美味しいコーヒー、いかがですか?
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カフェ・“ブリック”にひとりの男性客が訪れる。
そこで優雅にコーヒーを飲みながら手持ちのノートパソコンで仕事の続きをしようと考えていた男性だったが、迎えた2人のウエイターを見て、「ひっ」と怯えた声を出した。
「いらっしゃいませー、おひとりさまですか?」
「2階の席にどーぞ」
目つきの悪い、金髪で口と耳を繋いだチェーンをつけている、頬傷のあるウエイターと、色眼鏡をかけた、銀髪のリーゼントのウエイターが凄むように男性客を迎えた。
当然、草食系の男性は殺されるような悲鳴を上げながら、一目散に逃げていく。
バンッ×2
「「っ!?」」
新人のウエイター2人は背後からトレーで後頭部を叩かれ、その場にうずくまってコブを押さえつける。
「客に凄むなアホ共」
因幡はそう注意するが、本人たちは普通に接していたつもりだ。
「つうか、なんでオレらまでカフェの手伝いするっつったよ…。接客業っつうか、バイトなんてしたことねえんだぞ」と神崎。
「同感だ。因幡、オレ達がまともに接客できると思うか? 金持ちナメてんのか?」と姫川。
「自分で言うな、ボンボンコンビ。マスター、こいつらに働いてもらうのは無理じゃね?」
同じウエイターの服装を着せられた、神崎、姫川、夏目、城山を見て因幡はカウンター越しにいるマスターに声をかけた。
マスターはいささか楽しんでいる様子だ。
「男前っス! 神崎さん!!」
それは桜と春樹も然り。
「笑顔でお客さんに接してもらわないと…。夏目君が見本かな?」
マスターがそう言うと、夏目は甘い笑顔をつくる。
「オレには黒く見える」
普段の夏目を知っている因幡と、初めて会ったマスターとでは見方が違う。
「見栄えだけでもよくしてみる?」
そう言って桜は、自分のカバンから携帯のドライヤーや櫛などのヘアセットグッズと化粧品を取り出した。
神崎はチェーンを外し、頬の傷はファンデーションで隠され、姫川はリーゼントを下ろされて一束にまとめて肩に流し、サングラスを外される。
するとどうだ。
特徴であり、ポリシーと呼べる部分を一度外したことで、誰が東邦神姫の神崎と姫川と見抜くだろうか。
「「誰だよ(笑)」」
2人は互いの顔を見て噴き出した。
「夏目君はそのままでOK」
「オレは……」
城山が自身を指さすと、カウンターから出てきたマスターは城山の手首をつかんで厨房へと連れていく。
「キミはタッパがあるからね。身長の迫力はごまかせないから、こっち(キッチン)の手伝いをしてくれ」
「あ、あの…っ」
神崎と一緒にウエイターとして働きたかった城山は突然のポジション変更に戸惑いながら、マスターに流されるまま厨房へと入った。
それを止めずに見届ける因幡達。
客の「注文いいですかー?」の声にはっとした因幡は、一つ咳払いし、「じゃあ…」と神崎達に顔を向けた。
「社会勉強のつもりで、働いてもらおうか」
カウンターに置かれた2つのトレーをつかむと、それを神崎と姫川に手渡した。
*****
因幡と姫川がオーダーを取り、春樹と神崎がスイーツを運び、桜と夏目がカウンターでコーヒーを淹れる分担となった。
「12番テーブルのお客様、追加オーダー入りまーす、夏目、カプチーノのおかわり淹れてくれ」
「了解、姫ちゃん」
「こっちはカフェモカな。7番テーブルだ。チョコシロップ多めで」
「神崎さん、アイスコーヒー忘れてますよっ」
「おっといけね」
身なりを変えたせいか、午後3時近くになると客足が一層増えた。
女性客のほとんどは因幡達に見惚れていた。
特に、イケメンの姫川と夏目の2人が絶賛大好評だ。
(中身真っ黒なクセに、あいつら、顔だけはいいからな…;)
ひそひそと「かっこいい」「彼女はいるのか」と話し合っている女性客達の黄色い声をきいて、因幡は階段を下りながら思った。
因幡自身は自分の好評っぷりに気付いていないようだ。
その頃城山は、
「キミ…、スゴいね…」
「恐縮です」
マスターの前で、3段積みの見事なデコレーションケーキを作ってみせていた。
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