小さな話でございます。
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姫川が学校に桐箱を持ってきた。
「おすそわけだ。貧民共」
クラス全員が姫川の手元に注目し、姫川はその蓋をとって中身を見せる。
中には、鮮やかな赤色をした丸い果実、ルビーのようなさくらんぼがぎっしりと詰められていた。
「さくらんぼー!」
花澤が歓喜の声を上げた。
姫川の机に集まってきた全員の目も輝いている。
「どうしたんだ、これ」
神崎の問いに、席に着いた姫川は答える。
「知り合いから大量に送りつけられてきてな。食べきれねえからてめーらにやる」
「気が利くねー、姫ちゃん」
「遠慮なくいただくぜー」
最初に男鹿が手を伸ばし、真ん中のさくらんぼをとって口に運んだ。
口の中に甘酸っぱい味が広がり、「うめぇ」と感想を言うと、次々とクラスメイト達が手を伸ばし、さくらんぼをひとつずつ取っていく。
神崎も右端のさくらんぼをつまんで口に運んだ。
「…うまっ!!」
「だろ? 高級品だぜ?」
そこで、口の中にさくらんぼを転がしながら花澤が言いだした。
「知ってますかー? さくらんぼのヘタを口に入れて、舌で輪っかを結べたら、キスが上手いらしいっスよ」
その言葉に全員が反応した。
「マジか?」
「マジっス」
さくらんぼを食べ終えた者は、早速ヘタを口に入れて結ぼうと頑張り出した。
神崎や姫川も参戦する。
ほぼクラス全員がやっている、傍から見れば異様な光景だ。
「けっこう難しいな」
「……お、結べた」
先に姫川が口からヘタを取り出し、輪にしたヘタを見せつけた。
神崎はムッとした顔をしかめ、「ちょっと待て」と懸命に口の中をモゴモゴとさせる。
その頬の動きが可愛かったのか、姫川は頬づえをついて眺めた。
数人が結びに成功したあと、ようやく神崎も結べたようだ。
口から取り出して、ようやく通った輪っかを見せる。
「オレだってできるんだからなー」
「そりゃあ、おまえオレで練習したから…」
「ボケ、実力だっつの!」
それ以上言わせてなるものかと怒鳴る。
「「「あ。できた」」」
意外と時間がかかっていた、男鹿、夏目、東条が同時に口からヘタを取り出した。
全員はそれを見て絶句する。
男鹿、8の字結び。
夏目、もやい結び。
東条、蝶結び。
((((超テクニシャンズ!!?))))
「おまえらぁ!! いくらだ!? いくらでオレに伝授するんだ!!?」
姫川は勢いよく席を立ち上がり、懐から出した金を3人に突きつけた。
「おやすいごようさ★」
夏目は両腕を開き、「カモン、姫ちゃん」と誘う。
当然見過ごす神崎ではない。
「どう伝授するつもりだコラァッ!!」
「待て神崎! おまえをもっと楽しませることができ…」
「オレは今でも十分楽しいからな!! てめー他の奴としたらする前に別れるからなっっ!!」
この瞬間、我に返った神崎の顔がさくらんぼになったのは言うまでもない。
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