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「ボウリング講座その…」
投げ終わった姫川が右手のひらを広げると、神崎はなにも言わずにその手に人差し指を添える。
「「6」」
「おまえらって、オレが思ってる以上に仲良し?」
因幡のつっこみはスルーして姫川は説明する。
「ボールはたまに布で拭いた方がいい。レーンにはオイルが塗ってあるから、拭かずにいるとオイルまみれになって軌道も狂っちまうからな」
そう言って、ボールリターンに置かれた布で自分のボールを拭いた。
姫川が終われば、因幡も布で丁寧に自分のボールを拭く。
勝負は中盤に差し掛かっていた。
コツもつかめたので、その後の因幡はストライクを出せずともスペアを多くとりにかかってきた。
神崎と姫川がストライクを出し続けてくれるおかげで男鹿達との点差もそれほど開いていないが、こちらが負けていることに、ボウラーベンチに座る因幡はキャンディーをなめながら頭を悩ませる。
(―――やっぱり、序盤でガターを出したのは痛かったな…。男鹿と古市のどちらかがミスってくれれば点差も追いつくのに…、いや、追い越してかねーと…)
そこで、姫川が投げたのを見送り、助走をつけた古市に声をかける。
「あ、邦枝達がいる」
「え!? どこどこ!!?」
よそ見と同時に投げた古市のボールは、すぐにガターへとはまってしまった。
「あ…」
古市も、しまった、という顔になる。
男鹿はベンチから立ち上がって「古市ぃっ!!」と怒鳴り、ギロリと因幡を睨みつけた。
因幡は頭の後ろで手を組み、男鹿と目を合わせないように顔を逸らして素知らぬ顔をしている。
続いて、男鹿と因幡の番だ。
同時にボールを投げた、かと思われたが、
ゴンッ!
因幡の投げたボールは男鹿の頭に直撃した。
「あ、悪い。手が滑った」
男鹿の手元から落ちたボールはガターにはまる。
それを見ていた姫川は思わず拍手を送った。
「だんだんおまえに似てきたな、あいつ…;」
「クク…、オレなら相手のボールの穴に接着剤流し込むけどな」
頭に大きなコブを作った男鹿は歯を剥いて因幡に怒鳴りかかる。
「てめー、さっきからせこいことしてんじゃねーよっ! マジで好感度下がっちまうぞ!」
「いいもんねー。それで困るのはオレじゃなくて管理人だもんねー。このオレを散々なくらいコケにしやがったんだ。…どんな手を使ってもオレの前で土下座させてやる…! そんで指さして大爆笑してやるよ!」
リーゼントのお偉い方は言いました、勝つためには手段を選ばない、と。
悪魔のような笑みを浮かべる因幡に、男鹿は額に青筋を立たせ、引きつった笑みを返した。
土下座がかかってる勝負だ。
どちらも負けるわけにはいかなかった。
それからも攻防戦は続いた。
手が滑ったと称してボールを投げる因幡、打ち返す男鹿、本気で因幡が接着剤を流し込むのを止める神崎、ベル坊が突然泣き出して電撃を浴びる男鹿と因幡。
勝負は終盤が近づいてきた。
点差はほぼ同点だ。
「ボウリング云々知らなかった奴が、ようやくここまで追いついてきやがったか」
「はっ。あんだけ笑ってた奴が追いつかれてんじゃねーよ」
「そっちこそストライク1個出せねえからって…」
「「「早くボール投げろよ;」」」
古市、神崎、姫川はボールを構えたまま睨み合う2人につっこんだ。
最初に男鹿が投げようとした。
因幡はボールがレーンを転がる手前で自分のボールをぶつけて邪魔しようと考えたが、男鹿の明らかにボウリングではない構えに目を丸くした。
振りかぶったからだ。
「おおおおぉぉおっ!!」
ガゴォンッ!!
16ポンドの剛速球が10本のピンにぶち当たり、粉砕した。
全員唖然だ。
結果は一応ストライク。
スイープバーがピンの破片を回収する。
今ので邪魔をしようならこちらまでケガをしていただろう。
「とっとと投げろよ。地道にスペアを出してオレに追いついてこい」
ケケケ、と舌を出して笑う男鹿に、因幡は持っているボールをその顔面にぶつけてやろうかと思ったが、不敵な笑みを浮かべてボールをその場に落とす。
「!」
「そっちがその気なら、オレも…、オレ流にいかせてもらう」
そう宣言した因幡は足を振りかぶった。
まさか、と姫川と神崎が思った時には、爪先でボールを蹴ってみせる。
転がらず直線に飛んだそれは、
ガゴォンッ!!
男鹿に負けず劣らず、すべてのピンを破壊した。
「フ…ッ」
ざっとこんなもんよ、と余裕の笑みを浮かべる因幡。
「いやっ!! てめーら2人とも転がせよっ!!」と古市。
「つうかっっ!!」と神崎。
「オレらの今までの講座、なにっっ!!?」と姫川。
もっともなつっこみだ。
しかし、男鹿と因幡は止まらない。
さらに熱くなる2人は、ボウリング場泣かせもいいことに、ボールを投げるたびにピンを破壊していく。
そして勝負の結果は!?
ラストを前に、男鹿と因幡はボウリング場の警備員から逃げ出した。
ちなみに古市達は来ると予測していたので2人より早くその場をあとにしたのだった。
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