした。
「しっかし…、すごく懐いてるよなー」
「なー。カワイイよなー。おまえもこうだったらいいのに…」
右手のひらの上に載せたヒヨコの頭を、人差し指でくりくりと撫でると、ヒヨコは気持ち良さそうに目を細めた。
その光景に神崎はムッと顔をしかめる。
「カワイくなくて悪かったな」
「違う違う。こうやって甘えてこいって言ってんだ。…同じヒヨコ頭だし」
姫川は左手で神崎を指さし、神崎は思わず自分の頭を触った。
「そう言われても嬉しくねえよ」
「あ、そうだ、こいつらな…」
姫川はリーゼントに載せたヒヨコを下ろすと、自らリーゼントを崩し、サングラスをとってみせた。
すると、あれだけ懐いていたヒヨコが慌てて姫川から離れ、部屋の隅へと集まった。
突然出現したストレートヘアーの男に警戒している。
「……リーゼント=オレ(親)だと思ってるらしい」
「だははっ。薄情な奴らだな(笑)」
神崎は腹を抱えて笑った。
「神崎だって最初は「誰だおまえ」とか言ってたじゃねえか;」
「そうだったな(笑)」
「神崎、独占のチャンスだ」
姫川は両手を広げ、「おいでおいで」と誘う。
それを見た神崎はチラリと恥ずかしげにヒヨコ達を一瞥し、ゆっくりと姫川に近づいてその腕におさまった。
「オレはてめーの子どもじゃねーぞっ」
「よしよし」
「~~~っ」
唸ると、頭を撫でられ、神崎は気持ち良さそうに目を細めた。
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