★ラビット・エクストラ★
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小学2年生というわりには、オレの身長は高学年に負けないくらい大きかった。
羨ましがるやつもいたが、オレにとってはコンプレックスに過ぎない。
ランドセルはきついし、ガタイもよかったから普通の子供服も満足に着れなかったし、靴も、好きなヒーローが描かれたものが欲しかったのに履けるサイズがなかった。
おまけに、何が気に入らないのか、こっちが低学年なのに構わず高学年が絡んでくる。
こっちが大人しくしていればつけあがってくるのだ。
今日も公園の前を通りかかったところを絡まれて、6年生に囲まれていた。
殴ったり、蹴ったり、オレが倒れるまで続くんだ。
あまり痛くないけど。
「こいつなかなか倒れねーぞ」
「クッソ丈夫だな。本当は鉄で出来てんのか?」
「デカい図体しやがって。生意気な」
「おい、倒した奴の言うこと聞くなんてルール言い出したの、どいつだっけ」
6年のクセにくだらない遊びを思いついたもんだ。
そろそろ片膝くらいついてもいい気がしてきた。
呆れて行動に移そうとした時だ。
「待てーい!!」
「!」
すべり台の上に、小さな人影が立っている。
金属バットを片手に、こちらを見下ろしていた。
「「いじめよくないカッコ悪い」って母ちゃんに言われなかったか?」
「なんだあのチビ」
「チビって言うな!! 成長期の準備は万端なんだよ!!」
確か、近所に引っ越してきた、豊川夕斗だったか。
同じクラスで、背の順では一番前だ。
数分後、散々金属バットを振り回した豊川だったが、金属バットを横から奪われて撲りかかられたところを、オレが助けるハメになった。
振りたくもない暴力だって振ってしまった。
「クソ!! 覚えてろ!!」
ベタな捨て台詞を吐いて、6年生は逃げていく。
「……大丈夫…か?」
鼻血を出して仰向けに倒れている豊川に声をかけ、手を差し出したら払われた。
「んだよ…。おまえ、ケンカ強ぇじゃねーか」
手の甲で鼻血を拭って自力で起き上がる。
「……ガタイが…いいだけ…」
「オレが助ける前にやり返せよ」
「人を殴るの…、好きじゃない……」
「だったらなんでオレがやられそうになったら…!」
「オレのために…、誰かが…巻き添えになるの…、もっと嫌だ……」
「……おまえ、「馬鹿だろ」って言われたことねーか?」
オレは黙ってランドセルからハンカチを出して、豊川の顔に押し付けて鼻血を拭いてやった。
「むぶ。…いーよ、汚れる。やめろって。……クソ」
ついでに出そうな涙も拭いてやる。
「…おまえも…、なんでオレを助けようと…してくれた?」
他の奴は、目をつけられるのを怖がって助けてくれなかったのに。
「弱いものいじめは好きじゃねーの」
「…弱いもの……」
初めて言われた。
弱い者いじめに見えたのか。
「…おまえも…弱い」
「うっせーな。これから強いものになるからいいんだよ。この間、テレビのヒーローも言ってたんだよ…」
「…「強いものに立ち向かわないのは、本当の弱虫だ」」
「! そう、それ! おまえも見てる!?」
オレは恥ずかしげに頷いた。
いつも見ているヒーローものだ。
「オレ…、伏見紅一…」
それからオレ達は、そのヒーローについて語り合いながら帰路を歩いた。
誰からと好きなもので話せるのは、豊川が初めてだった。
幼馴染となったきっかけは、それが始まり。
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