美味しいコーヒー、いかがですか?
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時刻は午後8時をまわり、カフェ“ブリック”の営業は終了する。
カウンターには疲れ切った因幡達が並んで座っていた。着替える気力もない。
「みんな、お疲れ様。これ、今日の分」
カウンター越しに立つマスターは、給料の入った封筒を順番に因幡達に配っていく。
「助かったよ、キミ達がヘルプに来てくれて…。おかげでこのカフェも大繁盛だ。また頼んでいいかな?」
「いつでもどうぞ」
顔を上げた因幡は笑みを浮かべて頷いたが、未だに顔を伏せたままの神崎と姫川は違う。
((もうヤだ…))
「あ…」
そこで因幡は大事なことを思い出した。
(せっかくウエイター姿なのに、写メ撮るの忘れた)
コハルのエネルギー補給のためにと考えていたが、あまりの仕事の忙しさに忘れてしまったのだった。
ため息をつくと、左隣に座る桜はその肩に手を叩き、無言でケータイを見せた。
「!」
それには、慣れない仕事に勤しんでいる神崎達の姿が映っていた。
少し見切れているが。
「ナイス姉貴♪」
因幡は親指を立てる。
「桃ちゃんほどうまく撮れてないけどね。あとで母さんに送っておくわね」
「助かる。帰ったら号泣されちまうところだった」
ホッとしたのもつかの間、桜がケータイを因幡に向ける。
「今度は桃ちゃんを撮りたいなぁ」
「え」
桜がそう言うと、因幡の体に黒い煙のようなものが身に纏った。
一瞬の出来事で、全員が驚いた声に振りむいた時には、因幡はウエイトレス…というよりメイドの姿になっていた。
「ちょ…っ!!」
「桃姉が…っ!!」と春樹。
「お、いつの間に」と神崎。
「なんだやりたかったのか?」と姫川。
「似合うじゃない、因幡ちゃん」と夏目。
「それでコーヒーを振る舞ってちょーだい」と桜。
「姉貴ぃ―――っ!!!」
悪魔と明かしてからの桜は、コハル並みにタチが悪かった。
その頃城山は、
「城山君、ここで働きたくなったら、いつでも連絡してくれ。いつでも待っているから…! そうでなくても、またコーヒーを飲みにきなさい」
「マスター…!」
マスターとともに涙を流しながら、熱い抱擁を交わしていた。
.END