夜空に花が咲きました。
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蝉のコーラスが石矢魔町に鳴り響く夏休み、冷房のきくダイニングのソファーの上で仰向けに寝転びながら雑誌を読んでいた因幡は、雑誌から顔を上げ、キッチンで昼食を作っていたコハルに聞き返す。
「夏祭り?」
「そう。石矢魔町の夏祭り…。神崎君達を誘って行ってくれば?」
「祭りねぇ…」
目の下に雑誌を載せ、考えるように天井を見つめる。
思えば、今まで町の祭りごとにはあまり参加しなかった。
行く相手がいなかったこともあるし、花火は家の窓からでも見えるとすぐに諦めていたからだ。
「あいつら来るかな…」
ズボンの横のポケットからケータイを取り出し、アドレス帳を開いてみる。
すると、ちょうど夏目から電話がかかってきた。
「!」
びっくりして、通話ボタンを押して耳に当てる。
「もしもし?」
“あ、もしもし因幡ちゃん? 今日の夜ヒマしてる?”
「あ…、ああ…」
動揺を抑えて頷く。
その様子を、コハルはキッチンからネギを千切りしながら微笑ましく眺めていた。
“今日祭りがあるの知ってる? よかったら一緒に行かない? 神崎君と城ちゃんも一緒だよ。楽しいよー”
因幡は上体を起こし、雑誌を閉じる。
「そ、そこまで言うなら行こうかなぁ~」
本人は気付いてないが口調が歌うようだ。
“うんうん。じゃあ、夕方迎えに行くから待ってて”
「おう」
それだけ答えてこちらから通話を切った。
「母さん、オレやっぱり行くことに…、あれ?」
キッチンに振り返ったが、先程までいたコハルの姿がない。
片手鍋の火をつけっぱなしにしてどこへ行ったのかとソファーをおりて廊下を見ると、ケータイで誰かと話していた。
(仕事(編集者)か?)
首を傾げ、因幡は点けっぱなしの火を止めた。
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