ギャンブラーの一夜。
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姫川が面白いゲームが手に入ったから、と4人を自宅のマンションに呼んだ。
神崎、夏目、城山、因幡は2502号室で待たされていた。
呼んだのはいいが、肝心のゲームをどの部屋に置いたのかわからなくなってしまったらしい。
「ゲーム部屋いっぱい持ってると迷子になるよなー」と神崎から皮肉の言葉を受けながらも、姫川は他の部屋を探しに向かった。
ただ座って待っているだけというのも退屈なので、因幡は部屋の中を物色する。
神崎と夏目も冷蔵庫を漁ったりとすき放題だ。
城山は止めずにおとなしく座っている。
「…お、因幡ー」
「?」
声をかけられ振り返ると、いきなり赤い玉を投げつけられた。
「うわっ!」
突然のことに驚いた因幡はすぐ後ろにあった棚に背中をぶつけ、飛んできたそれを手でキャッチする。
見ると、りんごだった。
「神崎! 危ねえだろ!」
「大袈裟なやつだな」
「果物だって当たったらシャレになんねーんだからなっ。さるかに合戦だって、柿でカニが殺害されてんだぞ!」
そんなことを言い合っていると、城山が棚の上に視線を上げた。
「因幡!!」
「あ?」
城山が怒鳴り、上を見ると、そこに置かれていた桐の箱が落下してきた。
「!」
因幡は反射的に足を出し、落ちてきたそれを足の甲で受け止める。
「因幡ちゃん、大丈夫?」
神崎と夏目が因幡に近寄ってくる。
因幡は顔を青くし、その体勢のまま硬直していた。
「セ―――フ…」
「相変わらず足癖悪いやつだな…。これで受け止められるのか」
神崎は呆れながらも、因幡の足の甲にのったままの桐の箱を取ってやった。
ガシャンッ!
「「「「!!!!」」」」
底が抜け、中にあったものが床に落ちて割れた。
瑠璃色の大皿。
「「な゛あああああっっΣ(゜Д゜)!!」」
神崎と因幡は同時に悲鳴を上げた。
「「(゚Д゚三゚Д゚)」」←神崎・因幡
「落ち着いてくださいっ」
「あははっ、大変大変(笑)」
「他人事か夏目!!」
「騒がしいぞ。どうした?」
扉越しに姫川の声が聞こえ、余計に慌てる神崎と因幡。
因幡は皿を拾い集め、神崎に押し付けようとするが、神崎は首を横に振りながら押し返す。
扉が開かれ、姫川が顔を出した。
「なにしてんだおまえら。人んチでモメてんじゃねーよ」
神崎は桐箱を、因幡は皿を背中に隠し、「モメてねーよ」と首を横に振る。
「姫ちゃん、神崎君と因幡ちゃん、家から電話がかかってきて急用ができたみたい」
夏目のフォローで言い訳を必死に考えていた神崎と因幡は内心で、ナイスフォロー夏目、と親指を立て、それに乗っかる。
「そうそうっ、母さんが今日は大事な用事だからって…。別にっ、皿が割れたからって…」
ゴッ!
神崎のかかとおとしを背後から食らってしまい、黙らされる。
「つうわけで、姫川君、オレ達帰るからっ。ゲームしたかったけど、マジで残念だっ」
「お…、おう…。…「君」?」
明らかに怪訝な目を向ける姫川の横を通過したあと、神崎と因幡はバック走で玄関へと走り、城山と夏目とともに出て行った。
3割れた皿と底の抜けた桐箱を持ったまま姫川のマンションを出た因幡達は川原にいた。
因幡は途中で購入した接着剤で桐箱と皿をくっつけて直そうとしたが、皿は手に持っただけで外れてしまう。
4人は難しい顔をして、割れた皿を見下ろす。
「もうこうなったら素直に姫ちゃんに謝るしかないよ」
夏目の言うことはもっともだ。
しかし、因幡と神崎は姫川に謝ったあとのことを考える。
金にケチはつけずとも、その分コキ使われることになるだけは避けたいのだ。
当分、奴隷。
絶対いやだ。
「! これ、この皿を作った人では?」
城山が見つけたのは、皿の後ろに書かれた名前だ。
“宝華”。
因幡は携帯を取り出し、ググる。
「有名な職人らしいな…。あ、この皿…」
宝華が制作した作品の中で、同じような瑠璃色の皿を見つけた。
「値段は?」
後ろから夏目達と一緒にのぞいていた神崎が尋ねる。
因幡は画面をスクロールし、画像の下に書かれた値段を見て、目を見開いた。
30000000¥
「…3万?」
神崎は現実逃避をする。
城山、夏目、因幡の顔は真っ青だ。
「さ…、3千万…」と城山。
「まずいね(笑)」と夏目。
「夏目、ちゃんと「まずい」って顔選べよっ!」
振り返って夏目につっこむ因幡。
4人は川を泳ぐ鮎の群れを5分間見つめた。
「……神崎、貸しt」
「ムリっ!! オレが親父にブッ飛ばされても!? ヨーグルッチ何千個分だと思ってんだ!!」
水鳥が頭上を通過した。
それを合図に因幡はジャンプしてそのままそこから逃げようとする。
だが、3人は因幡の行動を把握していたので、両脚をつかんで捕獲した。
「ひとりだけ逃げようったってそうはいかねーぞコノアマァ!!」
「……っ」
顔面を打った因幡は呻くことしかできなかった。
しばらくして復活した因幡は、夏目に絆創膏を鼻に貼ってもらいながら、提案を出した。
「同じような安い皿を買って、戻すしかねーだろ」
「後ろに宝華のサインを書いてか?」
城山の質問に因幡は頷き、神崎も「それしかねーだろな」と同意した。
そうとなれば善は急げ。
4人は立ち上がり、100円ショップに向かうため、堤防に振り返り、そして、フリーズした。
黒スーツの怖いお兄さんたちが横一列に並んでこちらを見下ろしていたからだ。
「フ―――ン?」
この風景に不釣合いな白のリムジンの後部座席の窓から、カラー眼鏡がこちらをじっと見つめていた。
どこから聞いていたのだろうか。
因幡達はゴクリと喉を鳴らした。
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