王子は何処に?
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カンザキとヒメカワは一緒に、商品を入れたリアカーを引いて街の中心街にある広場へとやってきた。
そこは小さな市場となっていて、他の商人は小さな屋台を立ててすでに自分の商売を始めていた。
食材、服、靴、装飾など。
中には、カンザキと同じく骨董品を売ってるところもある。
今日は少し出遅れたか、商売をするなら市場の端の方になってしまう。
それでもカンザキは肩を落とさずそこへ移動する。
「よし、組み立ててくぞ」
「おまえ、いつもこんな重いモン運んでんのか」
先程の坂道でヒメカワは早くも疲れている。
神崎は慣れた様子でさっさと屋台を組み立て、商品を並べた。
店を始めて数分後、ひとりの男性客が来た。
興味深そうに骨董品である深緑の花瓶を見つめている。
「見事な色でしょう?」
カンザキは接客笑顔を向けて言葉巧みに魅力を説明する。
作られた年代、使われた材料、短所と長所の割合1:3。
結果、見事お買い上げに成功。
それを傍で見ていたヒメカワは口笛を鳴らす。
「へぇ。オレの目にはただの花瓶にしか見えねえけどな…。慣れたもんだ」
「普段はこの時間に来る客は珍しい。…今日は仕事運がいいな」
カンザキは口端を吊り上げる。
その後、ゆったりだが、売れ行きも順調だ。
そうしていると、客に混じった、鎧を着た兵士達がちらほらと視界に入った。
それぞれ一枚の手配書を手に、聞きこみしている様子だ。
「……なんだ?」
広場に見廻りの兵士や休憩中の兵士が来ることはたまにあるが、それにしては数が多い。
カンザキは片眉を吊り上げたが、対してヒメカワは平然とした様子で盾や剣の手入れをしている。
「やぁ。カンザキ君」
「ナツメ」
そこに声をかけたのが、遊び人のナツメだった。
神出鬼没で、カンザキも色々な場所で出会う。
「仕事の売れ行きはどう?」
「ぼちぼち」
「いつもみたいに「ぜんぜん」じゃないんだ? けっこうけっこう。…あれ? バイトでも雇ったの? …その頭ファッション? すごいね」
ナツメはヒメカワに気付いた。
ヒメカワは顔を上げ、ナツメを指さす。
「誰こいつ?」
「ああ、こいつナツメな。よく商売の邪魔しにくる」
「酷いなぁ、その言い方。オレはアドバイスしてるだけじゃん」
ナツメは苦笑しながらガックリと肩を落とした。
「こいつはヒメカワだ。ちょっと事情があってな。手伝いをさせてる」
追われている身だとは話さない。
ナツメは「ふーん」と言ったあと、「よろしくね、ヒメちゃん」と馴れなれしくそう呼んで笑顔とともに手を差しだした。
「あ…、ああ…」
若干困惑の表情を浮かべながらも、ヒメカワはその手をつかんで握手を返す。
「失礼」
そこに、2人組の兵士が声をかけてきた。
「この辺りに、この顔と同じ方を見かけなかったか?」
兵士はカンザキに手配書を突きつけた。
容姿端麗。
手配書の男は、その言葉が合うような顔立ちだ。
長い髪はひとつに結われ、肩にかけられている。
「…いや、見てない。つうか、この顔、見たら覚えるって。…ナツメ、ヒメカワ、知ってるか?」
2人は同時に首を振る。
「手間をかけたな」
兵士はそう言ってカンザキ達に背を向け、捜索を続けた。
「…ただの探し人じゃなさそうかも。「同じ方」…。「奴」でも「者」でもなかった」
敬うような言い方にナツメは引っかかりを感じた。
「あの顔立ちだ。貴族じゃねーのか?」
「顔立ちで決めるのはよくねーよ」
カンザキの言葉にヒメカワは苦笑混じりに返した。
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