姪っ子が家出しました。
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夕方も近くなってきた頃、二葉が聴いていたiPodが突然停止した。
「あれ?」と二葉は何度も再生ボタンを押すが、反応はない。
電池切れだ。
それに気づいてテーブルを見るが、充電器が見当たらない。
しばらくして、腹の虫も鳴った。
「……………」
どうしたものかと視線を彷徨わせ、窓から出ることができないかとベランダの窓を開けた途端、
「二葉よー」
「!」
ドア越しに神崎の声が聞こえた。
「腹減っただろ…。帰ろうぜ…」
優しい声色にうっかり誘い出されてしまいそうになったが、二葉ははっと首を横に振り、「帰らないっ!!」と怒鳴る。
「二葉…」
「一なんて…、二葉と一緒にいても楽しくないんだろ!! ずっとしんたろー達と遊んでればいいんだっ!!」
「…!」
そこで神崎は二葉の家出の理由を察する。
蔑ろにしたつもりはなかったが、ここ最近、因幡と夏目と城山の家に行くことが増え、その時二葉の面倒は武玄や組員たちに押し付けてばかりだった。
孫を愛する武玄には鬱陶しさを感じながらも、二葉もそれで楽しめていると思っていた。
思い込んでいた。
「…………二葉」
「あっち行け!! 一なんて知らないもん!!」
「…………わかった…。今日のところは潔く引いてやるよ…。また明日も迎えに来るからな…」
「あ…」
あっさりと帰ると言った神崎に、二葉は思わず目の前のドアに手をつけた。
その時だ。
「うわっ!!」
突然、ドアの向こうから神崎の驚いた声が発せられ、そのあとすぐに大きな物体が階段を転げ落ちる音を聞いた。
「!! は…、一!!」
神崎の安否が気になった二葉は急いでドアを開け、「一!! 大丈夫…」と目の前の光景に言葉を切った。
口元には笑みを、こめかみには青筋を浮かべた神崎が、腕を組んだままこちらを見下ろしていたからだ。
なら今転げ落ちたのはなんだと視線を階段に向けると、「ごめん」と苦笑した夏目と因幡、そして布団に包まって簀巻き状態になった城山が階段を上がってくるのが見えた。
つまり、神崎が猿芝居を売ったあと、すぐに簀巻き状態の城山が階段を転げ落ちたのだ。
その前に因幡は「やめとけ危ないから」と言ったのだが、「城山頼んだぞ」と肩を叩いた神崎に、城山は「任せてくださいっ」とやる気になって転げ落ちる役をおったのだった。
「名付けて、“押してダメなら引いてみろ作戦だ”」
ドヤ顔で言う神崎に、顔を青ざめた二葉は「~っ」と唸り、ベランダへと走った。
「逃がすか!!」
追いかけてくる神崎に焦り、二葉はベランダを抜け、欄干をのぼる。
しかし、その下には屋根でなく玄関が見えた。
追い詰められた状況に、二葉ははっと神崎に振り返る。
「観念し…」
神崎がつかまえようとしたとき、
「「!!!」」
二葉が欄干からずり落ちた。
「あ」
「二葉!!」
神崎は欄干から身を乗り出し、二葉の右脚をつかもうとしたが、指先はそれをかすめてしまう。
「ふた……っ!!」
ボスッ
二葉は、下にあったクッションのようなものに助けられた。
「……あ?」
真っ逆さまにぶら下がる神崎はそれと目を合わせる。
「…なにやってんだおまえら…」
「お?」
それはちょうど玄関前に現れた姫川だった。
二葉は、そのリーゼントの上に落ちて助かったのだった。
神崎は二葉を助けようと身を半分以上乗り出し、落下しかけたところを因幡と夏目に足首をつかまれ助けられた。
「てめぇら人んチに救急車招く気かっ!!」
「城ちゃんヘルプ~」
首を痛め、二葉をリーゼントからおろして抱っこしている姫川は、今の現状が理解できなかった。
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